ショート・ストーリーズ・9 バレエ・インクレディブル

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PICK UP!

NBAバレエ団『海賊』
久保綋一版 世界初演プレビュー
~久保綋一×新垣隆でバレエ『海賊』の歴史を変える!~

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

 

芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えた21世紀のバレエ。NBAバレエ団は米国で長らくプリンシパル・ダンサーとして活躍した芸術監督・久保綋一のもと、20世紀の巨匠バランシン、チューダーらの名作のほかゴシック・ホラーとバレエを融合させた『ドラキュラ』(ピンク振付)を大貫勇輔主演で上演したり、昭和の歌姫・美空ひばりの生涯を描いたレビュー風の『HIBARI』を創作したりと意欲満々で、バレエ界の枠を超えて注目を浴びる。

 そんな上り調子のNBAバレエ団&久保が2018年3月、新たに世に放つのが『海賊』だ。19世紀のギリシャを舞台にした華やかなで躍動感に富むこのバレエは1856年にパリ・オペラ座で初演され、その後ロシアでプティパにより改訂された。演出・振付の久保は「NBAバレエ団ならではのオリジナルで、イキのいい男性もガンガン動かせる全幕バレエを創ろうと考えました。そこで手を加えやすい『海賊』にたどり着いたんです」と創作動機を話す。
原作であるバイロンの長編詩をひも解き、新たな物語を創った。海賊の奴隷アリも登場するが、あくまでも海賊の頭領コンラッドが主人公で、彼と恋人のメドーラ、オスマン軍の奴隷であるギュルナーレの愛憎劇に焦点をあてる。“一人の男を巡る女二人の結末”(チラシより)がみどころだ。海賊とオスマン軍の戦いも久保版ならではの新たな見せ場となり、剣術指導のエキスパート新美智士を招く力の入れようである。

 音楽もオリジナル。現在上演される『海賊』の音楽はアダンの原曲だけでなくさまざまな作曲家の曲が取り入れられ一様ではない。久保は若手気鋭の指揮者・冨田実里に指揮・音楽監督を委ね、どの曲を使うのかを共に検討した結果、新たに曲を創ることを決めた。依頼したのは作曲家・ピアニストの新垣隆。2016年の『死と乙女』で組み気心が知れている仲だ。「場面や尺などを記した細かい注文書とデモテープを作り新垣さんにお渡しました。メドーラとコンラッドとアリによるパ・ド・トロワや『夢の花園』の場面は既存の曲を使っていますが、それ以外はオリジナルです」(久保)。編曲ではなく「作曲」というから驚かされるが、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』といったチャイコフスキーの名曲が厳然と存在する作品とは事情が違い改変に比較的自由度はあろう。その辺りも久保の言う「手を加えやすい」ということの一部だと思われる。


 振付助手の宝満直也は新国立劇場バレエ団を経て入団したばかりで気鋭の振付家としても活躍中。久保は宝満の力量を高く買う。「『ここはこういうシーンでこういう風にやってくれ』とゴールを設定して、そこまでは自由にやってもらっています。もちろん最後は自分が判断を下していますが、彼は物怖じせずに意見を言ってくれるので助かっています」。独りよがりにならずベストな道を探る。すべては「お客様に楽しんでいただくためです」(久保)。


全2幕構成のうち第1幕のリハーサルを少し観る機会を得た。コロンの港街の人々の自然かつ生き生きとした存在感が光り、海賊たちとオスマン軍の戦いは本格的な殺陣が入り迫力満点。オスマン軍から救出されたギュルナーレはコンラッドに惹かれ恋心を抱くが、彼にはメドーラという恋人がいる――。ギュリナーレが哀しみ苦しむ姿がありありと伝わってきた。新垣の音楽もバレエ=舞踊劇に寄り添うように奏でられ、ドラマティックに響く。“未だ誰も目にしたことのない『海賊』がここにある”というチラシの謳い文句は大げさではあるまい。「ご覧になる方を寝落ちさせません!(笑)」久保は豪快に宣言した。


NBAバレエ団は“攻めの姿勢”(チラシの久保の挨拶より)を貫くバレエ団として日本のバレエに刺激をもたらしている。プリンシパルやソリストの陣容も厚くなってきた。久保は芸術監督に就いて早6年近く経ち「好きなことだけをやって花火を上げて終わりたくはなかった」と来し方を振り返る。「社会人として、また上に立つ人間として、どう振る舞うのかを地道に勉強して今に至り、人間的な成長ができました。私を支え、指導してくださる先輩方、友人たちのおかげです。まだまだこれから学ぶべきことも、やるべきこともあります」と浮かれた様子はなく頼もしい限り。久保率いるNBAバレエ団の果てしなき挑戦からますます目が離せない。


★ ☆ ★ 公 演 情 報  ★ ☆ ★

日時:
2018年3月17日(土)開場13:15・開演14:00
2018年3月18日(日)開場13:15・開演14:00

会場:東京文化会館

詳細はこちら http://www.nbaballet.org/performance/2017/kaizoku/

 

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