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海外バレエレポート（イタリア）19
スカラ座付属アカデミーのクリスマス公演 『くるみ割人形』

今回はスカラ座の公演を離れ、12月2１日に足を運んだ、スカラ座付属アカデミーのクリスマス公演 “くるみ割人形” について見てみたいと思います。

 

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過去にも一度、このアカデミーのクリスマス公演 『くるみ割人形』 について、またスカラ座の公演のバランシン版の『くるみ割人形』について書いた触れた回がありますので、作品・音楽についてはそちらをご覧くださいませ。
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アカデミーのクリスマス公演は、ミラネーゼからは“ピッコラ・スカラ(小さなスカラ座)” の愛称で呼ばれている、偉大なオペラ演出家の名前を冠するシュトレーラー劇場で行われます。振り付けはアカデミーの学長を務めていた時代もあり、現在はスカラ座のバレエの芸術監督、そしてプロを目指す若いダンサーの皆さんの興味を惹くところでは2020年の第48回ローザンヌコンクールの審査委員長に選ばれたフレデリック・オリヴィエリ氏。スカラ座バレエ界では最も重要な人物であるといって間違いありません。彼の振り付けには、アカデミーのバレエ教師たちも関わり、個々のダンサーの長所が存分に発揮できるよう、毎年多少変更が加えられます。微笑ましい可愛らしい低学年の生徒から、もう完全に大人になりプロのダンサー顔負けの生徒まで大健闘しました。

まず、今年一番の目玉はクララを演じたヨウマ・ミチェリYouma Miceli (外国人?と思われる名前ですが生粋のイタリア人のようです)。彼女だけは全く別次元にありました。踊りのテクニックに関してプロレベルの生徒は少なくありませんでしたが、もちろんそれは世界で屈指の劇場付属バレエアカデミーの公演としてはある意味当然でしょう。なぜなら、“アカデミーを卒業する”ということは、技術的にはプロのレベルに達していることを保証しているからです。ただ、毎年アカデミーを卒業した全員がスカラ座のカンパニーに入れるわけでは全くありません。他のカンパニーも同様です。今はアカデミックなプロレベルの技術を身に付けた若いバレリーナは明らかに余っており、学校を卒業した若者にとっては非常に難しい現実があります。しかし、今回クララを演じたミチェリのパフォーマンスは一瞬見ただけで、近い将来必ずプリマになれると確信できるほど突出していました。彼女はクララそのものでした。身体的要素、テクニックに加え、学生とは思えない落ち着き、演技力、そして何よりも彼女が舞台にいると必ず目が彼女を追ってしまうを大きなスター性。さらにとても愛らしい顔も (残念ながら顔ももはやバレリーナには大事な要素です)。 彼女は全てのカードを持っています。次の公演で彼女がスカラ座でジゼルを踊ると言っても全く驚かないでしょう。

金平糖の精を踊ったレティーツィア・マジーニLetizia Masiniもかなり目を引きました。でも完成度、即戦力という意味では、ミチェリよりは多少劣るかなとは思いましたが、何しろこの劇場はオケピットがないため、スカラ座ではありえないほど舞台が近いんです。ですので、苦しそうな表情やギリギリ感がはっきり見えてしまいます。金平糖の精は技術的に難しい役ですし、スカラ座で見たら、平戸間の前の方の席でも、そこまで細かい表情は見えません。とにかくいつもスカラ座のカンパニーを見ている目で見た感想なので、彼らアカデミーの学生のレベルの高さはわかって頂けると思います。

その他、ドッセルマイヤー Matteo Zorzoli 、くるみ割人形／王子 Tommaso Calcia、金平糖の王子Camillo Federico Lussana (全員8年生)の名前も挙げておきます。いずれスカラ座の、もしくは世界の重要なバレエ団の舞台でその姿を見られることでしょう。

最後に、これまでスカラ座のバレエをずっと見てきたのに、今の今まで気が付かなかったことがひとつありました。ソロとコールドはいいとして、２人以上の数人で同じ踊りをすることの難しいこと! 　揃っているのが普通と思っていたのですが、学生ではなかなかピタッと同じようにはならないんです。ソロにはない難しさですね。

それにしても、年々上がるスカラ座付属アカデミーの質の高さには目をみはるものがあります。マエストロ・オリヴィエリがローザンヌの審査委員長に選ばれたことからも、その事実は裏付けられます。これからはアカデミーの公演にも注目してお伝えしていきますので、ご期待くださいませ！

記事：川西麻理

 

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