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PICK UP!

平田桃子(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)インタビュー
夢を叶え、プリンシパルへ

英国ロイヤル・バレエ・スクールを経て、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に入団。着実にステップアップを重ね、現在はプリンシパルとして活躍する平田桃子さん。また今年はNBAバレエ団3月公演『白鳥の湖』と8月に開催される横浜バレエフェスティバルへのゲスト出演も予定され、大きな注目が集まります。彼女はいかにして今の地位に昇り詰めたのか? 帰国中の平田さんに、お話をお聞きしました。

取材・記事:小野寺悦子
写真提供:NBAバレエ団

 

平田さんがバレエをはじめたきっかけを教えてください。
 バレエをはじめたのは5歳のとき。ふたりの姉が自宅近くにあった山本禮子バレエ研究所に通っていて、レッスンについていく内に私も自然と習いはじめた感じです。教室に通いはじめてすぐにバレエが大好きになりました。ただ姉たちはあまりバレエに興味がなくて、ふたりとも中学入学と同時に辞めてしまいましたね。けれどふたりの姉も今ではバレエを観るのが好きで、イギリスにも公演を観に来てくれています。
バレエをはじめたきっかけに、チュチュを着たいという夢がありました。ところが最初の発表会で着たのがチュチュではなく、ロマンティックな衣裳だったのでがっかりしたのを覚えています。私にとってひとつの転機になったのが、10歳の時に映像で観た吉田都さんのピーターライト版「くるみ割り人形」でした。彼女の踊りはもちろん、同じ日本人女性が海外のバレエ団のトップで踊っているということに衝撃を受けたんです。私も彼女のようになりたいと思い、海外のバレエ団を視野に入れて毎日稽古をするようになりました。

 

ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得し、英国ロイヤル・バレエ・スクールに留学しています。
スカラシップで希望の留学先を3校書くようにいわれましたが、私はどうしてもロイヤル・バレエ・スクールに行きたかったので、ロイヤル・バレエ・スクールだけ書いて提出しました(笑)。日本の高校は一学期だけ通い、16歳になってすぐ留学しています。願いが叶って嬉しかったし、全てが新鮮でした。言葉の壁はありましたけど、ホームシックもさほど感じることはなかったように思います。
山本先生のレッスンはロシアのメソッドに近かったので、ロイヤルのメソッドとはまた違います。ポール・ドゥ・ブラや足のポジションにしてもそうですが、イギリスのバレエの振付に合ったトレーニングをするんだということをそこで初めて知りました。
学校は3年制ですが、私は1年の終わりに飛び級して2年で卒業しています。最終学年になるとみんなオーディションを受けはじめます。私もそのつもりでいましたが、クラスを見学に来たデヴィッド・ビントレー(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団芸術監督)からオファーをいただき、その場で入団が決まりました。学生の頃から彼の作品はずっと観ていましたし、念願のバレエ団だったので、本当に嬉しくて即答したのを覚えています。

 

長年の夢だったカンパニーに入団され、プロとして活動をはじめました。当時の心境、苦労した思い出などはありますか?
最初は公演の多さにとにかく驚きました。年間公演数は150回以上。カンパニーは基本的に日曜が休みで、普段はクラスレッスンのあと12時〜18時半までリハーサル、公演の日は14時半と19時半の2回舞台が控えています。ツアーカンパニーなので、年の半分はツアーであちこち旅に出ます。旅先の慣れない場所で踊るので、身体のケアにはやはり気を遣います。カンパニーにはボディケアのスタッフが専属でいて、ツアーに同行してくれるのとても助かります。特に私は腰痛持ちなので、毎日のようにケアしてもらってはツアーを乗り切っていましたね。プリンシパルになってからは公演数が減って、舞台に立つのは週一回くらい。なので最近はだいぶ自分の時間が持てるようになりました。

 

これまで踊ってきた中で特に印象に残っている作品、役柄は何ですか?
2009年に行った初めての日本ツアーで吉田都さんが『コッペリア』に客演し、私もスワニルダの友人役として一緒に舞台に立たせていただきました。都さんとの共演はそれが初めて。やっぱりオーラがありますね。またその時の会場が五反田にあったゆうぽうとで、昔からよくコンクールで踊っていたので何だか感慨深いものがありました。
『白鳥の湖』は昔から踊るのが夢だったので、主役をいただいた時はすごく嬉しかったです。初主演はスペインのバルセロナ・バレエで、アンヘル・コレーラと踊りました。手の仕草、目の使い方など、アンヘルから細かく指導していただき、本当にいい経験になりました。その後バーミンガム・ロイヤル・バレエ団でもオデット/オディールを踊っていますが、バルセロナ・バレエはABT版でバーミンガムはピーター・ライト版と、バージョンが違うのでまた大変でした。ただ入団してからずっとコール・ド・バレエとして舞台に立ってきたし、いろいろなダンサーの演じ分けを見てきたので、バーミンガムの方が割とすんなり踊ることができたような気がします。
『ロミオとジュリエット』も思い入れのある作品です。それまではテクニックの必要とされるクラシック作品にキャスティングされることが多かったので、ジュリエット役をいただいたのは意外な喜びでもありました。マクミランのジュリエットは踊りというより感情で表現する役なので、自分としても新たな一面が発見できたし、ひとつステップアップできた気がします。演じる楽しみを感じるようになったのもその頃から。その場その場で感じたものを大切にしたいので、事前に役作りをすることはありません。だから公演の数だけ表現も違う。それも演じる楽しみのひとつだと思います。

 

2011年に元ABTのアンヘル・コレーラが立ち上げたバルセロナ・バレエに移籍されています。移籍の理由は何だったのでしょう。
バーミンガムのプリンシパルだった男性が当時バルセロナ・バレエで踊っていて、新しいカンパニーでこんなレパートリーもあるよという話を聞き、私もチャレンジしてみようと思って移籍しました。アンヘルと一緒に踊ったこと、彼の指導を受けたことはいい財産になっています。バルセロナにいたのは一年半くらい。バーミンガムを離れる時、デヴィッドから“万が一帰ってきたくなったらいつでも受け入れるから”と言われていて、その言葉通り再びバーミンガムに戻ることになりました。
デヴィッドにはすごくお世話になりましたし、育ての親といっても過言ではありません。今年の6月にデヴィッドが芸術監督を退くことになっていて、私としてはすごく複雑です。『エドワード2世』や『シラノ』などまだまだ踊りたい作品がたくさんあるので、できれば残って欲しいというのが正直な気持ちです。

 

多忙な日々の合間の息抜き、プライベートでの楽しみといえば?
休みの日の楽しみはショッピング。洋服を見るのが好きなんです。あまりにも洋服が好きすぎて、先日スケッチングの短期コースを受けしまいました。イギリスのデザイナーが好きで、なかでもお気に入りはステラ・マッカートニー。いつか洋服に関わるような企画をいただけたら嬉しいですね。夢は大きく持ちたいと思います(笑)。

 

入団して15年以上が経ちます。現在の心境と、今後の目標をお聞かせください。
入団当初はひたすらプリンシパルを目指してきました。実際プリンシパルになってみると、やはりプレッシャーも大きいし、若いダンサーを引っ張っていかなければといった責任感も感じるようになりました。かつて私がプリンシパルに憧れていたように、今の自分が若いダンサーに何かしら影響を与えられていたらいいなと思います。
年齢と共に身体も変わっていきますし、どれだけ一定のレベルを保てるかという葛藤が常にあります。それにまだ踊りたい作品がたくさんあるので、ひとつずつ叶えられたらと思っています。今年は日本の舞台にも出演します。こういう機会はあまりないので、とてもありがたいですね。ただ、どこで踊ろうと舞台に立てば何も変わることはありません。自分が納得いくまで練習すること。そして、万全の状態で舞台に臨むよう心がけていくつもりです。


★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★

 

NBAバレエ団公演 久保紘一版『白鳥の湖』

日時:
2019年3月2日(土)18:00開演
2019年3月3日(日)15:00開演

会場:東京文化会館大ホール

ゲスト出演:
[英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団]プリンシパル
平田桃子 (3月2日)

[イングリッシュ・ナショナル・バレエ]リード・プリンシパル
アリーナ・コジョカル (3月3日)

[アメリカン・バレエ・シアター]プリンシパル
エルマン・コルネホ (3月3日)

http://www.nbaballet.org/performance/


横浜バレエフェスティバル2019

日時:2019年8月3日(土)15:00開演

会場:神奈川県民ホール

出演:平田桃子、高田茜、菅井円加、小池ミモザ、津川友利江、厚地康雄、二山治雄、遠藤康行、加藤三希央、柳本雅寛、エドワール・ユ、前田紗江、中尾太亮、井関エレナ、ジュンヌバレエYOKOHAMA

https://yokohamaballetfes.com/

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=vUhoGjBDfDc?rel=0&w=480&h=270]