シャープ、かつドラマティックな現代版「海賊」 / 	『くるみ割り人形』

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PICK UP!

海外バレエレポート(イタリア)15
ミラノ・スカラ座「眠れる美女」

夏のヴァカンス前の最後のスカラ座公演、待望の超クラシック作品「眠れる森の美女」に足を運びました。

il corpo di ballo primo atto @Teatro alla Scala

今回は、定番ヌレエフ版のフローレンス・クラークによるリヴィジョン。特に映画の衣装デザイナーとしてアカデミー賞を受賞したことがある、フランカ・スクワルチャピーノが衣装を担当したことが注目を集めました。

私が立ち会ったのは6月29日。今回の上演では、オーロラ姫は、ゲストとして世界的に活躍するポリーナ・セミオノワ、そして当スカラ座のプリマ、ニコレッタ・マンニとマルティーナ・アルドゥイーノの3人のトリプルキャスト。私は、今まで一度も見たことのなかった、セミオノワの回を選びました。

Polina Semionova – Timofej Andrijashenko @Teatro alla Scala

 

世界の第一線で活躍するプリマ・バレリーナに大きな期待を持って臨みましたが、結果から言えば、私の心を揺さぶるパフォーマンスではありませんでした。もちろん、多くの拍手、ブラーヴァの声が飛び交っていましたので、他の人には伝わったに違いないことは明記しておきたいと思います。ですが、私のあくまでも個人的な感想は、振付を正確に美しく踊っているだけ、心が宿っていない踊りに映りました。1幕でのヴァリエーションでの、わくわくした気持ちを抑えられない若々しく溌溂とした、それでいてあくまでもエレガントな16歳の誕生日のオーロラ姫。第3幕での、デジーレ王子との結婚式での、より大人っぽく優雅なオーロラ姫。2つの違いは私には全く感じられませんでした。それ以前に、オーロラ姫の役自体が持つ、気品やオーラそのものが感じられなかったのです。オーロラ姫のその魅力こそが、このバレエの見どころであり、この作品の世界にに聴衆を引き込む力になるので、今回は前幕を通して、この物語の中に完全に入り込むことができませんでした。もちろん、相性、好き嫌い、ダンサーのコンディションや、ホームのバレエ団ではなく、ゲストでの出演であることなど、色々な条件がありますが、私にとっての今回のセミオノワのパフォーマンスは、残念ながら、ポジティブなものでは決してありませんでした。しかし当然それは、この名作古典バレエの、難易度の非常に高いテクニックを難なくこなせているというレベルを当たり前のこととしてスタートした、+αの要求であり、当然、素晴らしい技術を持ったダンサーだということを否定するものでは何らありません。

Polina Semionova e il corpo di ballo @Teatro alla Scala

このバレエには、本当にたくさんのダンサーがソロを踊る場面があり、バレエ好きにはたまらない作品。それぞれ全てのキャストの踊り手の名前を出すことはできませんが、デジ―レ王子はスカラ座のプリンシパルのティモフェイ・アンドリヤシェンコ、あと青い鳥とフロリナ王女はそれぞれ、こちらもスカラ座プリンシパルのクラウディオ・コヴィエッロと、ソリストのヴィットーリア・ヴァレーリオでした。その他のダンサーもみな素晴らしかったです。

Timofej Andrijashenko @Teatro alla Scala

Caterina Bianchi @Teatro alla Scala

Virna Toppi-Nicola Del Freo @Teatro alla Scala

また、上述の今回注目のスクワルチャピーノの衣装は本当に美しいものでした。ただ一つ、非常に疑問に思ったことが。1幕でのオーロラ姫の衣装が黄色だったことです。他にも黄色の衣装を来た群舞が多くおり、よく見ていないとオーロラ姫を舞台上で見失うほど、全く目立たない。これには驚きました。普段はピンクや白が多い気がしますが、何色かはいいとしても、ここまで群舞に紛れてしまうのは舞台演出上どういう意図があったのかと、大変気になりました。

黄色の衣装が目立たない写真 @Teatro alla Scala

あとは、この有名すぎるほど有名な作品について、付け足すべき解説は不必要でしょう。素敵な写真でご堪能下さいませ。何はともあれ、「眠れる森の美女」は「眠れる森の美女」。永遠に女の子たち、女性たちの憧れであり、クラシックバレエと言えばこの作品!というバレエでもあります。完璧なる夢の世界。何歳になっても女性ならオーロラ姫とデジーレ王子に憧れる気持ちを心の片隅に持ち続けます。コンテンポラリーが多くセレクトされている今シーズン中、このような少女の気持ちに戻れる作品を見ることができるのは本当に心躍る嬉しいものですね!

al centro Polina Semionova Timofej Andrijashenko Marta Romagna e Alessandro Grillo @Teatro alla Scala

Polina Semionova Edoardo Caporaletti Nicola Del Freo Gioacchino Starace Marco Agostino @Teatro alla Scala

finale terzo atto @Teatro alla Scala

 

★☆★川西麻理のバレエ音楽豆知識★☆★

“チャイコフスキー3大バレエ”とくくられるように、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」と
共に、本作品の音楽はチャイコフスキーによるものです。この夢に溢れたファンタジックな「眠れる森の美女」ですが、音楽的にはかなり複雑です。バレエピアニストとしても、3大バレエの中でも一番手こずると思うのは私だけではないはず。とは言え、バロックオペラで起こるアリアの連続と同様、このバレエはほぼヴァリエーションの連続なので、構成としては単純です。ウォルト・ディズニーは、このチャイコフスキーの「眠れる森の美女」の音楽が大好きで、ディズニーがアニメで本作品を扱った際(1959年)、全編に渡りチャイコフスキーの音楽を使用しました。従って、ほぼ例外なくディズニーのアニメを見て育つこちらの子供たちは、気が付かない間にみながオリジナルの音楽に親しんでいます。たまに小さな子供のクラスで「眠れる森の美女」の中の音楽を弾くと、子供たちの目がきらきら光り、ざわざわっとするのが面白い!バレエ音楽の定番中の定番と言って間違いありませんね。

 

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