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PICK UP!

神奈川県民ホール主催 松山バレエ団 新『白鳥の湖』プレビュー
~森下洋子&堀内充主演で贈る、時代を超えて心に響く圧倒的な舞踊ドラマ~

神奈川県民ホールにて公演を予定しておりました、2020年3月20日(金・祝)「松山バレエ団 新『 白鳥の湖』 全4幕」は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に係る神奈川県及び文化庁からの要請を受け、やむなく中止となりました。


文:高橋森彦

 

2020年3月20日(金・祝)、神奈川県民ホールで上演される松山バレエ団の新『白鳥の湖』に注目したい。破格のスケールで展開し見る者を圧倒する稀有なバレエである。

 

森下洋子(公女オデット)

 

“クラシック・バレエの代名詞”『白鳥の湖』は世界中で愛されているが、清水哲太郎が台本・振付・演出を担ったこの作品は古典を土台としながら独創性が際立つ。16世紀の神聖ローマ帝国を舞台とし、「ルネッサンス(再生)」をテーマに掲げるのが最大の特徴である。

 

公女オデットと皇太子・神聖ローマ帝国新皇帝ジークフリードは、闇の世界を支配する魔王フォン・ロットバルトに操られ、銀の森で出会う。二人は悲しみと絶望から立ち上がるべく手を取り合い「真実の愛」を貫き、魔王を滅ぼす。ここではバレエ=おとぎ話ではなく、人間にとって普遍の魂の崇高さを雄弁に物語り、観客の心に強いインパクトをもたらすのだ。

 

松山バレエ団 新「白鳥の湖」 第3幕の戴冠式

 

1994年に初演された同作品はチャイコフスキーの音楽のほぼ全曲を用い、その雄大な響きを存分に生かす。古典的風格を失わず、その上でルネッサンス的な情熱あふれる華麗なステージを繰り広げる。舞台美術は重厚で衣裳も壮麗だ。松山バレエ団はレパートリーにしているいずれの作品でも上演の度に精魂を込めて練り上げるが、新『白鳥の湖』は規模が大きく創意豊かで格別の趣がある。名門ならではの厚みのある舞台創りの真骨頂といっていい。

 

森下洋子(黒鳥オディール)

 

公女オデット・黒鳥オディールは舞踊歴69年となる世界的バレリーナ森下洋子。皇太子・神聖ローマ帝国新皇帝ジークフリードは古典から創作まで数多くの舞台で活躍する堀内充。大物中の大物の二人が初めて共演することはビッグニュースだが、共に長年現役として踊りながらバレエ芸術の奥義を真摯に追求し、後進の範たる存在である。清水の並みならぬ構想力から立ち上がる骨太な舞踊ドラマを奥深く演じるに違いない。

 

初共演となる堀内充(ジークフリード)と森下洋子(オデット&オディール)。1月に記者懇談会が行われた。

 

神奈川県民ホールは今年2020年で開館45周年を迎えた。日本を代表するバレエ・オペラの殿堂として名高く、松山バレエ団もさまざまな作品を上演してきたが、ここで新『白鳥の湖』を披露するのは25年ぶり。堂々たるスペクタクル大作である同作品を板に上げる場としてまことふさわしい。また3階席からでも舞台が良く見えることに定評があり、ロビーからは横浜港が見え開放的な空気が流れている。春の休日に神奈川県民ホールで夢のように華やかで感動的なバレエに触れ、贅沢な時間を過ごされてはいかがだろうか。