【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
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PICK UP!

日本・モンゴル国文化取極締結40周年記念
東京小牧バレエ団公演
『イゴール公』『牧神の午後』『ペトルウシュカ』
公演プレビュー&インタビュー

創立68年の伝統を誇りに前進する日本バレエのパイオニア

バレエ団において伝統が受け継がれスタイルが浸透するには時間がかかる。パリ・オペラ座やマリインスキー劇場を引き合いに出すまでもなく伝統は十年一日には築けない。わが国において創立68年の伝統を誇り、なお前進するバレエ団がある。東京小牧バレエ団だ。

小牧バレエ団の創設者・小牧正英(本名:菊池榮一1911~2006)は第二次世界大戦前にハルビンのバレエ学校に学んだ。その後、上海バレエ・リュスで主要な役を踊る。古典やバレエの歴史を変えたディアギレフのバレエ・リュスの上演した作品を学び戦後帰国。その移植・普及に心血を注ぐ。敗戦から間もない1946年8月に『白鳥の湖』全幕日本初演が実現したのも小牧が振付を知っておりピアノ譜を持っていたためである。小牧がいなければ日本のバレエの発展は大きく遅れていたに違いない。

時は流れ小牧の遺志を継ぎ粘り強く奮闘するのが東京小牧バレエ団団長・菊池宗だ。小牧の甥にあたる菊池は、小牧の弟で故人の菊池唯夫と共に近代バレエ(小牧はディアギレフ作品をそう称した)上演に力を入れてきた。小牧没後の近年は、その魅力と意義を豪華で厚みある舞台創りによって一層強調する。『マダレナ』『マタハリ』などの創作にも意欲的。東京での主演舞台が熱望されていた超弩級プリマ倉永美沙(ボストン・バレエ団)を招き新国立劇場中劇場で2日間にわたって『白鳥の湖』全幕を上演したのも記憶に新しい。

小牧バレエ団の功績の1つに国際交流が挙げられる。なかでもアジアとの交流は盛んでモンゴル国立バレエ団と長年にわたり親交がある。2度のモンゴル公演も行った。きたる8月23日(土)、日本・モンゴル国文化取極締結40周年記念公演が新国立劇場オペラパレスで行われる。ボロディンの、合唱も入る曲にのせた勇壮な踊りがみどころの『イゴール公』、牧神の午睡を官能的に描く『牧神の午後』、感情を持ってしまった哀れな人形の悲劇を小牧が改良を重ね再演出した『ペトルウシュカ』――近代バレエの名作を一挙上演する。

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『牧神の午後』の牧神を踊るのはモンゴルの至宝アルタンフヤグ・ドゥガラー。伝説の天才ニジンスキー以来、ヌレエフ、ジュドといった稀代の名舞踊手の好演が知られるけれどもドゥガラーも当り役にしている。昨年のボストン・バレエ団ロンドン公演でも絶賛を浴びているだけに目が離せない。美しく風格のあるニンフ周東早苗は小牧の金看板である。ドゥガラーは今回初めて『ペトルウシュカ』のタイトル・ロールに挑む。牧神との踊り分けが楽しみだ。同作のヒロイン、バレリーナ役には近年ソリスト役を重ね成長してきた金子綾が挑む。『イゴール公』の主役フェタルマには、フランス、イギリスに留学し国際コンクール入賞歴を誇る期待の新人・清水若菜を抜擢した。ベテランから若手まで一丸となって伝統を受け継ぎ珠玉のレパートリーを輝かせるに違いない。見逃せない公演だ。

文:高橋森彦(舞踊評論家)

 

『牧神の午後』で共演する周東早苗&アルタンフヤグ・ドゥガラー(ボストン・バレエ団) 特別インタビュー

アルタン(ドゥガラーの愛称)さんは『牧神の午後』の牧神を得意とされています。
ドゥガラー 初めて踊ったのは2007年の東京小牧バレエ団のモンゴル公演でした。(小牧正英から伝授された)菊池宗先生に習いました。後にボストン・バレエ団でも配役され、その時パリ・オペラ座バレエ団から指導者の先生が来て驚かれました。「どうしてパリ・オペラ座版と振付が同じなんだ!?」。ニューヨークやロンドンでも踊りました。再び東京小牧バレエ団と踊れて嬉しいです。『牧神の午後』はニジンスキーの振り付けた世界で最初のモダンなダンス。コンテンポラリーダンスの原点。大事な作品です。音楽もセットも素晴しい総合芸術。テクニックに関してもピルエット、ジャンプではなくて、どう歩くとか、どうバランスを取るかとか、どう踊るのかが大切です。誰でも踊れるわけではありません。

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周東さんは何度もニンフ役を踊られています。こだわりや思い入れをお話しください。
周東 手の動きから脚の動きから何から何までクラシック・バレエとは違います。ギリシャの壺絵の世界を、生身の人間が平面的に動いて、舞台と距離のある客席まで伝えるのは難しいです。私は『牧神の午後への前奏曲』が大好きで故・小牧正英先生によく聴かされていました。菊池宗先生が岡本佳津子先生と踊られた時に、まだ小さな頃でしたが身長が高かったため6人のソリストに入りました。小牧先生に叱られながら教えていただきました。小牧先生、故・菊池唯夫先生、菊池宗先生の三代にご指導いただき光栄です。パートナーが違ったり、バージョンも少し違ったりするので、リハーサルは毎回楽しいです。

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2度のモンゴル公演を含めお2人は何度も組まれています。
周東 アルタンとはコミュニケーションを取らなくても見て何をしたいかが分かるのでやり易い。初共演から月日が経ち私も彼もその後色々な経験をしました。今日リハーサルで久しぶりに一緒に踊ったのですが会話が無くても合う。音の理解も一緒です。
ドゥガラー 早苗さんはプロフェッショナルなダンサーですし小牧バレエ団と踊れるのは嬉しい。小牧バレエ団は創立68年。凄い歴史です。10年以上前に初めてスタジオを訪れた時、昔のヌレエフやバリシニコフ、フォンテインの写真などもあり驚きました。

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周東さんは小牧正英先生の薫陶を受けた最後の世代です。今回はバレエミストレスとしてご指導に当られています。後進に何を伝えていきたいですか?
周東 総合芸術ですし作品の重みを伝えていかなければいけない。ダンサーが理解していないとお客様には理解していただけません。芸術性を高めしっかりと作品を伝えたいです。

アルタンさんは『ペトルウシュカ』のタイトル・ロールを踊るのは初めてですね?
ドゥガラー 以前からムーア人を踊っていますがペトルウシュカを踊ってみたかった。『牧神の午後』『ペトルウシュカ』を一晩でお客様がご覧になる。対照的なので見どころです。

公演に向けて抱負をお聞かせください。
周東 新国立劇場オペラパレスでオーケストラ付きで『イゴール公』『牧神の午後』『ペトルウシュカ』という小牧の十八番のレパートリーを並べられる喜びがあります。ぜひ皆さんに重みのある素敵なバレエをご覧いただきたい。若い世代にも楽しんでほしいです。
ドゥガラー 小牧の『イゴール公』『ペトルーシュカ』『牧神の午後』は観たほうがいい。バレエの歴史を知り未来に繋げていくためにぜひ観ていただきたい。若い方やバレエを習っている人にも観てほしい。そうすれば日本のバレエはもっと発展すると思います。

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『ペトルウシュカ』のバレリーナ役を踊る金子綾 インタビュー

『白鳥の湖』パ・ド・トロワなどを踊られていますが今回、小牧バレエ団が誇る『ペトルウシュカ』のバレリーナ役に抜擢されました。配役を聞いた時のお気持ちは?
金子 本当に!?と信じられなかったです。まさかと。呑みこむのに時間がかかってしまいました。やっていけるのだろうか……と思いましたが、やらなければいけない!という気持ちに変えて5月くらいから少しずつ役作りを始めました。

リハーサルで気を付けていることは?
金子 人形振りがあるのですが、ロボット・ダンスとかマリオネットの動きとか人形の動きを頭に入れています。かつ人間の感情を持っている。役作りではその辺が一番大変です。

難しい部分はありますか?
金子 ストラヴィンスキーの音楽が難しいですね。カウントが変化するので何度も聴いて自分の中で歌えるようになってから踊るようにしています。

芸術監督の佐々保樹先生はじめ先生方にどのようなアドバイスを受けていますか?
金子 1場と4場は皆さんがいるなかで踊るので人形っぽい動きをするようにと。2場と3場はもう少し人間らしい心情を出すようにアドバイスいただいています。場面場面での状況をきちんと把握し、3体の人形の関係性を教えていただいています。これらの事がお客様に伝わればと思います。

本番に向けての抱負は?
金子 子役も含め大人数が出ますし新国立劇場のオペラパレスが舞台。しっかりやらないといけない。皆で団結して1つの作品を創ったことがお客様に伝わればいいなと思います。

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『イゴール公』フェタルマ役を踊る清水若菜 インタビュー

今年4月に入団されたばかりですが『イゴール公』の主役フェタルマという大役に選ばれました。配役を聞いた時はいかがでしたか?
清水 初めは冗談を言われているのかと思いました(笑)。ワクワクする気持ちもありますが不安もありました。これまでに錚々たるバレリーナの方が演じられています。同じものを目指すことはできませんが、私が持っているものを120%出せるようにしたいです。

リハーサルに入っていかがですか?
清水 リハーサル早々捻挫してしまいました。でもやっと身体が動くようになってきました。フェタルマは情熱や色気のある魅力的なキャラクター。そこを出していきたいです。

バレエ団の雰囲気はいかがですか?
清水 入ったばかりで大役をいただき私が一番緊張していました。でも優しく接していただいています。(周東)早苗さんをはじめ皆さんずっと踊られてきた先輩方なので貴重なアドバイスを沢山いただいています。それをいかに自分で吸収していけるかだと思います。

イングリッシュ・ナショナル・バレエスクール、リヨン国立高等音楽舞踊学校に学び「カルポー賞国際バレエコンクール」第2位、「グラース国際バレエコンクール」第3位入賞を果たしています。今後どのようなダンサーになりたいですか?
清水 クラシック・バレエしか知らなかったので『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』などに憧れていました。でも私の性格からしてフェタルマのようなキャラクターに凄く魅力を感じるし踊っていて楽しい。登場人物のキャラクターが色濃いバレエが好きですね。

最後に抱負をお願いします。
清水 キャリアをお持ちの皆さんがいらっしゃるなかでご縁あって役をいただきました。私だからできるものをもっともがき苦しみながら見つけていきたい。フェタルマは勝利とパワーの象徴だと思うので、それをしっかり打ち出していきたいなと。私のできる精一杯のフェタルマを演じさせていただくので、ぜひ観にいらしてください。

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取材・文:高橋森彦(舞踊評論家) 撮影:石川陽

 

★☆★ 公演情報 ★☆★
日本・モンゴル国文化取極締結40周年記念
東京小牧バレエ団公演
「イゴール公」「牧神の午後」「ペトルウシュカ」

2014年8月23日(土)18:30 開演(17:45 開場)
新国立劇場オペラパレス

全席指定 SS席12,000円 S席10,000円 A席8,000円 B席6,000円
お申し込み・お問い合わせ:東京小牧バレエ団事務局 Tel:03-3377-7764

東京小牧バレエ団 http://www.komakiballet.jp/

 

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