キエフバレエ

【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
ご期待ください!

PICK UP!

海外バレエレポート(イタリア)3
スカラ座付属バレエ学校のクリスマス公演
『くるみ割り人形』

今回は、年末に行われたスカラ座付属バレエ学校のクリスマス公演「くるみ割り人形」についてご紹介したいと思います。


(ph)Chiara Stincone

 

それではまず、スカラ座付属バレエ学校の概要から見てみましょう。
創立は1813年に遡ります。日本ではあまり注目されることがない学校だと思いますが、実は、傑作バレエの初演を飾ったダンサーには、この学校で勉強したダンサーが非常に多いことをご存知でしょうか?
いくつか例をあげてみましょう。「ジゼル」のカルロッタ・グリジ、「コッペリア」のジュゼッピーナ・ボッツァッキ、「眠れる森の美女」のカルロッタ・ブリアンツァ、1895年版(プティパ・イワーノフ振付)「白鳥の湖」で初めて32回のグランフェッテを初めて披露したピエリーナ・レニャーニ…。歴史上これだけの超傑作バレエの初演を、スカラ座バレエ学校の卒業生が踊っているのです。

スカラ座は周知の通り、言わずと知れた“オペラの殿堂”。1800年代のイタリア人のほとんどは、バレエを大変好んだフランス人とは対照的に、バレエにはほとんど興味を示しませんでした。従って、当時のオペラ作曲家は、自らの作品のフランス語版にはバレエの場面をわざわざ挿入し、イタリア語版からはその場面を省いていたほどです。従って、スカラ座付属バレエ学校で勉強したバレリーナたちは外国に出て活躍することが多かったのです。しかし、彼らのダンスのクオリティーの高さは、前述の歴史的事実が疑う余地なく証明しています。皆さんの知っているダンサーですと、ロベルト・ボッレももちろん卒業生ですし、遡れば、カルラ・フラッチもそうですね。

ではここで、このような輝かしい歴史を持つスカラ座付属バレエ学校の今を見てみましょう。
まず学校は8年制。バレエ学校1年生は中学校1年生の生徒です(イタリアの教育制度は小・中・高が、5・3・5年体制)。1~3年生は、中学校の授業を終えた後に午後からレッスン、4~8年生は午前中から日中にかけてレッスンをした後に高校に通います。
昨年度の入学試験には、数少ないポストに約500人の応募があったとのこと。本当に狭き門です。この学校はここ数年、目を見張るほどレベルが上がっており、この厳しいセレクションを経て入学した子供たちの美しいことといったら! 付属学校の1年生の入学試験要綱には「バレエに関する特別な準備は必要はない」と書かれていますが、実際はそれはもはや全く事実ではないと言わなければなりません。入ってきたばかりの1年生のレッスンを見ましたが、タンデュなども、しっかり膝も足先も伸びていますし、アンドゥオールもきちんとできています。彼らが少なくないバレエのレッスンを積んできたことは一目瞭然です。
この学校の1年生を受験するために勉強していた女の子を1年間近くで見ていましたが、自分の部屋にもバーを取り付け、レッスン漬けの毎日を送っていました。手足も細く長く、身体的にも非常に恵まれた子でしたが、それでも合格することはできませんでした。


(ph)Giuseppina

 

超難関を突破して入学しても、なお一層厳しい環境が待っています。各学年とも学年の最後には進級試験があり、学校を去らなければならない子供も必ず出てきます。著名なバレエ学校ならどこでもそうですが、非常に張り詰めた環境の中、勝ち抜いていかなければならない、ある意味残酷な世界です。


(ph)Margherita Gnaccolini

 

そんな子供たちの晴れの場、それがクリスマス公演の「くるみ割り人形」です。普段、バー&センターの繰り返し、基本的な動きを徹底的に叩き込むための、ある意味拷問のようなレッスンから一転、衣装を着て、舞台の上で役を演じることができる!彼らにとっては普段内に秘めているダンスへのパッションを思い切りぶつけられる場であります。


(ph)Margherita Gnaccolini

 

私は12月13日に通しのリハーサルに足を運びました。場所はシュトレーレル劇場。大きくはありませんが、ミラノ中心に位置する歴史のある立派な劇場です。まず幕が開けてまず驚いたのは、舞台の豪華さ! スカラ座のプロの公演と同じクオリティーの舞台装置、衣装、照明。本当に驚いてしまいました。
そして当然のことながら、ダンスのクオリティー。ひとことで言うなら、はっきり言ってほぼプロ並みです(コールドは多少ミニチュア版ではありますが(笑))。普段レオタードで真剣そのものの表情で汗を流している彼らとは全く別の顔が! 生き生きした表情で、踊れる、また演じられる喜びを体全身から発していました。先生の怒号に耐え、涙をこらえながら一生懸命ストイックに頑張る姿しか見ていなかった私は、彼らがこんなに表情豊かに踊れることを知りませんでした。本当に素晴らしい公演でした。


(ph)Margherita Gnaccolini

 

これだけ完璧なテクニックを獲得し、この学校を卒業する彼らの将来には、イタリア特有の様々な問題があります。それらに関しては、また次の機会に。日本では、フランス、イギリス、ロシアなどのバレエ学校が注目され、スカラ座付属バレエ学校はあまり知られていないのが現状。積極的に外国人を受け入れない学校の体制にもおそらくその原因はあるでしょう。ですが、この学校には将来世界のスターダンサーになれる可能性を持った原石が大量に隠れているんです! この学校について、また現役生・卒業生について、これから少しずつ紹介していきたいと思います。お楽しみに!!!

記事:川西麻理

 

 

【 関連記事 】

海外バレエレポート(イタリア)1
ミラノ・スカラ座バレエ団『オネーギン』
https://balletnavi.jp/article/pickup/20171116-3885/

海外バレエレポート(イタリア)2
ミラノ・スカラ座バレエ団『椿姫』
https://balletnavi.jp/article/pickup/20180126-3970/