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PICK UP!

パリ・オペラ座のエスプリを感じる有馬龍子バレエ団特別公演直前インタビュー

有馬龍子バレエ団特別公演
パリ・オペラ座のエスプリを感じさせる『アルカード』 など5作品のバレエ・コンサートを前に、京都に滞在中のアティリオ・ラビス、ヤン・サイズ、サブリナ・マレムにインタビュー!

アティリオ・ラビスといえば、パリ・オペラ座の往年の 素晴らしいエトワールとして記憶に残っているバレエファンも多いだろう。ヌレエフが芸術監督になるよりも前 、セルジュ・リファールの時代のオペラ座で踊り、当時 のバレエの香りを知り尽くしたダンサー。そして、彼は 優れたダンサーであっただけでなく、エトワール時代から振付にも才能を発揮した。彼の作品は、日本では、パリ・オペラ座バレエ学校の公演で『アルカード』が2度 上演されたことがあるものの、ほとんど観る機会がない。
そんな彼の『アルカード』を含む4作品を、パリ・オペラ座からダンサーを招いて京都で上演するのだという。 舞台を前に来日したラビス氏とヤン・サイズ、 サブリナ・マレムに話を聞いた。

【今回上演予定の演目】
アティリオ・ラビス振付の4作品、
『アルカード』
(サブリナ・マレム、カール・パケット、他)、
『サラバンド』
(藤川雅子、ヤン・サイズ、福谷葉子、西岡憲吾)、
『スパルタクス』よりパ・ド・ドゥ
(サブリナ・マレム、カール・パケット)、
『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ
(サブリナ・マレム、ヤン・サイズ)

ピエール・ラコット振付の
『ラ・ヴィヴァンディエール』
(小寺彩耶子、渡辺優衣、末原雅広、他)

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──みなさんは、京都に来られるのは初めてですか?

ラビス:1960年ごろ、東京で踊った後に京都観光をしようと訪れたのが最初でした。京都は私たちフランス人にとって、まるでルーブル美術館のよう。街全体が美術館のように思えます。

サブリナ:私も東京で公演があった時、日帰りで京都に来ました。京都はとても魅力的な街ですね。

ヤン:僕は京都に来るのは初めてです。まだ、着いて間もなくて忙しくてよく分からないけれど、有馬えり子先生に連れていっていただいた伝統的な和食のレストランがとても良かったです。料理だけじゃなくて、和風の庭園があって落ち着いていて。

ラビス:パリに比べて街全体がとても美しい、ゴミが落ちていないようにきちんと掃除されている。そうそう、驚いたのは、ホテルの近くにフランス風のパン屋さんがあったこと!

──(ここまでで、ラビス先生は、階下のスタジオでのリハーサル指導のために退席)

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──今回の作品について、お聞きしたいと思います。
まず、ヤンさんと藤川雅子さん中心に踊られる『サラバンド』はどんな作品ですか?

ヤン:フランス・バレエの基礎に忠実に創られている作品で正確なポジションが求められる。その一方、それに加えて、スペイン、カタルーニャ風の動きがプラスされているのが独特の魅力です。

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──クラシックの基礎に加えて、民族舞踊的な魅力もあるわけですね。この作品は、パリでクロード・ベッシー、ノエラ・ポントワ、シリル・アタナソフなど錚々たるエトワールによって踊られてきたそうですね。では、『シェヘラザード』は? これはバレエ・リュスのシェヘラザードとは違うのですよね?

ヤン:これもラビス先生の作品ですので、バレエ・リュスとは違います。ですが、僕が踊る時は個人的にリュスに繋がるイメージはあります。ニジンスキーへのオマージュのような。これは、サブリナと踊ることで起こる感情の高まりがあって、彼女とだから上手く行くというところがあるのですよ。それにコルサコフの音楽そのものもとても好きです。

サブリナ:『シェヘラザード』は、2人の若者の愛と恋の物語。オリエンタルで、とても官能的。本当にヤンとこの踊りを踊るのが大好きなんです。実は、はじめ、ヤンと踊りたいと想いながら、ヤンは今年、日本公演の『天井桟敷の人々』やパリでもいろいろキャスティングされていてとても忙しそうだったので、他の人に頼んでいたのですが、その彼がダメになって、結局ヤンに引き受けてもらって。今、リハーサルしていて、やっぱりヤンで良かったと思います。

──ところで、お二人にとって、クラシック・バレエの魅力はどんなところにありますか?

サブリナ:クラシック・バレエには伝統的な役があって、そういう役をすること自体がとても興味深いことです。
顔の向きや、手、足……決まっているのだけど、自分だからという表現ができる。あー、バレエの魅力は一言では言い尽くしがたいです。クラシック・バレエがすべての踊りの基礎なので、とても大切で好きですが、ダンスは分けられない──コンテンポラリーにも魅力があります。ジャンルに関わらず、表現できる作品が好きです。

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──だから、『シェヘラザード』も、とてもお好きなんですね!

サブリナ:クラシックは確固たる基礎があって、どんどん積み重ねて、どんどん上達していくことができる。一方、コンテンポラリーは、カロリン・カールソン、ピナ・バウシュ、マッツ・エック……等々、みんな違う。一人の振付家と長く仕事をしないと積み重ねることはできない。けれど、いろいろなものに挑戦できる楽しさというのものもあります。

──ヤンさんは?

ヤン:クラシックは小さいときからやってきて、当たり前に僕の中にあるというか、疑問を差し挟む余地がない。毎日、毎日レッスンをして、それによって上達していく過程がすごく好きです。また、ラビス先生のような、素晴らしい先輩、偉大なアーティストがいらっしゃって、その伝統を受け継いでいけるのも素晴らしいことだと思います。伝統が伝えられて積み重ねられて、ただ引き継がれているだけじゃなくてどんどん磨かれていく──そこが好きです。また、クラシックはパートナーと踊って、さっき話したサブリナとのように、二人で創っていけるというのも好き。役柄を使って表現できるのも好き。また、受け継いだ伝統を伝えていくのも好きです。

──伝えると言えば、お二人ともバレエ教師の資格を持っていらっしゃるということ。引退されたら教師にと考えていらっしゃいますか?振付なども考えていらっしゃいますか?

サブリナ:私は、まだあと9年あるので、具体的なことはまだ考えていませんが、教えるとしたら、作品のリハーサルのなかで、“最後にこれがあったら”というようなことをアドバイスするようなことができると良いなと思います。

ヤン:僕は40歳、まだまだ踊れそうな若い身体だけど、2年後には定年を迎えます。教えるのは好きです。でも舞台に携わるのが好きなので、クラスレッスンだけじゃ満足できないと思う。メートル・ド・バレエのような仕事ができればと思います。昨年の秋、ローマのオペラ座でパトリス・バールの『ロミオとジュリエット』の上演があったのですが、この版の初演時のロミオが僕だったので、頼まれて2ケ月前からローマに入って指導を手伝ったのです。とてもやりがいのある仕事でした。また、振付にもとても興味があります。今までにクラシック作品を2つ振り付けしています。ローラン・プティ、ジョン・ノイマイヤー、パトリス・バール──その3人の振付家に大きな影響を受け、尊敬の念をいだきながら作品を創っています。

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──最後に、この京都での公演に向けて、日本のお客様へのメッセージをお願いします。

サブリナ:フランス・バレエのそれぞれ違った魅力を1度に観ることができるコンサートです。同じクラシック・バレエの技術を使っても、まったく違う表現ができるということを、ぜひ観にきてください。ラビス先生の作品は特に日本ではほとんど上演機会がないと思うのですが、観るべき作品だと思います。

ヤン:もしかしたら、日本の方はパリ・オペラ座というとヌレエフが芸術監督になってからのイメージが強いのかも知れないのですが、アティリオ・ラビス先生は、ヌレエフが西側に亡命する前から活躍した人。セルジュ・リファールにもっとも近かったフランス・バレエの始祖のような方です。ぜひ、なかなか観る機会のない数々の作品を観に来てください

取材・記事:菘 あつこ

【公演情報】
有馬龍子バレエ団特別公演
パリ・オペラ座のエスプリ
~永遠に残しておきたい稀有な古典作品集~

平成25年
7月27日(土)18時開演
7月28日(日)14時開演

京都府長岡京記念文化会館
全席指定 S席7,000円 A席6,000円 B席4,000円
当日500円up

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