『横浜バレエフェスティバル2018』出演!
柳本雅寛×八幡顕光インタビュー。
クラシックダンサーとコンテンポラリーダンサー、ふたりの男が繰り広げる注目の最新作。
『横浜バレエフェスティバル』ではすっかりお馴染み、男たちによるユーモアたっぷりのステージで会場を沸かせる柳本雅寛作品。今年はパートナーにロサンゼルスバレエ ゲストプリンシパルの八幡顕光さんを迎え、本公演のために創作された最新作を披露します。ヨーロッパ仕込みのコンテンポラリーダンサーと、生粋のクラシックダンサーが描く作品世界とはーー。おふたりに意気込みをお聞きしました。
——『横浜バレエフェスティバル』ではお馴染みの柳本雅寛さんの最新作。今回のパートナーに八幡顕光さんをキャスティングした理由とは?
柳本>『横浜バレエフェスティバル』には毎年出演してきましたが、これまではずっとコンテンポラリーダンサーと一緒に踊ってきました。ただバレエのフェスティバルということもあり、観に来るお客さんもバレエファンがほとんど。今回はバレエを念頭に置いた作品にしてみようかと考えたとき、ひとつのコントが思いついて。そこで浮かんだのが顕光くんでした。彼のバレエはもちろん超一級だし、JAPON dance projectでも一緒に踊っているのでダンス力はよく知っている。頭の中に作品のイメージが出来上がっていたので、まずその内容を顕光くんに伝えました。
八幡>お話をいただいたときは正直不安もありました。JAPON dance projectで二度ほどご一緒していますけど、柳本さんとこうして組むのは今回が初めて。やはり今までにない緊張感があって、“え、僕とふたりで踊るんですか? 何をするんですか?”という感じ。ただ作品の構想を聞いて、それなら自分にもできるのではと思い、僕でよければぜひということでお受けしました。
柳本>彼はあくまでもバレエダンサーという立ち位置で、僕はそれをいじるコンテンポラリーダンサーという関係性。ふたりの男のコントダンスです。台本はないけど筋書きはあります。ふたりの男の間には最初距離があるけれど、最後はダンスの枠を超えてひとつになるような、それを歌いながら踊りながら、笑いにしながらみせていければと……。できれば歌も歌える人をと考えて、それも顕光くんにお願いしよう思った理由のひとつです。僕も彼もミュージカル狂で、劇団四季の四季の会というファンクラブに入っていたという共通点があって。実のところプライベートの彼はすごいエンターテイナーで、何でもできるし、本当に面白い。飲んだらもうすごいですよ。素晴らしいバレエダンサーというのは知れ渡っているけれど、僕からすると、よくそんなに黙ってバレエを踊っていられるね、という感じ(笑)。
八幡>僕がミュージカルにのめり込んだのは高校生のとき。歌が好きで高校に入ってから三年間ずっと声楽を習っていて、学校も演劇科だったので授業でも歌を勉強しています。もともと演劇科は劇団四季との提携でつくられたというもので、授業で舞台を観に行くことがあったし、四季のミュージカルナンバーなんてかなり詳しいですよ。卒業公演では実際にミュージカルにも出ています。ただ高校を卒業してだいぶ経つので、人前で歌うとなるとまた練習しなければいけないけれど。
——プライベートでも親しくされているというおふたり。そもそもの出会いをお聞かせください。
柳本>島地保武くんと酒井はなさんの結婚式で、一緒にキャッツを踊ったのが出会いでした。島地くんが結婚式の余興でキャッツをやりたいと言い出して、声がかかったのが僕と木下奈津子さんと顕光くんだった。キャッツをやるんだったら僕はミストフェリーズ役がいいと言ったら、その役はもう八幡というバレエダンサーに決まっていると言われて、なんだよと(笑)。
八幡>あの時は衣裳も手作りで、カツラは本当にキャッツを手がけているカツラ屋さんに頼んだりと、かなりクオリティの高い作品になっていましたよね(笑)。
——柳本さんのクリエイション法とは? 現場ではどのような作業をされるのでしょうか。
柳本>構想段階でイメージは8割方できていて、そこから“これは面白いか、面白くないか”というのを探っていく感じです。もちろんイメージ通りにできるとは思ってなくて、実際に動いてみるとまた8割方上手くいかないことが出てきたりする。なので、最初の8割から随分離れたところに到着することもよくあります。
八幡>途中でガラッと変えたりしますよね。JAPON dance projectのときもそう。作っている最中にはじめから見直してみて、やっぱり変えようと言ってゼロからやり直すようなこともあったし、全く妥協するということがない。とにかくいいものを作ろうというスタンスで、情熱があるなというのを見てて感じます。
柳本>コントや軽い寸劇にしてもただ楽しんでやってる訳ではなくて、喋る間、姿形、角度まで、全てにおいて自分の中で理想がある。思いつきでやってるように見えたら正解だけど、実際は全て計算した上でのこと。だからダンサーがきちんとアンテナを立てていないと、“何でそうなっちゃうの?”って腹が立っちゃう。
八幡>実際リハーサルは厳しいですね。それでいてひとたびプライベートとなると、率先して飲みに連れて行ってくれたり、人と人を繋げてくれたりと、場を盛り上げる空気を自然と作ってくれる。オンでもオフでもそうですが、人を喜ばせるという姿勢が根本にあるように感じます。
――柳本作品といえば、ダンスに加えて喋りや歌も多く登場するのが特徴です。ダンス作品における歌や言葉の関わりをどう考えていますか?
柳本>言葉や芝居、ダンスといった垣根自体がすでに自分の中で取り払われているというか、もはや喋りはひとつのツールなので、分けて考えてはないですね。一番の理想は、“あ、ダンサーが歌ってる”“ダンサーが喋ってる”と気付かせないような世界観がそこに成立していること。そうすれば観客はのめり込める。逆に違和感があれば、上手くいっていない証拠だと思う。
八幡>最近はダンスの舞台でも喋りがある作品は増えてますよね。クラシックダンサーもバレエができればいいという訳ではなくて、コンテンポラリーも踊れなければいけないし、人前で話せなければいけないし、プラスαとして歌も歌えたらなおよし、という流れになってる。実際に英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のダンサーがミュージカルに出演して、またカンパニーに戻ってクラシックを踊ったりしてる。海外のダンサーはもはやそういうスタンスになっているように思います。
——八幡さんは新国立劇場バレエ団退団後、ロサンゼルスバレエにゲストプリンシパルとして所属されています。現在の活動をお教えください。
八幡>ロサンゼルスバレエには、プリンシパルとして活躍している清水健太さんのご協力もあって所属することになりました。現在は演目によって1ヶ月〜1ヶ月半くらいロスに滞在しては舞台に立つというスタンスです。今年は『白鳥の湖』で道化を踊り、あと年末年始に『くるみ割り人形』が控えているのでまた向こうに行く予定です。
ロスのお客さんはすごく反応が大きいので、こちらもテンションが上がりますね。バレエ団を取り巻く環境も全く違います。ロスではスポンサーが気に入ったダンサーに出資するというシステムができていて、スポンサーの人たちを集めて踊ったり、ダンサーが直接彼らと話しをするような機会も度々あります。これは日本ではなかったことだし、ありがたみというのもまた違う角度から見えてきますね。
——柳本さんも海外で長く活動されてきました。日本に拠点を移されて、海外との違いを感じた部分はありますか?
柳本>海外のカンパニーって会社と同じなので、10時から18時まで拘束されて稽古やリハーサルを行い、年間100回前後の本番があるというのが普通。確かに日本とはシステムは違うけど、それはひとりで変えられることではなくて、日本も何百年後にはそうなるかもしれないし、僕もその小さな力になればいいなという気持ちでいます。
僕がいたのはドイツとオランダで、計8年間踊っていました。5カンパニーほど渡り歩いたらいい加減疲れてしまって、もう踊りは辞めようと考えて、日本に帰ることに決めました。スポットライトを浴びてはいたけど、これがいつまでも続かないということもわかっていたんです。
ところが地元の大阪に戻って半年くらい遊び暮らしてみたものの、社会もそれほど甘くない。30歳の男がそこから何ができるかといったら何もできなくて、もう少し踊ってみようと東京に出てきたのが2006年の秋。本格的に作品をつくりはじめたのは東京に来てからです。ただコンテンポラリーってコンセプトを決定するのは振付家だけど、プロセスはダンサーがつくることが多い。動きやアイデアを振付家と一緒に考える作業はずっと続けてきたので、それは僕の財産かもしれません。
——最後に、『横浜バレエフェスティバル2018』への意気込みをお聞かせください。
八幡>クラシック以外の踊りはもちろん、もともと歌が好きなので、チャンスがあればミュージカルなどにも挑戦してみたいという気持ちはあります。舞台で歌ったり喋ったりするような機会があれば、こういうこともできるんだとアピールするチャンスになるかもしれない。もしかしたら今回はその第一歩になるかもしれないし、120%の力で頑張りたいと思っています。
柳本>くるくる回ったりばんばん跳んでみせたりと、クラシックバレエってすごくわかりやすいし、ある意味観る側があまり考えることなく楽しめますよね。でもコンテンポラリーは違って、自分にとってその作品がどう見えたかということを考えながら楽しむもの。“面白かったね、ワハハ”でもいいけれど、“こうだったね、ああだったね”と帰り道で言い合えるような、そういう醍醐味がコンテンポラリーダンスにはあると思う。バレエファンのお客様にとって、僕の作品が“楽しみながら考える”というひとつのきっかけになればいいなと思っています。
インタビュー・記事:小野寺悦子
横浜バレエフェスティバル2018
日時:2018年7月21日(土)15:00開演
★ワールドプレミアム
「シルヴィア」よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
ハンブルク・バレエ団芸術監督のジョン・ノイマイヤーが、パリ・オペラ座のために創作した「シルヴィア」。1997年の初演以来再演を繰り返してきた名作が、ハンブルク・バレエ団の菅井円加とニコラス・グラスマンペアにより今再び蘇ります。
菅井円加(ハンブルク・バレエ団 ソリスト)
ニコラス・グラスマン(ハンブルク・バレエ団)
「グラン・パ・クラシック」
ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝を果たし、現在パリ・オペラ座バレエで踊るニ山治雄と、ENBソリストの金原里奈が共演。成長著しい彼らの“今”をお見逃しなく!
金原里奈(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ジュニア・ソリスト)
ニ山治雄(パリ・オペラ座バレエ団短期契約)
「Dido and Aeneas」*日本初演
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
今世界で最も注目される振付家のひとり、シディ・ラルビ・シェルカウイの振付作。バレエ界で最も権威ある賞・ブノワ賞で上演された話題作が、この度待望の日本初演を迎えます。
加藤三希央 (ロイヤル・フランダース・バレエ団)
オステアー 紗良 (ロイヤル・フランダース・バレエ団)
「パリの炎」よりグラン・パ・ド・ドゥ
昨年、一昨年と、圧倒的なテクニックで会場を沸かせてきたオーストラリア・バレエ団ペアが今年も登場! 公私ともにパートナーでもあるふたりが、その息の合った演技で会場を魅了します。
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団 プリンシパル)
チェンウグオ(オーストラリア・バレエ団 プリンシパル)
「ロメオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
フランス人振付家アンジェラン・プレルジョカージュの代表作。今回は「ロメオとジュリエット」の中でも一番の名シーンとして知られるバルコニーのパ・ド・ドゥをお届けします。
津川友利江(元バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)
「半獣」
振付:遠藤康行
『横浜バレエフェスティバル』芸術監督・遠藤康行の振付作。モナコ公国モンテカルロ・バレエ団プリンシパルの小池ミモザをパートナーに、荒々しくもダイナミックな作品世界を披露します。
遠藤康行(元マルセイユ国立バレエ団 ソリスト)
小池ミモザ(モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 プリンシパル)
「タイトル未定」*新作
振付:柳本雅寛
『横浜バレエフェスティバル』には欠かせない、柳本の作品。お茶を一杯飲むようなホッとするひととき、肩の力を抜く笑いの時間を提供しながらも、すべてを計算しつくしたコンテンポラリーダンサー・柳本雅寛による最新作をお楽しみに。
柳本雅寛(+81主宰)
八幡顕光(ロサンゼルスバレエ ゲストプリンシパル)
★フレッシャーズガラ
「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
床屋のバジルと村娘のキトリの陽気な恋物語「ドン・キホーテ」。栗原ゆうと松浦祐磨の若手ふたりがペアを組み、フレッシュな魅力をステージいっぱいにふりまきます。
栗原ゆう(YAGP2015 1位、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(9月より入団予定)
松浦祐磨(YAGP2018 1位、2017年出演者オーディション第1位・神奈川県民ホール賞)、エンドウ・バレエ
「眠れる森の美女」第3幕よりオーロラ姫のヴァリエーション
オーディションで抜群の安定感を示した升本。テクニカルなのにあどけない、15歳の今だからこそできる、透明感あふれるきらきらとした空気をお届けします。
升本果歩(2018年出演者オーディション優勝・神奈川県民ホール賞)、 岸辺バレエスタジオ
「エスメラルダ」よりアクティオンのヴァリエーション
オーディション審査員から「即戦力!」とのコメントがあるほどの存在感。プロフェッショナルな可能性を感じさせる、力強くてしなやかな演技をご覧ください。
森 春陽(2018年出演者オーディション第2位)、バレエスタジオGEM
「スーブニール・ドゥ・チャイコフスキー」*新作
振付:遠藤康行
過去の出演者オーディションにより選ばれたジュンヌバレエYOKOHAMA1期生による新作です。昨年の演目「レ・ブリヨン」でお気に入りのダンサーを見つけた方もいらっしゃるはず。彼らがこの1年間で得たさらなる成長・飛躍をどうぞお見逃しなく。
ジュンヌバレエYOKOHAMA
川本真寧、縄田花怜、中村りず、竹内渚夏、丸山萌
「SOLO²」
振付:遠藤康行
今年の「第1回横浜バレエコンクール」で優秀な成績を修めた橋本とジュンヌバレエ1期生による「SOLO²」。2016年公演ではみこ・フォガティと二山治雄が演じ、高度なテクニックの連続で客席を沸かせました。これから大いなる未来が待ち受ける2人がどんなハーモニーを奏でるのか、ご期待ください。
ジュンヌバレエYOKOHAMA
橋本杏梨、 生方隆之介
※演目は変更になる場合がございます。
チケットは、こちら(横浜バレエフェスティバルチケットセンター)からどうぞ。
他、チケットかながわ、イープラスでも扱っています。詳しくは、こちらから。
投稿日: 2018 年 6 月 20 日
カテゴリ: インタビュー