【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
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PICK UP!

「SHIVER 2020 夏」に出演!
高瀬譜希子(元カンパニー・ウェイン・マクレガー)インタビュー

英国ロイヤル・バレエ団常任振付家を務める鬼才振付家ウェイン・マクレガーのカンパニーを経てダンサー・振付家として多方面で活躍する高瀬譜希子さん。世界的なミュージシャンらと組むコラボレーションの醍醐味やコロナ禍の今考えること、「SHIVER」への意気込みをお聞きしました。

 

インタビュー:高橋森彦

 

 

――2011年から2018年までカンパニー・ウェイン・マクレガーで踊り、現在フリーランスとして活躍されています。

フリーランサーとしての初めての仕事は、宇多田ヒカルさんの「Laughter in the Dark tour 2018」でした。長年慣れ親しんだ職場の皆や環境が一瞬で変わって、新鮮さに興奮しワクワクする気持ちの反面、私自身が振付家、リハーサルディレクター、コーチ、ダンサーとして全てを管理しなければいけないというプレッシャーに不安を感じたのを覚えています。普通の劇場と一転してアリーナという大きな舞台に2万人も入るお客さんの熱気、舞台上での生演奏、そして尊敬するミュージシャンたちとツアーを通して過ごした時間は宝物です。一瞬でしたが、ロックスターになったようで、フリーランサーとして最高の初仕事となりました。

 

 

 

――カンパニー時代、マクレガーの数々の創作に参加し世界中で踊りました。その経験が今に生き、糧になっていると感じる点はありますか?

カンパニー・ウェイン・マクレガーの作品の特徴は、ダンサーとマクレガーとのコラボレーションだということです。なので、ダンサーの一人一人に創作能力が必要になります。特に私たちには難しい課題があたえられ、同志がどうクリアするのか、その過程を見てとても勉強になりました。私も自分で創作する時は、同じ形式で作品を作るようになりました。したがって、自分の経験から、ダンサーに課題をあたえる時は彼らの調子を考えます。刺激が足りなそうだったらちょっと難しい課題を出したり、疲れている時はできるだけ楽しく面白い課題をあたえたりするように心がけています。

 

――カンパニー在籍時から自作を発表されています。インスピレーションはどこから湧いてきますか? そして、それをどのように自分の世界に広げていきますか?

私は、目に見えないものや形として触れられないものを表現してみたい。そういう創作的挑戦が大好きです。自分の心から創作が始まる時があるのですが、それは言葉では表現できない感情です。心の色とかニュアンスとか、それに近い題材からインスピレーションを得て、自分なりにデータ化して動きを創ります。その過程で、その題材に登場するキャラクターとか、表現体の想いとかを踊り込んでいくうちにどんどん整理され、最終的に踊りという言語になるのです。精神のセラピーみたいに振付を始めた14歳の頃から、私の心は作品を創ることによって整理整頓されていくような感覚があります。

 

 

――ダンサーやミュージシャンとの協同作業も行っています。トム・ヨークと共演したアトムス・フォー・ピース「Ingenue」のPV(2013年)、ユニクロのCM(2015年)、宇多田ヒカル「Forevermore」のMV振付(2017年)など多数です。コラボレーションの面白さ、興味深く思われるのはどういったところですか?

コラボレーションはとても刺激になります。自分以外からのインプットがあるので膨らむし、作品を自分とは違う角度から見ている人がいるのが魅力的だと思うんです。
宇多田ヒカルさんとは、「Forevermore」の振付で初めてお会いしました。ヒカルさんと同世代で、もちろんファンの一人です。コラボレーションの面白いところは、肩書きを忘れてアーティストとアーティスト、人間同士が作品を通してお互いを知ることだと思うんです。特にヒカルさんは、ご自身で作詞作曲をされているので、「Forevermore」を通して知るヒカルさんの一部、そして振付を通して伝える私の一部があります。コラボレーションはエネルギーのエクスチェンジなのです。
このMVにはドキュメンタリーがあって、そこにヒカルさんと2人で歩くカットがあるのですが、2人は同じように歩いているんです。確かに5日間みっちりリハーサルを一緒にしていたので、知らぬ間に歩き方まで影響されていることにビックリしました。

 

 

――今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により世界中の劇場が閉ざされました。どこで、どう過ごし、何を思われましたか?

イギリスにはパンデミックの波が少し遅れて届きました。参加予定のプロジェクトはことごとくキャンセル、延期、来年に持ち越しになり、かなり落ち込みました。将来への不安を感じ、外に出るのが怖くて、始めの一週間はしばらくボーッと過ごしてしまいました。
ロックダウンになり、Stay Home キャンペーンが何週間も続きました。外に出られるのは一日一回のデイリーエクササイズと買い物のためだけだったので、自転車で自然の多い公園や運河沿いをひたすら漕ぎまわり、日記を書き始めました。書き始めて思ったのが、自分の心の健康面をないがしろにしていたことでした。フリーになってから余裕がなくなり、目の前のことにひたすら挑戦するばかりだったのです。大昔に置いてけぼりにしてしまった自分にあらためて向き合って消化する作業は、自分を再開拓してリニューアルするような良い機会になりました。あとは、植物を種から育てたり、ミュージカルや演劇・オペラなどの振付にも興味があったので、ひたすらYouTubeでいろいろな作品を観て勉強したりして過ごしました。
唯一やったプロジェクトは、振付家のショバナ・ジェヤシンとのZoom R&Dでした。自宅の自分の部屋をスタジオにして、他の5人のダンサーとショバナとのパソコンの画面を通してのコラボレーションでしたが、家具や家の造りなどを利用したりなんかして、とても刺激になったし楽しかったんです! いろいろと大変な時期ですが、障害や困難を逆に利用して創作の可能性を広げていく彼女の姿勢、「I don’t think we should stop. (私たちは止めるべきではない)」と言った彼女の言葉にとても感銘を覚えました。

 

 

――「SHIVER 2020夏公演」では、和太鼓奏者の佐藤健作さんと共演します。佐藤さんとは、2016年の「横浜バレエフェスティバル」で共演し、『Measuring the Heavens』を発表しました。今回それを再び上演するのに加え、新作『サラスヴァティの鏡』に挑みます。

『Measuring the Heavens』のテーマは重力です。古代ギリシアから意識されていた重力を理解しようとした科学者たちに敬意を表しています。再演にあたり、前回の公演よりも重力とか宇宙観をもっと出したいなと思い、細かい動きや力の調整をしています。あと、4年分大人になった自分がいるので、そんな魅力が出せれば幸いです。
新作『サラスヴァティの鏡』は、『Measuring the Heaven』とは全然違う挑戦を考えています。健作さんの動きも作品の一要素になるような、もっと遊びを入れた私のユーモアが生かせるような楽しい作品にできたらと思っています。タイトルは曲名の「サラスヴァティ頌(しょう)」由来で、インドの河の女神・サラスウァティは富と芸術の神です。日本では七福神の一神・弁財天とされました。頌とは、「讃える」という意味です。

 

――もうひとつソロで踊るのが『1001(ワンゼロゼロワン)』です。2019年にダイナースクラブのCMに出演して踊っているものの基になっている作品だとうかがいました。

日本初演です。アニメ映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」からインスピレーションを受けて創った作品で、現世、Web、そして精神の次元を一つの空間、一つの身体で表現した30分三部構成です。今回は、最初の現世のセクションを踊ります。ここでは、命、植物や幼児が立ち上がろう、伸びようとする思い、衰えることや死、そして命の連鎖などを表現しています。2019年4月17、18日、ミネアポリスのThe Lab Theatreにて初演した、作曲家ダスティン・オハロランと照明デザイナーのヤロン・アブラフィアとのコラボレーションです。残念ながら、今年の3月、ワシントンD.C.のケネディセンターでの公演は、Covid-19の影響で休止となってしまいました。曲はダスティンがこの作品のために作曲したもので、日本初公開となります。ブライアン・サンティのヴァイオリンとダスティンのピアノの絶妙なハーモニーをお楽しみくださいませ。

 

 

 

――「SHIVER 2020夏公演」に向けての意気込みをお聞かせください。

出演を大変光栄に思っています。日本の誇りである才能あふれるスーパーダンサーたちと同じ舞台を踏めることと、特にアーティストとして厳しい現実の今、表現する場をいただけることに、とても感謝しています。
本当に久しぶりに日本で踊れて、しかもツアーとなると楽しみは百倍です。健作さんの生演奏をまた体験できることに、ワクワクしています。公演数も多いので、怪我のないよう、京都まで全力で頑張ります! 大好きな故郷日本で、日本の美しさを堪能する意気込みもたっぷりです。

 

――今後クリエイターとしてやっていきたいことなど抱負を教えてください。

私はニューヨークで生まれ、主に東京で育ち、ロンドンに移住して15年が経ちました。ロンドンは常に刺激はありますし、フリーランサーとしてはとてもいい場所ではあります。ヨーロッパに行きやすいことも利点です。パンデミックで気づいたのは、自然と触れ合う機会が今まであまりにもなさ過ぎたことでした。植物を育てて土を触り、裸足で草の上を歩くことで癒され、自然からいただく恩恵の大きさをあらためて知り、もっとアウトドアになろうと決心しました。
公演・プロダクションの運営は時としてはあまり環境に優しいとはいえません。私たちの家であり母である地球のこれからの未来と、他の生態系と地球が共生して行くことに向けて、環境になるべく優しいエコプロダクションが作れたらいいなと思いました。照明効果に自然光を使ったり、衣装や舞台装置なども植物性の素材を使ったり、運送のコストができるだけかからない方法を考えたり、工夫をすれば可能だと思うのです。
まだまだ状況は厳しいですが、将来は舞台やスクリーンだけにとらわれず、美術館や公共の場でできて、お客さんも参加・体験できるような作品も創っていきたいと思っています。
最後に、What Dance Can Do というノンプロフィットオーガニゼーション(民間の非営利団体)との活動を今年から始めます。ダンス教育を受けたくても受けられない環境にいる子供たちや、障害のある人々にその機会を奉仕する活動です。私はダンスの素晴らしさを身をもって知っていますし、何度もダンスに助けられて今ここにいられます。少しでも多くの人がダンスに触れる体験ができるように、活動の場を広げられたらと思っています。

 

◆4年前のインタビュー記事◆
高瀬譜希子インタビュー(カンパニー・ウェイン・マクレガー)
~踊りに救われ飛躍する異才の現在/横浜バレエフェスティバル2016出演~
https://balletnavi.jp/article/pickup/20160801-3388/

 

 


 

【SHIVER2020 夏公演予定】
※各公演の上演時間は75分前後を予定しております。

 

7月31日(金)SHIVER横浜
(旧名称:横浜バレエフェスティバル2020前夜祭)
会場:The Hall Yokohama(90席)
開演:19:30
出演者:二山治雄・東真帆・高瀬譜希子・遠藤康行(進行・指導)・ジュンヌバレエYOKOHAMA
~完売~

 

8月1日(土)SHIVER横浜
会場:The Hall Yokohama(93席)
開演:昼公演 14:00  / 夜公演 19:00
出演者:二山治雄・東真帆・柳本雅寛・高瀬譜希子・飯島望未・中島映理子
https://ballenta.net/shiveryokohama

※キャストの変更がございます。↓こちらからご確認ください。
https://ballenta.net/shivercastnews200702

 

8月2日(日)SHIVER横浜
会場:The Hall Yokohama(93席)
開演:17:30
出演者:二山治雄・東真帆・柳本雅寛・高瀬譜希子・飯島望未
https://ballenta.net/shiveryokohama

※キャストの変更がございます。↓こちらからご確認ください。
https://ballenta.net/shivercastnews200702

~8月2日(日)のS席は、残り2席となっております。~
※どうぞお早めにお求めください。(2020年7月17日現在)

 

8月8日(土)・9日(日)SHIVER戸隠(長野県)
会場:佐藤健作戸隠稽古場(100席)
開演:8日(土)15:30 / 9日(日)13:30開演
出演者:小池ミモザ・二山治雄・東真帆・高瀬譜希子・佐藤健作(和太鼓)
https://ballenta.net/shivertogakushi
8月8日(土)・8月9日(日)S席完売~
※A席は、両日とも引き続き販売いたしております。(2020年7月17日現在)

 

8月15日(土)SHIVER横浜
会場:The Hall Yokohama(93席)
開演:昼公演 14:00  / 夜公演 19:00
出演者:二山治雄・東真帆・柳本雅寛・高瀬譜希子・ 中島映理子
https://ballenta.net/shiveryokohama

※キャストの変更がございます。↓こちらからご確認ください。
https://ballenta.net/shivercastnews200702

 

8月17日(月)・18日(火)SHIVER京都
会場:ロームシアター・ノースホール(84席)
開演:17日(月)19:30 / 18日(火)19:00
出演者:米沢唯・木下嘉人・二山治雄・東真帆・高瀬譜希子・佐藤健作(和太鼓)
https://ballenta.net/shiverkyoto


 

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