NBAバレエ団『The Little Mermaid/真夏の夜の夢』プレビュー
~珠玉のレパートリーで味わう物語バレエの魅惑~
文:高橋森彦(舞踊評論家)
物語性豊かなバレエを満喫しよう! NBAバレエ団(日本バレエアカデミーバレエ団)が2019年5月25日(土)、26日(日)、新国立劇場中劇場で上演する2演目はバレエ好きから家族連れまでが楽しめる珠玉の舞台だ。
『The Little Mermaid』はおなじみアンデルセンの童話で名高い「人魚姫」の物語で、2018年にレパートリーに入ったばかり。海の魔女に声を奪われ、愛する王子に思いを伝えられないマーメイドの切なく純粋な愛を描いたラブストーリーだ。振付家のリン・テイラー・コーベットは米ブロードウェイでも活躍する才人で、魅せ方が抜群に上手い。踊りに継ぐ踊りでメカジキら海に棲む生き物たちの踊りを生き生きと伝え、場面転換も巧みで一気呵成に物語へと引きこむ。さらにナレーション(綿引さやか)が入るのも分かりやすく、踊りをしっかりと引き立てる作りになっている。
『真夏の夜の夢』はシェイクスピアの喜劇が原作。妖精の森で4人の若者たちと妖精が織り成すファンタジーだ。振付のクリストファー・ウィールドンは英国ロイヤル・バレエ団をはじめ世界各地で大ヒットした『不思議の国のアリス』やトニー賞4部門を受賞したミュージカル『パリのアメリカ人』を手がけ名声を博している超人気振付家である。この作品はウィールドンが2007年に米コロラド・バレエで初演した全幕バレエで、同バレエ団でプリンシパル(最高位ダンサー)を務めた芸術監督の久保綋一が2013年に日本で初めて紹介した。スピード感豊かな振付とウィットに富んだ演技が特色で、英国に生まれ育ち米で活躍の場を広げたウィールドンらしいセンスが光る秀作である。
昨今マスコミでバレエが話題になることは少なくないし、日本のダンサーが世界中で大活躍しているのは周知の通りだ。「バレエ大国」とも呼ばれる日本のバレエだが、今一つ弱いのがプロデュース能力である。その点、日本人で初めて米の「ダンスマガジン」の表紙を飾り、「ニューヨークタイムズ」から「完璧なるバレエの巨匠」と称えられた久保は、ブロードウェイに代表されるショービジネスの世界と全米各地のコミュニティに根付くバレエの広がりも肌で知る。芸術性を高めつつ幅広い観客を魅了し楽しませるバレエを提供する久保とNBAバレエ団の活動は、日本バレエのフロンティアとして注目される。バレエとは、難しくなく親しめるもの――今回の物語バレエ2演目を見れば、そう実感できるはずだ。
【芸術監督・久保綋一からのメッセージ】
今回は皆様にもなじみ深い『The Little Mermaid』、今をときめく振付家クリストファー・ウィールドンによる『真夏の夜の夢』という2作品をご用意させていただきました。
いずれもバレエファン、それにファミリーや初めてバレエをご覧になる方にも最適だと思います。
『The Little Mermaid』』の再演に際し劇中の歌を完全日本語化いたしました。前回ご覧になられた方もまた違った感動を味わっていただけるでしょう。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。
★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★
公演詳細はこちら⇒ http://www.nbaballet.org/performance/
公演名:『The Little Mermaid/真夏の夜の夢』
日時:
●2019年5月25日(土)開演 14時/17時
14時:「The Little Mermaid」/17時:「真夏の夜の夢」
●2019年5月26日(日)開演 13時/16時
13時:「The Little Mermaid」/16時:「真夏の夜の夢」
会場:新国立劇場 中劇場(東京都渋谷区本町1丁目1−1)
チケット料金:
S席 6,000円
A席 5,000円
B席 3,500円
C席 1,500円
※3歳未満の入場はご遠慮ください。
チケットご購入:
● NBAバレエ団 http://www.nbaballet.org
TEL:04-2937-4931(月~金/9:00~17:00)
● チケットぴあ https://t.pia.jp(Pコード:491-486)
投稿日: 2019 年 5 月 9 日
カテゴリ: 公演プレビュー(レビュー)