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PICK UP!

海外バレエレポート(イタリア)20
ミラノ・スカラ座バレエ団『シルヴィア』

さて、今シーズンのオープニングを飾ったのは、 “コッペリア”(初演1870)、“泉”(初演1876)”と共に、ドリーブの3大バレエと呼ばれる“シルヴィア”(初演1876)です。

Sylvia – al centro Martina Arduino@Teatro alla Scala

Sylvia – al centro Christian Fagetti @Teatro alla Scala

ドリーブとは作曲家レオ・ドリーブ(1836-1891)のことで、「フランス・バレエ音楽の父」と呼ばれ、フランス・ロマンティック・バレエというジャンルの区分も存在します。フランス・ロマン派に属する彼の音楽は繊細で優美、バレエだけでなく多くのオペラも残しています。従って、この3つのドリーブのバレエは初演された劇場であるパリ・オペラ座のお家芸。 “コッペリア”はともかくとして、他の2作はフランス外の劇場にかかることはあまり多くないのではないでしょうか? 少なくとも私がスカラ座で“シルヴィア” を見たのは初めてでした。しかも、一番大切なシーズンのオープニングの作品に“シルヴィア” ? と不思議に思ったのですが、実は今回の目玉は別にあったのです。オペラ座で常にトップの座を務めてきたマニュエル・ルグリによる振付だということ! 彼はオペラ座引退後、ウィーン国立歌劇場バレエ団の芸術監督に就任しましたが、“海賊”の振付で成功を得てから、あちこちから振付のオファーが来たそう。そんな彼が選んだのはオペラ座付属バレエ学校時代から馴染んできた思い出深い “シルヴィア”だったそうです。以下、彼のインタビューの抜粋です。

Sylvia – Nicola Del Freo -@Teatro alla Scala

“僕はジョン・ノイマイアーのモダンで斬新な“シルヴィア”も実際に踊ったし、まさか自分がこの作品の振り付けをすることになろうとは思いもしなかった。事実、僕は本当の意味での振付家でもなければ、ラトマンスキー(=アレクセイ・ラトマンスキー: 様々なロシア圏のカンパニーでプリンシパルを務めた後、現在は伝統的な古典バレエの改訂・再演をすることで著名な振付家)のような過去の文献の研究者でもない。僕ができることは、メラントの振り付けに、自分のなかに深く染み込んでいるアカデミックなバレエで多少の色を加えることだ。 筋や設定も変えることなく、逆にオリジナルのものをより明確に聴衆に伝えることを心がけた。それぞれの役のキャラクターのコントラストがをわかりやすくなるよう、“コンテンポラリー的な”とは言えないまでも、“新鮮な”手直しを加えた。全ては、今日の観客に、クラシックなバレエに立ち会うことの喜びを享受してもらうことが目的である”。

Sylvia -Claudio Coviello -@ Teatro alla Scala

また、今回のスカラ座での上演は、スカラ座バレエの芸術監督フレデリック・オリヴィエリとルグリとの古い個人的な友好関係から生まれたようです。ルグリは “僕が提案したシルヴィアを即受け入れてくれたのは一緒にオペラ座で踊っていたこともある昔からの友人オリヴィエリであった”とも述べています。

Sylvia – Martina Arduino Claudio Coviello Nicola Del Freo @Teatro alla Scala

さらにスカラ座バレエ団について “スカラ座のスタイルは正確で速く、オペラ座のそれと大きな違いがない”と評しています。これはあくまでも推測の域を出ませんが、内部からはいつかはスカラ座常任になるのではないかという噂も。それほどルグリとスカラのコラボレーションは上手く進んだのでしょう。 しかし、それはある意味当然といえば当然。 スカラ座はルグリにとって、ゲストダンサーとして何度も立った舞台です。常任かどうかは別としても、近いうちにまたスカラ座と仕事をすることはほぼ間違いないのではないでしょうか?

Sylvia – Antonella Albano Mattia Semperboni Valerio Lunadei @ Teatro alla Scala

ルグリ自身が述べている通り、筋も衣装も振り付けも舞台装置も、これ以上ないというほどクラシックなものでしたので、あらすじなどは割愛し、今回は一番の目玉、“スカラ座とルグリとのコラボレーション”に焦点を当てました。 私が見た1月11日のキャストは、シルヴィア:マルティーナ・アルドゥイーノ、アミンタ:クラウディオ・コヴィエッロ、オリオン:クリスティアン・ファジェッティ、エロス:ニコラ・デル・フレーオ、ディアナ:マリア・チェレステ・ローザ。彼らのいつも通り素晴らしい踊りは写真でご堪能下さい。

Sylvia – Maria Celeste Losa Gabriele Corrado – @ Teatro alla Scala

次回はコンテンポラリーの小品5作の夕べ。マネンとプティの作品が上演されます。バリバリのクラシックからバリバリのコンテンポラリーへ。とても楽しみです!

 

★☆★川西麻理バレエ音楽豆知識★☆★
前述の通り、このバレエの音楽を作曲したレオ・ドリーブ。日本では、オペラかバレエに興味のない人には、クラシック音楽好きでもあまり馴染みのない名前なのではないでしょうか? しかしドリーブは当時、オペラとバレエの世界ではとても人気があり、大変な売れっ子でした。 なんとあのチャイコフスキーがこのバレエの音楽を聞いて大変感銘を受け、次のような文章を残しています。

レオ・ドリーブのバレエ“シルヴィア”の音楽を聞いた。(中略) 何と輝かしい、何と優雅な、何と美しいメロディ、リズム、ハーモニーの数々!!! 私は恥ずかしい。 この音楽を少しでも前に聞いたならば、断じて“白鳥の湖”の音楽を書くことはなかっただろう。

かの傑作“白鳥の湖”ですら、この“シルヴィア”を聞いた後だったら恥ずかしくて書けなかっただろう? チャイコフスキーにそこまで絶賛されたこのレオ・ドリーブの音楽ですが、私のような凡人からすると、果たしてそこまでの音楽だろうか? と思ってしまいます。しかし、当時の同僚が聞けばそのくらい素晴らしい出来だったのでしょう。一体このバレエ音楽に、チャイコフスキーにそこまで言わせたものとは一体何だったのか、個人的にもう一度じっくり音楽だけを聞いてみたいと思います。皆さんはどのようにお感じになりますでしょうか?

記事:川西麻理

 

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