【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
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PICK UP!

『あいちトリエンナーレ 2016』
唐津絵理インタビュー!

3年に一度の現代アートのフェスティバル『あいちトリエンナーレ2016』がこの夏開幕! 世界各国からアーティストを招き、愛知を舞台にパフォーミングアーツと現代美術の祭典を繰り広げます。
8月の開幕に先駆け、パフォーミングアーツ部門のキュレーターを務める唐津絵理さんにインタビュー。今回のテーマと見所をお聞きしました。

インタビュー・文:小野寺悦子

Q:2010年、2013年に続き、今年で3度目の開催を迎える『あいちトリエンナーレ2016』。今回のテーマと方向性をお聞かせください。
唐津:2016年のテーマは「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」。キャラヴァン=旅をしながら商売をする行商人、サライ=宿の意味を持ち、世界を視野にアートの旅をするようなイメージをテーマに込めています。空間移動はもちろん、アーティストが芸術表現を追い求める探求の旅、ジャンルを超えた旅など、旅にもいろいろな種類があり、幅広い意味のコンセプトを反映しています。また、虹は多様性をあらわすキーワードであり、カラフル、光、音など、多彩な角度からさまざまなメッセージが浮き彫りになればと考えています。

Q:パフォーミングアーツ作品、パフォーマーを選定する上で基準としたものは何でしょう。
唐津:パフォーミングアーツのジャンルでは、今回10組・計13作品を上演します。まず旅という広がりのあるキーワードをテーマに、さまざまな解釈で作品にアプローチしていきました。フェスティバルの役割のひとつに、今の時代を象徴するアーティストの紹介や新しいアーティストの発掘があると考えています。フィリップ・ドゥクフレといった著名なアーティストも取り上げますが、バルセロナのアニマル・レリジョンやリオデジャネイロのダニ・リマのような日本で一度も紹介されていないアーティストの発掘に力を入れて選定しました。

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アニマル・レリジョン『Chicken Legz』2014
提供:Animal Religion

もうひとつ、今回のキーワードとしてあるのがサーカス的要素です。日本の国際芸術祭でサーカスを取り入れることはあまりないと思いますが、移動しながら旅先で上演を繰り返すという部分で今回のテーマにもつながり、身体の特異性をみせるという意味ではサーカス的な表現は舞台芸術の根源に通じるものが多くある。実際ドゥクフレもサーカス学校出身ですし、ダニ・リマはサーカス集団からスタートしたアーティスト。さらに一般参加型プログラム『虹のカーニヴァル』では、ストリートダンスや大道芸のフラッシュモブも行います。

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ダニ・リマ『Little collection of everything』2013
photo: Renato Mangolin

Q:なかでも注目すべきパフォーマー、目玉作品といえば?
唐津:まずはフィリップ・ドゥクフレの最新作『CONTACT』。ゲーテの『ファウスト』が下敷きになっていて、ドゥクフレいわく、ピナ・バウシュの名作『コンタクトホーフ』へのオマージュとして創作したそうです。ドゥクフレはコンテンポラリー・ダンスの振付家として世界的に名を馳せていますが、最近はシルク・ドゥ・ソレイユの演出を行っていたり、ブロードウェイで作品を発表したり、クレイジーホースでショーの演出をしたりと、エンターテインメントの世界で幅広い作品を手がけていて、『CONTACT』もその前衛的なエンターテインメント性を含んだ作品になっています。ダンスにサーカス、映像、シアターなど、本当にいろいろな要素が入っているので、ひとつのキーワードで表現するのは難しい、あえていえばミュージカルのような作品ですね。そういう意味ではボーダレスで複合的な、『あいちトリエンナーレ2016』を象徴する作品だと思います。

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カンパニーDCA/フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT』2014
photo: Laurent Philippe

イスラエル・ガルバンは、近年コンテンポラリー・ダンス界で最も注目されているダンサーのひとり。今回は『SOLO』と『FLA.CO.MEN』の2作品を上演します。ガルバンはもともと有名なフラメンコ一家の出身で、彼自身も幼い頃からフラメンコダンサーとして活躍してきました。日本にもフラメンコの公演ではたびたび来日していますが、コンテンポラリーのステージをご覧になっている方は少ないのではないでしょうか。『SOLO』は、2007年に初演を迎えたガルバンの代表作。音楽はなく、タップとボディパーカッションと彼自身の踊りだけでみせる、その名の通りソロ作品です。

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イスラエル・ガルバン 『SOLO』
photo: Luis Castilla Fotografia

『FLA.CO.MEN』は2014年初演の最新作で、こちらはギターやサックスなど6名の音楽家とのコラボレーションを行います。ダンスがあり、音楽があり、語りも入る。フラメンコとは何かという問いのような作品になっていて、作中はフラメンコ一家に生まれて現在までフラメンコを探求してきた彼の旅が自身の言葉で語られていきます。今回はソロ作品とコラボレーション作品の2作を上演する訳ですが、両者を対比させることで、ひとりのアーティストの探求が浮き彫りになればと考えています。

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イスラエル・ガルバン 『FLA.CO.MEN』
photo: Hugo Gumiel

山田うんさんは新作『いきのね』を発表します。愛知県・奥三河地方に700年余り続く「花祭」という国の重要無形民俗文化財をモチーフにした作品で、実際に山田さんもダンサーを連れ現地へ何度かリサーチに出向いています。「花祭」は毎年11月から3月にかけ開催される神楽で、村ごとに地元の人たちが代々伝承されてきた踊りを夜を徹して踊る土着の芸能です。観せるための踊りというよりは、人々が踊りを通して神とつながり、日常と非日常を行き来する。観ることを前提として作られる舞台芸術と地域に根付いた芸能との差異もあり、原初的な身体の探求に取り組まれている山田さんがそれをどのように作品化していくか非常に興味深いところです。

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Co. 山田うん『舞踊奇想曲 モナカ』2015
© 羽鳥直志

Q:パフォーミングアーツに加え、現代美術の国際展も見逃せません。
唐津:現代芸術の祭典ということで、パフォーミングアーツ同様に美術展も先鋭的な作品を中心に取り上げています。抽象的で自由に受け止めていい、観る側に解釈を委ねる観方にお客さまが慣れているという意味で、コンテンポラリー・ダンスと現代美術には親和性があると思っていて。美術を観に来た方がパフォーミングアーツに出会ったり、パフォーミングアーツを観に来た方が空き時間で展覧会に立ち寄ったりと、複合的なジャンルを横断できる。『あいちトリエンナーレ2016』はパフォーミングアーツと国際展の両方にフォーカスした非常に珍しい祭典であり、幅広い方に関心を持っていただける懐の深さがあると考えています。

『あいちトリエンナーレ2016』の会期は8月11日〜10月23日の計74日間。うち10月6日から会期終了までを「レインボーウィークス」期間とし、パフォーミングアーツ作品を集中して開催。各会場へのはしごも可能で、県外からの観客も短期の滞在でより多くの演目を鑑賞できるようスケジュールが組まれています。そのほか、ダンスワークショップをはじめとしたイベントも満載。国内外の作品が集い、愛知を舞台に現代アートで盛り上げます。

 

あいちトリエンナーレ2016 http://aichitriennale.jp/

『パフォーミングアーツ』
http://aichitriennale.jp/artist/index.html#pa