横浜バレエフェスティバル出演・特別WS講師
児玉北斗インタビュー
8月に開幕を控えた『横浜バレエフェスティバル2015』に出演し、新作を発表するスウェーデン王立バレエ ファースト・ソリストの児玉北斗さん。また7月にはパートナーの木田真理子さんと共にワークショップを開催し、レッスンとレクチャーを行います。
公演に先駆け、帰国中の児玉さんにインタビューを敢行! 新作の概要とワークショップについてお聞きしました。
インタビュー:小野寺悦子 インタビュー動画:石川陽
●『横浜バレエフェスティバル2015』ではどのような作品を踊る予定ですか?
柳本雅寛さんと青木尚哉さんと僕の三人で新作を作っています。作品としてはコンテンポラリー。ジャンル分けする意識はないけれど、新しいこと、今感じていることをぶつけるとそうなってくる。みんなで意見を出し合い、どんどん否定していき、そこで残ったものをどう形にするかというのが僕らのやり方です。出てきたものを組み合わせるのではなく、否定していく作業が多いので、力を合わせているのか喧嘩しているのかといった感じ(笑)。でも最終的には、誰の意見だったかわからないくらい不思議とひとつにまとまるんです。
●カンパニーでもやはりコンテンポラリー作品を踊ることが多いのでしょうか。
スウェーデン王立バレエは現存するバレエ団の中で4番目に古い、歴史あるカンパニーです。ただコンテンポラリーにも積極的に取り組んでいて、年間約80公演の内、コンテンポラリーは4割くらい。古典をきちんとやりつつ、同時に最先端のコンテンポラリー作品も取り入れる、という二極化が進んでいます。それはウチだけでなく、ヨーロッパ全体にそうした流れを感じます。
オリジナル作品で最も成功したのはマッツ・エックの『ジュリエットとロミオ』。あと最近ではヨハン・インガーの新作、アレクサンダー・エクマンの振付作、エマニュエル・ガットの作品を上演しました。来シーズンはマッツ・エック版『白鳥の湖』、サシャ ヴァルツの『ケルパー』の上演が控えています。
●『横浜バレエフェスティバル2015』の関連企画として、木田真理子さんとワークショップを行います。どんなクラスになりそうですか?
コンテンポラリーダンスのワークショップです。クラス1と2では、コンテンポラリーとの関わり方を紹介します。クラス3はレパートリーレッスンで、バレエカンパニーにおけるコンテンポラリーの在り方を伝えます。クラスは木田と共同で教えます。僕ひとりの意見だけではなく、いろいろな視点を混ぜていくことで、コンテンポラリーに柔軟に向き合ってもらえたらと考えています。バレエの延長線上としてコンテンポラリーを捉えるのではなく、コンテンポラリーとはこういうものなんだと探ってもらう。将来プロ目指す人たちに、コンテンポラリーをリサーチする手助けができたらと思っています。
●児玉さんがコンテンポラリーに初めて出会ったのはいつ頃ですか?
僕はもともとクラシック出身ですが、コンクールで踊る必要があり、10代の頃に初めてコンテンポラリーに触れました。僕の世代はちょうど、日本のコンクールでもコンテンポラリー部門ができはじめた時代。バレエダンサーもコンテンポラリーをやらなければという意識が生まれたり、いろいろ変わりつつある時期でした。
コンテンポラリーの楽しさは最初から感じましたね。それまでバレエを物作りの現場として考えたことはなく、どれだけ自分を磨くかという意識でいたので、全く違う面で想像力を刺激された。新しい世界が開けた気がしたし、稽古がすごく楽しみだったのを覚えています。
●国際コンクールなどで、よく日本人はコンテンポラリーが弱いと指摘されます。問題はどこにあると思われますか?
教育システムの問題が根深いと思います。海外のバレエ教育は芸術教育の一環として成り立っていることが多いので、バレエのクラスだけ受けていればいいという訳ではない。コンテンポラリーやキャラクター、舞踊史など、多角的な教育システムになっているのが日本との大きな違いでしょう。ただコンクールでコンテンポラリーが弱いと言われがちな反面、ヨーロッパで活躍している日本人はコンテンポラリーダンサーが多いのも事実です。例えば、NDT、モーリス・ベジャール・バレエ団、バットシェバ舞踊団など。これは、日本人の個性や感性が重視されている証でもある。コンクールはあくまでも通過点ですから、そこでコンテンポラリーが弱いと指摘されても、修練して道を切り開くダンサーは沢山いる。そういう意味では、日本人にとって可能性の大きい分野だと思います。
●クラシックバレエとコンテンポラリーの根本的な違い、今回のワークショップで児玉さんが目指すものとは?
どれだけ理想に近づけるかというストイックさがあるのがバレエであり、コンテンポラリーは実態がないのが唯一の実態で、ダンサーが自身で見付けていかなければいけない。“コンテンポラリーとはこういうものだ”と決めた時点で、それは過去のものになってしまう。“まだわからない、まだわからない”と、先を切り開いていく必要がある。僕が重視するのはプロセスであり、ある意味そこがゴールでもあります。最終的に舞台に立って発表する瞬間と、振りを渡される瞬間、どちらが大事だという格付けはして欲しくない。だから、今回のワークショップでは発表の場を設けていません。ゴールがあると、最初からそこに焦点を合わせようとしますよね。そうではなくて、習ったものをどう吸収し、表現に転化していくかを大切にしたい。明確なゴールがないと“できなかった、じゃあ次はどう頑張ろうか”と、小さいゴールを自分で設定していくことになる。一過性のゴールより、小さなゴールの積み重ねのやり方を知る方が、よりその先に活かせる気がします。
●児玉さんがダンサーとして大切にしていることは? 後進にアドバイスをお願いします。
自分の好奇心に素直に従い、勇気を持って飛び込んでいくこと。もしそれが今まで来た道とは違っても、数年後にもっとパワーアップして返ってくるかもしれない。固執せず何事も受け入れてから判断する、という意識は常に持つようにしています。そこには否定も含まれます。否定ありきではなく、否定するプロセスも大事にする。これが美しいですよと教えられるのではなく、自分はこういうものが好きなんだというものを集めてみたら、私はこういう人間なんだとわかってくる。それがひとつ、僕から言えるアドバイスかもしれません。
ワークショップは7月21日〜23日まで、『横浜バレエフェスティバル2015』は8月19日開幕。世界を舞台に活躍するプロの極意を学び、その磨き抜かれたステージを味わってみてはいかがでしょうか。
児玉北斗さんインタビュー動画
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=3R6Ug5PwbLg?rel=0&w=450&h=253]
特別WS講師の児玉北斗さん、木田真理子さんが出ている動画(動画の冒頭部分)
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=0DZwucLpUcc?rel=0&w=450&h=253]
2015年7月21日~23日
特別ワークショップ(講師:児玉北斗・木田真理子)
http://yokohamaballetfes.com/workshop/
2015年8月19日
横浜バレエフェスティバル(児玉北斗さんご出演)
http://yokohamaballetfes.com/
投稿日: 2015 年 6 月 30 日
カテゴリ: インタビュー