【PICKUPについて】

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PICK UP!

オニール・八菜さん
パリ・オペラ座昇進試験 レポート

「横浜バレエフェスティバル2015」で芸術監督を務めていただいた遠藤康行さんから、先日行われた、パリ・オペラ座の女性ダンサー昇進試験のレポートが届きましたので、ご紹介させていただきます。

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11月3日パリ・オペラ座女性ダンサーの昇進試験に行ってまいりました。
パリ・オペラ座では下から「カドリーユ」「コリフェ」「スジェ」「プルミエール・ダンスーズ」「エトワール」という五段階の階級があり、「プルミエール」まではバレエ団に入団してから毎年行われる試験によって昇格します。昇進先の空席は毎年階級ごとに違い、頂点にのぼりつめるまで恐ろしく険しい道のりを経て、ディレクターから最高位の「エトワール」に任命されるのです。
世界最高峰バレエの殿堂、ガルニエ宮での昇格試験は最も長い歴史をもつバレエ団にふさわしい煌びやかな戦いでした。

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今回は新ディレクター、ミルピエ氏の今シーズンの公演を意識してか、課題曲と自由曲もバランシンやロビンスの作品が多く見受けられました。
ぼくはコリフェから観させていただきましたが、会場の雰囲気は普段の公演とは全く違い、踊り終わっても拍手は一切なしという極限の緊張感。
オニール・八菜さんは今回、スジェからプルミエールへの昇格試験です。八菜さんは2013年パリ・オペラ座入団。パリ・オペラ座バレエ学校出身ではない、フランス人ではない、にもかかわらずその類い稀なる才能と美しさ、そしていつでも与えられたチャンスをものに出来るようにしてきた、たゆまぬ努力でこれまでスピード出世してきました。今回プルミエールへ昇進できる席は2席。挑戦者は8人。

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まずは課題曲ロビンス振付、「四季」より春のヴァリエーション。
全員同じ白い衣裳でロビンス特有の難しい振りをどのダンサーも安定した技術でさらりと踊りました。そんな中、八菜さんの登場順は一番で「不利になるのでは?」という懸念を吹き飛ばす勢いで登場。元々長身でスタイルの良さにプラス 的確なテクニック、特にジャンプのダイナミックさ、 舞台上でさらに大きく見えるその存在感で圧倒的に他を寄せ付けない感じでした。

そして注目のフリーヴァリエーションはヌレエフ版「ライモンダ」3幕。
煌びやかなチュチュを着ることでさらに気品と風格がこの上なくアップ。
水を打ったような静けさから始まるパドブレとポールドブラは息を飲むほどの美しさと緊張感で観客の目を釘付けにして離さず、踊り終わった瞬間に観客席も息をするのを思い出したようにざわざわと今までにない興奮した様子が長く続きました。拍手禁止でなければ大喝采となっていたでしょう。
昇進試験のヴァリエーションという枠を通り越して全幕のライモンダを観たような充実感でした。

その後、結果発表を待つため八菜さん一家とオペラ座の隣にあるカフェ・ド・ラペで待っていると、着替えて半泣きの様子でこちらにやって来て「私、プルミエール・ダンスーズになった!!」と笑顔で報告。
8人中堂々第1位でのプルミエール昇格です。御家族の方々も大喜びで特にお母様は毎年心配されていたのでしょう、「やっとこれでコンクールが終わる」と胸をなでおろされていたのが印象に残ります。

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その後は風格のあるバレリーナから現代っ子にもどり、友達や同僚に携帯で報告とお祝いの嵐。
まだまだ計り知れない伸びしろを持つ八菜さん、これからはパリ・オペラ座プルミエール・ダンスーズとして主役を踊り私達を魅了し続けてくれる事でしょう。そして近い将来エトワールに任命されるのも夢ではありません。
今後も活躍を期待すると共に応援していきたいと思います。
本当におめでとうございました。

遠藤 康行