【PICKUPについて】

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PICK UP!

バレエを裏で支える人々Vol.1
バレエ床開発秘話:バレエスタジオ施工専門 アテールに聞く
~身体への負担を減らし、より長く充実したダンサー人生を送るために~

アテール株式会社  村越幹弘/桐林昇

レッスンやリハーサルで毎日使っているバレエの床。実はその素材選びを間違えると、身体に大きな負担がかかり、ときにはダンサー生命がおびやかされるケガにつながることも……。バレエスタジオ専門施工を手がけるアテールでは、ダンサーの身体に優しいバレエ床をオリジナルで研究開発。そのきっかけとバレエ床の役割について、アテール代表の村越幹弘さんと桐林昇さんにお聞きしました。

 

バレエスタジオ専門の床“バレエ床”を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

村越:私は杉並にある建材卸会社の三代目で、もともと建材の仕事を長く手がけていました。あるとき古い知人である吉田智大さん(横浜バレエフェスティバル プロデューサー)から、「バレエの先生方がバレエ用の床を作ってくれるところがなくて困ってる」と相談されて。だったら我々が提供しようということで、私と吉田さん、そして施工責任者の桐林さんの3人でバレエ床の研究・調査をスタートしました。それが8年ほど前のことです。

桐林:当時の日本はまだバレエ床自体が一般的ではなかったと思います。そもそも、工務店にしてもバレエの知識なんて持っていないし、私自身何十年と施工に携わってきましたが、バレエ床を扱った経験はありませんでした。。まずバレエスタジオを作るにはどうしたらいいか研究しなければと、いろいろなスタジオを回るところからはじめました。

村越:国内のスタジオを見ていると、コンクリートの床にシートを貼っただけという床もあったし、体育館のスポーツ床を代用して使っているケースも多くありました。そんななかヨーロッパのスタジオはバレエ床が標準になっているらしいという情報を聞きつけ、現地に視察へ行きました。ヨーロッパでは床に対する研究が進んでいて、長年硬い床で練習していると知らず知らずに疲労が累積していき、結果的にダンサー生命を短くしてしまうという研究成果がある。。ダンサーのキャリアを考えて、ヨーロッパではバレエ床を導入することが当たり前になってきているんです。実際英国ロイヤル・バレエ団が来日公演を行うときは、日本の硬い舞台のままではダメで、“舞台用のバレエ床を使うこと”という条件が契約に加えられていると聞きます。自分たちで資材を調達してオリジナルのバレエ床を作ろうということで、さらに研究を重ねていきました。

 

開発にあたり特に苦労された部分といえば?

村越:ひとつひとつが試行錯誤の連続でした。足腰に負担が少ないという基準はクリアしても、床の硬さや感触については先生の好みによってまた違う。お客様のひとり、ダンサーの平山素子さんには“とにかく柔らかく”と言われたり、コンクールで上位入賞者を輩出している先生には“日本の会場は床が硬いのでなるべく硬くして欲しい”と言われたりと、意見もさまざま。みなさんに納得していただくために、まずサンプルを作り、実際に踏んで硬さや感触を確かめもらった上でスタジオに施工する、という手順を踏んでいきました。

桐林:施工についても気を遣った部分です。先生方の中には、シートの溶接部分が気になると言う方もいらっしゃる。先生方に納得していただけるよう、バレエ床の設置に関しては専門の職人が担当し、さらに繰り返し溶接部分を削っていくことで、仕上げるよう配慮を重ねていきました。

 

バレエ床の構造とは? バレエ床にはどんな種類があるのでしょうか。

村越:アテールでは基本的に3種類のバレエ床をご用意しています。標準的な『アテール スタンダード』と、さらにこだわった『アテール プレミアム』の2種類がオリジナルで、あとイギリスのハーレクイン社の『Flexity Plus』というバレエ床も直輸入で取り扱っています。

桐林:『アテール スタンダード』は合板の下に衝撃を緩衝するためのゴムがついていて、このゴムによりクッション性が生まれ、また板がしなることでやはりクッション性を与えています。高さ5.5㎝と厚みが少なく、天上高のない日本のスタジオでもリフトに影響が出にくいのも利点です。好みによって硬さのアレンジも可能で、例えば合成する板の厚みによっても硬さは変わるし、緩衝材のピッチを変えれば板のしなりもまた変わってきます。『アテール プレミアム』は合板の下が格子状の板になっていて、衝撃を格子全体で受け止めることで高いクッション性を叶えています。またクッション性が高いと衝撃が下に響きにくいというメリットもあって、大きな音を立てたくない、階下に音が伝わるのが気になる、という方には特におすすめしています。

村越:バレエの先生方はバレエのことは知っていても、建築についてはご存じないですよね。先生方が安心してスタジオを運営できるよう、アテールでは物件選びからバレエ床の仕組みまでスタジオ作りのコツをまとめた小冊子を差し上げています。物件によってはどんなに防音しても構造的に響いてしまうケースがあるので、新たにスタジオを構える先生にはぜひこれを読んでいただけたらと。その上で契約を考えている物件があれば、我々も同行して環境のチェックを行います。

 

これまでの施工実績と、バレエ床を導入した方々の声を教えてください。

桐林:新しく自分のスタジオをお持ちになるという個人の先生から多くご依頼をいただいています。あと今年の春に新国立劇場バレエ団のリハーサル室とBリハーサル室の施工を手がけました。両方とも『Flexity Plus』で、施工1カ月後に確認をしに行きましたが、あれだけハードに使用していても全く問題ありませんでしたね。

村越:生徒さんやダンサーはもちろん、先生方から“身体がラクになった”という声が挙がっています。先生の中には一日7〜8時間教えている方もいて、“以前は身体がくたくたになっていたけれど、バレエ床にしたら疲れを感じにくくなった”と言っていただきました。

桐林:予想以上の反響をいただき、非常にうれしく思っています。毎日硬い床でレッスンをしていると、知らず知らずの内に疲労が累積されていく。長い目で見たら、先行投資してでもクッション性のある床にした方がいい。身体のことを考えてぜひ良い床でレッスンして欲しい、ということを先生方にお伝えしていけたらと思っています。

 

【施工実績のページはこちら】http://a-terre.com/results/