『横浜バレエフェスティバル』初出演!
井関エレナ インタビュー(ベルリン国立バレエ学校)
インタビュー・文:小野寺悦子
来月開幕を迎える『横浜バレエフェスティバル』に初登場する井関エレナさん。12歳でベルリン国立バレエ学校に留学、昨年のバルナ国際バレエコンクールで見事3位入賞を果した注目株です。開幕に向け帰国中の井関さんに、ベルリンでの日々と、本公演への意気込みをお聞きしました。
——ベルリン国立バレエ学校ではどのようなことを学んでいますか? 学校生活の様子をお聞かせ下さい。
学校は一年から9年生まであって、私は今7年生です。授業はクラシック・バレエ、コンテンポラリーダンス、モダンダンス、パ・ド・ドゥ、レパートリー、体操のクラスがあります。一番辛いのは体操のクラスで、休みなしで45分間ずっと腹筋、背筋、足上げをしたりする、体操というより筋トレの授業です。体操は週に二回ありますが、クラスの子たちもみんな嫌がっていますね(笑)。
何より大変なのは学科で、社会、物理、数学、解剖学とひと通り学びます。一度歴史のプレゼンを45分間するという課題があって、必死で準備をして臨みました。
下のクラスは朝7時50分からレッスンがあり、その後授業が続き、夕方からリハーサルが始まります。学校は月曜から土曜まで。土曜は午前だけなので、午後はショッピングをしたり、カフェに行ったり。ドイツは日曜になるとお店が閉まってしまうので、たいてい家でのんびり過ごしています。料理が好きで、肉じゃがなど和食を作ったり、ケーキもよく作ります。
——留学して特に大変だったことは何ですか?
ベルリンに留学した3日後に先生から突然“コンテンポラリーダンスのヴァリエーションを見せて”といわれ、急遽みんなの前で踊ることになりました。スタジオに先生方がぞろぞろ集まってきて、紙を持って何か書き込んでいたりと、オーディションのような雰囲気です。実はそれは学校公演のキャスト選抜の審査だったらしく、コンテンポラリーの全幕作品『星の王子様』の主役を踊ることになりました。でもまだドイツ語もわからなかった頃で、急に“明日から『星の王子様』のリハーサルに行って”と言われても何が何だかわからない。それに当時はコンテンポラリーの経験もほとんどなく、コンクールで踊ったくらいだったので、最初はすごく大変でした。加えて振付も後転をしたりとアクロバティックなものが多く、リハーサルでは全身痣だらけになっていましたね。
——ベルリン国立バレエ学校では学生が公演に出演するチャンスも用意されているのですね。
公演はすごくたくさんあって、それもベルリン国立バレエ学校に決めた理由のひとつでした。9月に留学して、その2月後にはスロバキアに行って踊っています。公演があること自体全然知らずにいたら、“明後日ツアーに行くからパスポートを準備して”と言われ、慌てて用意したのを覚えています。
学校公演は年に10回以上あり、ドイツ国内や海外のガラ公演にもたくさん出演させてもらいました。ガラでは先に卒業したマリインスキー・バレエのヴィクトル・カイシェタさんや五島温大さんとペアを組むことが多く、ラトビアなど海外でもたくさん一緒に踊っています。
公演の中でも一番印象に残っているのが、今年3月に踊った『海賊』全幕のメドゥーラです。全幕主演は初めてだったので、演技も含めいろいろ経験することができました。あと13歳のときにベルリン国立バレエ団の『くるみ割り人形』のオーディションに合格し、1幕のクララを踊ったのも忘れられない思い出です。そのほかカンパニー公演では『ラ・バヤデール』のコール・ド・バレエや、『くるみ割り人形』の雪の精も踊っています。ダニール・シムキン、ポリーナ・セミオノワ、ヤーナ・サレンコなど、カンパニーの稽古でスターダンサーたちと一緒に踊ることができ本当に夢のようでした。
——今年8月、第5回『横浜バレエフェスティバル』に初登場。『エスメラルダ』のヴァリエーションを披露します。
横浜は地元なので、今回出演することができてすごく嬉しいです。日本で踊るのはやはり特別な感覚がありますし、今の自分の踊りを横浜の人たちにみてもらいたいという気持ちもあります。
『エスメラルダ』はヴァリエーションの中で一番好きな演目です。あの表現の強さは踊っていてすごく楽しいですね。『エスメラルダ』はガラ公演やコンクールでかなりの回数を踊っていて、2017年にウィーンで開催されたヨーロッパバレエグランプリでもやはり『エスメラルダ』を踊ってグランプリをもらいました。
——これまで国内外のコンクールで数々の賞を受賞されてきました。ベルリン国立バレエ学校への留学もコンクールがきっかけだったそうですね。
小学校2年生で初めてコンクールに出て以来、数々の国内外のコンクールに出場してきました。賞を獲るためというよりも、経験のためという意味合いが大きかったと思います。ひとつのコンクールに向けて練習を重ねるというのではなく、コンクールに出てはビデオを見直し、気づいたことを練習して、次のコンクールに生かす、それでスキルを上げていく。コンクール=練習の場、舞台を少しでも多く経験する場、という考えです。なのでただ単に出るのではなく、例えば“今日は膝を伸ばそう”、“今日はアラベスクに気を付けよう”、など毎回テーマを決めて臨んでいました。コンクールによって審査の方向性もそれぞれ違うので、予選、順決戦、決戦と全部違う雰囲気で踊ったこともあります。課題曲にしても、強い踊りから柔らかい踊りまで勉強のためにまんべんなく選びました。とにかく回数を重ねたので、舞台では緊張しなくなりましたね(笑)。
2013年の秋に日本で開催されたユース・アメリカ・グランプリでスカラシップをもらい、12歳のときベルリン国立バレエ学校に留学しました。昨年のバルナ国際バレエコンクールにはベルリンから出場しています。これまで出たコンクールの中でもバルナ国際バレエコンクールが一番大変でした。何しろ第1ラウンドから第3ラウンドまであって、炎天下の日中から真夜中、そして明け方にかけて野外ステージでリハーサルをすることもありました。ただ大変ではあったけど、バルナ国際バレエコンクールに出場するのは夢だったので、ステージに立ったときは興奮しっぱなしでした。
——将来はどんなダンサーになりたいですか?
憧れのダンサーはヤーナ・サレンコ。表現やコントロール力も本当にすごくて、彼女のようなダンサーになるのが目標です。踊ってみたいのは『ロミオとジュリエット』です。やはりヤーナが踊っているジュリエットを観て、“何てステキなんだろう”と思って憧れるようになりました。目指しているのは、お客さんに感動を与えられるダンサーです。テクニックもコントロール力もあり、観客を惹きつけられるダンサーになりたいと思っています。
★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★
横浜バレエフェスティバル2019
~バレエの“力”が8月3日に”かながわ”へ集結!
主催:株式会社ソイプランニング、神奈川県民ホール
https://yokohamaballetfes.com/
開催日:2019年8月3日(土)
会場:神奈川県民ホール 大ホール
【出演】
・小池ミモザ(モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 プリンシパル)
・平田桃子(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)
・高橋絵里奈(イングリッシュ・ナショナル・バレエ リード・プリンシパル)
・菅井円加(ハンブルク・バレエ団 プリンシパル)
・津川友利江(元バレエ・プレルジョカージ)
・厚地康雄(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)
・遠藤康行(元マルセイユ国立バレエ団 ソリスト・振付家)
・二山治雄(パリ・オペラ座バレエ団契約団員)
・加藤三希央(ロイヤル・フランダース・バレエ団 ソリスト)
・柳本雅寛(ダンサー、振付家、+81主宰)
・大宮大奨(ダンサー、振付家、俳優)
・エドワール・ユ(BEAVER DAM COMPANY 代表)
・前田紗江(英国ロイヤル・バレエ団 アーティスト)
・中尾太亮(英国ロイヤル・バレエ団)
・井関エレナ(2018年ヴァルナ国際バレエコンクール ジュニア女子3位 /ベルリン国立バレエ学校)
・難波亜里咲(2019年出演者オーディション優勝※神奈川県民ホール賞/所属:HAGAバレエアカデミー)
・遠藤ゆま(2019年出演者オーディション第2位/所属:エンドウ・バレエ)
・ジュンヌバレエYOKOHAMA(桑山奈那子・小林咲穂・田中優歩・中山諒・中島耀・橋本杏梨・升本果歩・ 池上桜・沖本悠衣・荻原千聡・川野涼佳・周藤百音・高尾志結)
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=goYeqL5nHw8&w=500&h=281]
投稿日: 2019 年 7 月 18 日
カテゴリ: インタビュー