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PICK UP!

海外バレエレポート(イタリア)4
ミラノ・スカラ座バレエ団『Goldberg-Variationen』

2月9日、スカラ座のバレエ公演「Goldberg-Variationen」に足を運びました。
クラシック音楽を少しでもご存知の方なら、タイトルを見ただけですぐに、このバレエに使われる音楽がバッハの「ゴールドベルク変奏曲」と分かるはず。
音楽については別途のコーナーで再度触れますが、言わずと知れたチェンバロ(現在ではピアノの場合がほとんど)独奏のための傑作です。バレエ「Goldberg-Variationen」は、1993年にハインツ・シュペルリ(1940年スイス・バーゼル生まれ)が同名のバッハの音楽に振り付けたコンテンポラリー作品。スカラ座にかかるのは今回が初めてです。

Goldberg Variationen
(ph) Brescia e Amisano Teatro alla Scala

「ゴールドベルク“変奏曲”」というだけあり、この楽曲は、最初に簡単なテーマ(アリア)が提示され、続いてそのテーマが30回違う形で変奏された後、最後にもう一度冒頭のテーマに戻って終わり、という形になっています。つまり、同じテーマで始まり、同じテーマで終わる。シュペルリの振り付けも同様に次のようなコンセプトで行われています。“振付は始まりから終わりへと一つの弧を描いて展開するが、それは我々の始まり、そして終わりでもある”(リブレットより抜粋)。

Goldberg Variationen
(ph) Brescia e Amisano Teatro alla Scala_R

この作品においての個人的な感想はあまりポジティブなものではありませんでした。25年前の作品とは言え、振り付け、衣装、舞台装置、全てにおいて目新しい物、はっとさせられるものはほとんどなく……。残念ながら私の中で、どうしてこの作品が? との疑念がぬぐえませんでした。

実は後になってこの作品が選ばれるにあたってはやんごとなき事情があったことが分かったのですが、その辺りのことを詳しく述べるのはやめておきましょう。ただ、私の感想はさておき、踊っていたダンサーたちもこの作品に特別なパッションを持っていたかと言えばそうではなかったようです。

しかし当然、フリーランスのダンサーでない限り、どんな作品であれ、どんな事情があれ、これと劇場側が決めた作品は全力で踊るのがプロフェッショナルです。それに、このバッハの天上的な恍惚とした音楽さえあれば、彼らの想像力をかきたてるものなど他に何も必要ないはず。今回は彼らの写真で、ポーズや肉体の美しさを楽しんで頂きたいと思います。

Goldberg Variationen Virna Toppi
(ph) Brescia e Amisano Teatro alla Scala

この作品は配役などはなく、14人のダンサーが入れ替わり立ち代わりおどるのですが、やはりプリンシパルダンサーは明らかに一目で分かります。以前「椿姫」の回で、表現力不足では? との疑問を呈したニコレッタ・マンニですが、ほぼ純粋に動きだけの今回のようなバレエでは、ラインの美しさ、テクニックの確かさが明確に際立っていました。男性ではクラウディオ・コヴィエッロも同様。やはり、トップに上り詰めるダンサーたちは、集団で踊っていても必ずぱっと目に入ります。ミリ単位の違いが大きな差となるプロのバレエの世界をここまで極めること、そしてそれを継続することがどれだけ大変か。彼らのストイックさには例外なく常に感動させられます。

 

Goldberg Variationen N. Manni T. Andrijashenko
(ph) Brescia e Amisano Teatro alla Scala

 

Goldberg Variationen M. Arduino C. Coviello
(ph) Brescia e Amisano Teatro alla Scala

さて、次のスカラ座公演はイリ・キリアンの傑作の1つ「Petite Mort」、そしてあのロベルト・ボッレがベジャールの「ボレロ」を踊ります! 乞うご期待!!!

記事:川西麻理

 

 

★ ☆ ★ 川西麻理の「バレエ音楽 豆知識」 ★ ☆ ★
あまりにも有名な作品ですので言うまでもありませんが、この楽曲はバレエ音楽ではなく、純粋なクラシック音楽です。「あまりにも有名」といっても、バレエファンの皆様はタイトルを見ただけではピンと来ないかもしれませんが、冒頭のテーマを聞いて頂ければすぐに「あ、聞いたことがある! 」と思われるはず。
クラシックファンにはこちらも「あまりにも有名」ですが、この作品といえばこの人!というピアニストがいるんです。その名はグレン・グールド。生涯に渡ってバッハばかりを弾き続けた、数多い逸話を持つ唯一無二の天才ピアニストです。1955年に録音された彼のデビューアルバム、いわゆる“55年盤「ゴールドベルク変奏曲」”は、なんとクラシック音楽でありながら、新譜チャートで1位になったんですよ!みなさん、ぜひ一度、彼の演奏姿をYOUTUBEで見てみてください。
まず、普通のピアニストではありえない姿勢に驚くはず!極端に低い椅子を使うため、顔と鍵盤がくっついてしまいそうな近さです。さらにグールドの代名詞とも言える唸り!彼の録音を聞くと必ず、グールド自身の唸り声(本当はハミング)がはっきりと聞き取れます。レコード会社が何度も止めるように言ったにもかかわらず、これを止めると弾けないと言って結局止めることはありませんでした。何から何まで異端児のグールドですが、彼のバッハ、特にゴールドベルクはどうしようもなく素敵。
クラシックに日頃興味のない方にも是非お勧めです!

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