上野水香プロデュースバレエ「Jewels from MIZUKA Ⅱ」プレビュー
~バレエの申し子が贈る、比類ない輝きに満ちた夢空間は必見!~
文:高橋森彦(舞踊評論家)
上野水香はバレエ界の一等星だ。得も言われぬ華やかさ、抜群のプロポーション、強靭なテクニック、そして次々と新たな役に挑み新鮮な演技を繰り出す圧倒的な存在感――。ローザンヌ国際バレエコンクールで受賞しモナコの名門バレエ学校に学び、同校を首席で卒業後日本を拠点に世界に羽ばたくプリマとして花咲ける道を歩んできた。2004年の東京バレエ団入団後は国内外で活躍の場をさらに広げ輝きを増している。
そんな上野が2014年11月、神奈川県民ホールで「Jewels from MIZUKA(ジュエルズ・フロム・ミズカ)」をプロデュースした。上野をスターダムに押し上げた巨匠ローラン・プティの3作品に加え古典名作『ドン・キホーテ』第三幕よりグラン・ディベルティスマンの主軸を踊り八面六臂の活躍を見せたのは記憶に新しい。東京バレエ団の仲間だけでなく世界的スターのウラジーミル・マラーホフ、プティ作品を受け継ぐ重鎮ルイジ・ボニーノを招いて行われた公演はバラエティ豊かで、バレエの面白さを存分に味あわせてくれた。
4年ぶり待望の第2弾が2018年11月17日(土)に再び神奈川県民ホールにて行われる。上野が踊るのは4曲。『カルメン組曲』よりアダージョ(振付:アルベルト・アロンソ)、『リベルタンゴ』(振付:高岸直樹)をマルセロ・ゴメスと、『ボレロ』(振付:プティ)を柄本弾と、『海賊』よりを柄本、秋元康臣と共演する。なかでも長年アメリカン・バレエ・シアターで活躍し、マシュー・ボーンの『SWAN LAKE』の主演でも賞賛されたゴメスと組むのは話題だ。『ボレロ』に関しても10年以上踊っているベジャール版ではなくプティ版に初めて挑むので注目が高まる。進化/深化し続け第一線をひた走る表現者・上野の現在形を見届けたい。
スターたちが所属を超えて集うのも見どころだ。日本バレエ界の至宝である下村由理恵と若々しい感性あふれる踊りが持ち味の今井智也(谷桃子バレエ団)は『ロミオとジュリエット』より(振付:篠原聖一)をドラマティックに踊るだろう。上野の東京バレエ団での先輩プリンシパルだった吉岡美佳は『Manon la mou』(振付:ベジャール)を踊り大人の表現力を発揮するはず。小野絢子、福岡雄大という新国立劇場バレエ団の人気プリンシパルが踊る『Craze of before dawn(夜明け前の狂気)』(振付:宝満直也)では、センス抜群の新進振付家としてバレエ・フリークの熱い視線を浴びる宝満の才気が充満するに違いない。また小野、福岡は『アラジン』よりパ・ド・ドゥ(振付:デヴィッド・ビントレー)も披露。
バレエ・ブラン(白いバレエ)の名作も堪能できる。『白鳥の湖』第二幕よりを渡辺理恵 京當侑一籠が、『ラ・シルフィード』よりを沖香菜子、秋元が踊るのは適役で実力派の好演が望めそうだ。いっぽう高岸、宝満作品以外にも日本の振付家による創作が取り上げられる。『Absence of Story』より(振付:島崎徹)を針山愛美、マラーホフが踊るのも大きな呼び物。『Shelter Skelter』(新作初演)は振付を高橋竜太が担い、東京バレエ団の現役団員・出身者が揃う〈Art Climbers Works〉(高橋、長瀬直義、梅澤紘貴、岡崎隼也、松野乃知、西村真由美、伝田陽美、上田実歩、秋山瑛)によって踊られる。
充実の顔ぶれ、幅広い演目による魅惑の公演を上野がプロデュースできるのは国内外での豊富なキャリアと人望あってこそ。彼女は日本バレエ発祥の地・鎌倉に育ち、小さな頃から我が国のバレエのメッカのひとつ神奈川県民ホールの舞台を踏んできた。バレエの申し子がホームグラウンドともいえる場でつむぐ比類ない輝きを放つ夢時間に酔いしれたい。
★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★
上野水香プロデュースバレエ
『Jewels from MIZUKA Ⅱ(ジュエルズ フロム ミズカⅡ)』
公演日時: 2018年11月17日(土) 開演:15:00 (14:15開場)
上野水香によるプロデュースバレエ・ガラ第2弾!
ウラジーミル・マラーホフとマルセロ・ゴメスを迎えダンサーたちの個性が宝石のように煌めく特別なステージ!
http://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=35562
【プログラム】
カルメン組曲 より アダージョ アロンソ 振付:上野水香 マルセロ・ゴメス
リベルタンゴ 高岸直樹 振付:上野水香 マルセロ・ゴメス
ボレロ プティ 振付:上野水香 柄本弾
『海賊』より:上野水香 柄本弾 秋元康臣
『ロミオとジュリエット』より 篠原聖一 振付:下村由理恵 今井智也
Manon la mou ベジャール 振付:吉岡美佳
Craze of before dawn(夜明け前の狂気)宝満直也 振付:小野絢子 福岡雄大
『アラジン』より パ・ド・ドゥ ビントレー 振付:小野絢子 福岡雄大
『白鳥の湖』 第二幕 より アダージョ:渡辺理恵 京當侑一籠
『ラ・シルフィード』より:沖香菜子 秋元康臣
Absence of Storyより 島崎徹 振付:針山愛美 ウラジーミル・マラーホフ
Shelter Skelter (新作初演) 高橋竜太 振付 :〈Art Climbers Works〉高橋竜太 長瀬直義 梅澤紘貴 岡崎隼也 松野乃知 西村真由美 伝田陽美 上田実歩 秋山瑛
※音楽は特別録音音源を使用
投稿日: 2018 年 10 月 11 日
カテゴリ: 公演プレビュー(レビュー)