『横浜バレエフェスティバル』初出演!
英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル厚地康雄インタビュー
インタビュー・記事:小野寺悦子
今年第5回開催を迎える『横浜バレエフェスティバル』に、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の厚地康雄さんが初登場! 昨年、日本人男性として初めて同団のプリンシパルに昇進した厚地さん。『横浜バレエフェスティバル2019』では、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパルの平田桃子さんと共に『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥを、そしてイングリッシュ・ナショナル・バレエ リード・プリンシパルの高橋絵里奈さんとペアを組み『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥを披露します。開幕を前に、厚地さんに本公演への意気込みと、英国での活動をお聞きしました。
——今回初登場となる『横浜バレエフェスティバル2019』で、ピーター・ライト版『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥと、『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥを披露します。厚地さんが考える両作品の魅力、手強さ、課題とは? また、思い出深いエピソードがありましたらお聞かせください。
『くるみ割り人形』は、日本でもイギリスでも初めて主役をいただいた演目。たくさんコーチングしていただきましたし、今だにデビューした日のことを鮮明に覚えています。王子の存在感、プリンシパルとしての存在感を十分に出せるよう踊りたいと思っています。
また『海賊』はガラなどで何回か踊る機会がありましたが、やはりテクニックと表現が大切です。僕には今の若い子たちのようなテクニックはありませんが、ガラでもストーリーをお客様に伝えることに重きを置いて踊りたいです。
——『くるみ割り人形』は英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパルの平田桃子さんと、『海賊』はイングリッシュ・ナショナル・バレエ リード・プリンシパルの高橋絵里奈さんとペアを組まれます。ダンサーとして、そしてパートナーとしてのお二人の魅力をお聞かせください。
平田桃子さんは抜群のテクニックと舞台での存在感が魅力的なダンサーであり、バレエ団の誰もが信頼を寄せるスーパーダンサー。同い年ですが、とても尊敬しています。パートナーとしても、桃子さんと踊るときは不安がありません。私生活でも仲良くしています。
高橋絵里奈さんとは今回初めてペアを組ませていただきます。学生時代から絵里奈さんの舞台は何回も観たことがありますが、その美しいムーブメントと繊細な表現がとても魅力的なダンサーで、素敵な人間性がそのまま踊りに出ているという印象です。今回共演できることをとても楽しみにしております。
——英国ロイヤル・バレエ・スクールを卒業後、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に入団。新国立劇場バレエ団に移籍し、2011〜2013年まで日本で活躍された後、古巣の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に再入団されています。英国と日本のバレエ環境の違いをどう思われますか? また、日本で踊った経験で役に立ったなと感じることがありましたらお聞かせください。
1番の大きな違いは、舞台数ですね。それと年間の演目数も違います。日本はリハーサル期間がほとんどで、1つの作品にたくさん時間をかけてリハーサルしていく。その分舞台の完成度は高いと思います。イギリスは、日本よりも演目数が多いのに、リハーサル期間は少ない。限られた時間内で作品を完成させることが必須です。舞台数が多いので、作品を何回も上演することによって役に磨きをかけていき、自分の成長を感じられる。舞台をしていることが仕事という感覚が強いです。
移籍前の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団では当時アーティストでしたが、新国立劇場バレエ団にはソリストとして入団し、当時芸術監督だったデイヴィッド・ビントレーからたくさんのチャンスをいただきました(後にファースト・ソリストに昇格)。その経験と成長が今の僕にとってかけがえのないものとなっています。当時出会った人たちに今でも支えてもらっていることを含め、あの時日本に帰る決断をしたことは、僕の人生の中でベストな決断の内の1つだったことは間違いありません。
——英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団について、厚地さんが考える魅力をご紹介ください。
魅力のひとつは幅広いレパートリーですね。イギリスの歴史ある代表的なバレエや、ピーター・ライトのバレエなどを中心に上演します。あとは、バレエ団の雰囲気がとてもいいです。家族のようなダンサーの集まりなので、入団した時もすぐにみんなに馴染めました。
——英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の年間公演数は? バレエ団のスケジュールを教えてください。
朝10時半から1時間15分のクラスで、12時からリハーサル。配役によってリハーサル時間も変わってきますが、6時半に終わります。プリンシパルになってからは、一日中リハーサルということはほとんどなくなりました。舞台数は年間約150~160公演です。主役はキャストがたくさん作られるので、僕自身が出演するのは年間40公演弱くらいでしょうか。
——昨年、日本人男性ダンサーとして初めて英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに昇進されました。プリンシパルになり、踊りの面、精神面で変わったことはありますか?
日本人男性で初という実感はありませんし、自分の中で特に心境が変わったということはないと思います。ただ、周りの目は変わってきますよね。やはり厳しい目で見られるようになったと思うので、それに負けないように、日々鍛錬するのみです。バレエ団を背負う身になったので、恥ずかしい公演はしないように。
——英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に再入団されて6年が経ちます。この6年間で大きく変わったことは何ですか?
1番の変化は、4年前に子供が生まれて、バレエと私生活の両立をするようになったことです。子育てで自分の時間が削られる中で踊ることは今までより数倍大変ですが、子供が自分の舞台を観に来ることは特別で、とても嬉しいことです。
——忙しい日々の中でのほっとする時間、没頭している趣味など、プライベートの息抜きや楽しみにしていることは何でしょう?
やはり家に帰ったらホッとしますね。どんなに仕事が大変でも、娘の顔を見たら疲れも消えます。日曜日はなるべく家で家族と過ごすようにしていますが、例えば平日でリハーサルが早く終わる日などは、最近ハマっているスカッシュやロッククライミングなどに友達とよく出掛けています。昔から体を動かすのが好きで、筋トレもたくさんします。
——バレエダンサーとして、日頃から気を付けていることがありましたらお教えください。
朝のクラスの前にピラティスをして、身体と心を整えます。それと、食事も気を使っています。タンパク質や炭水化物、ビタミンは意識して摂るようにしています。あと、筋トレもしています。僕は体が細いのですが、彫刻のような体をした外人と闘わなければいけないので、1ミリでもコンプレックスが取り除けるように。
——プリンシパルとして、今後挑戦してみたいこと、目指すものとは?
英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のレパートリーはほとんど踊らせてもらいましたが、『二羽の鳩』や『マノン』は死ぬまでには挑戦してみたいですね。あと、踊ることのできる寿命というのは短いので、なるべく日本で踊る機会が増えたらいいなと思います。僕にとって日本のお客様は特別なので、イギリスで培ったものを少しでも多くお見せしたいと思っています。
——最後に、この夏開幕を迎える『横浜バレエフェスティバル2019』出演に向け、メッセージをお願いします。
今回『横浜バレエフェスティバル2019』に出演させていただくことをとても嬉しく思っております。みなさんに少しでもイギリスの香りを感じていただけるように、また笑顔で帰っていただけるように、精一杯踊ります。どうぞ応援よろしくお願いいたします!
★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★
横浜バレエフェスティバル2019
~バレエの“力”が8月3日に”かながわ”へ集結!
主催:株式会社ソイプランニング、神奈川県民ホール
https://yokohamaballetfes.com/
開催日:2019年8月3日(土)
会場:神奈川県民ホール 大ホール
【出演】
・小池ミモザ(モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 プリンシパル)
・平田桃子(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)
・高橋絵里奈(イングリッシュ・ナショナル・バレエリード・プリンシパル)
・菅井円加(ハンブルク・バレエ団 ソリスト)
・津川友利江(元バレエ・プレルジョカージ)
・厚地康雄(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 プリンシパル)
・遠藤康行(元マルセイユ国立バレエ団 ソリスト・振付家)
・二山治雄(パリ・オペラ座バレエ団契約団員)
・加藤三希央(ロイヤル・フランダース・バレエ団 ソリスト)
・柳本雅寛(ダンサー、振付家、+81主宰)
・大宮大奨(ダンサー、振付家、俳優)
・エドワール・ユ(BEAVER DAM COMPANY 代表)
・前田紗江(英国ロイヤル・バレエ団 アーティスト)
・中尾太亮(英国ロイヤル・バレエ団)
・井関エレナ(2018年ヴァルナ国際バレエコンクール ジュニア女子3位 /ベルリン国立バレエ学校)
・難波亜里咲(2019年出演者オーディション優勝※神奈川県民ホール賞/所属:HAGAバレエアカデミー)
・遠藤ゆま(2019年出演者オーディション第2位/所属:エンドウ・バレエ)
・ジュンヌバレエYOKOHAMA(桑山奈那子・小林咲穂・田中優歩・中山諒・中島耀・橋本杏梨・升本果歩・ 池上桜・沖本悠衣・荻原千聡・川野涼佳・周藤百音・高尾志結)
投稿日: 2019 年 6 月 7 日
カテゴリ: インタビュー