【PICKUPについて】

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PICK UP!

遠藤康行(横浜バレエフェスティバル芸術監督)インタビュー
~「横浜バレエフェスティバル2017」の見どころを語る!

国際コンクール受賞で注目される新鋭と国内外で活躍中のワールドクラスのスターが集結する「横浜バレエフェスティバル2017」が、6月9日(金)、10日(土)神奈川県民ホールで行われます。2015年に始まり今回で3回目を迎える同バレエフェスはバレエの現在を知るうえで見逃せない公演として注目されています。芸術監督の遠藤康行さん(元フランス国立マルセイユ・バレエ団ソリスト・ 振付家)に今回の見どころをうかがいました。

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

――今年のコンセプトは?
基本的に今までと同じです。日本であまりやられていない作品を紹介したりヨーロッパで経験してきたことを若いダンサーに伝えたりする場所にしたい。今年はA・B2つのプログラムを上演して世界初演や日本初演を含む多くの作品をご紹介します。また今年は「ジュンヌバレエYOKOHAMA」を立ち上げ、その作品を上演します。

――「才能溢れる若いダンサー達を集結し未来のグローバルダンサー育成プロジェクトとして」始めた「ジュンヌバレエYOKOHAMA 」についてお話しください。
「横浜バレエフェスティバル」のスタートと同時進行で考えていました。若く優秀なダンサーたちが交流し互いを高め合いながら良い方向に進むグループを作りたかった。一過性ではなく、ヨーロッパのダンスフェスティバルのようにある程度の固まった期間でオーディションやワークショップがあるようにしたい。メンバーは高校3年生から中学1年生までの8人(川本真寧、縄田花怜、中島耀、中村りず、竹内渚夏、丸山萌、亥子千聖、生方隆之介)。彼らはコンクールに出てひとりで踊ることが多いですが、全日本のスポーツチームのように皆で遠征にいくような感じでひとつの舞台に立つのは良い機会だと思います。

――「ジュンヌバレエYOKOHAMA 」に新作を振付されますね。
モーツァルトのピアノ曲「きらきら星変奏曲」を用い蛭崎あゆみさんに生演奏してもらいます。12の変奏がありますが全部は使わず少し省いて7、8分の作品にしたい。若者たちの一瞬のきらめき、一瞬の心象風景を捉えたいと思います。彼らと話すとジェネレーションは違いますが刺激になります。メンバーの8人にオーギュスト・パライエ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校)が加わります。タイトルは未定ですが音楽の原題にも入っている『Ah!, vous dirai-je, maman』にしようと考えています。

――国内外で幅広く活躍しているプロフェッショナルダンサーの選択はどのように?
「誰に出てほしいか」を考えてオファーしています。過去2回に出てくれた方は皆好きなのでその後も声をかけていますが、皆さんのスケジュールと開催時期との兼ね合いもあります。「出たい」といってくださる方も増えてきました。自分でも国内だけでなくフランスに行ったときに公演を見たり稽古場をみせてもらったりしてアンテナを張っています。

――個々の出演者についてうかがいます。まずファッショニスタとしても注目されている飯島望未さん(チューリッヒ・バレエ グルッペ・ミット・ソロ)が初登場し八幡顕光さん(新国立劇場バレエ団プリンシパル)とペアを組みます。
望未ちゃんはいいダンサーだと知っているのでオファーしました。Aプロではデヴィッド・ビントレー振付『アラジン』第3幕のパ・ド・ドゥを踊ります。顕光くんは新国立劇場バレエ団でアラジンを、望未ちゃんはヒューストン・バレエでプリンセスを踊っています。Bプロでは望未ちゃんと顕光くんと僕の3人で僕の『3 in Passacaglia』を踊りますがシャープさが必要なので望未ちゃんにぴったり。顕光くんの大人っぽい部分も引き出してあげたい。

――3回連続参加となる二山治雄さん(ワシントン・バレエ スタジオ・カンパニー)は今年の春パリ・オペラ座バレエ団と短期契約を結ぶなど飛躍しています。二山さんと組むのが同じ教室出身の竹田仁美さん(NBAバレエ団プリンシパル)です。
ふたりが昨年のNBAバレエ団公演で『スターズ&ストライプス』(ジョージ・バランシン振付)を踊っているのを見てオファーしました。同じものをAプロで踊ってもらいます。二山くんがBプロで踊る『バラの精』のタイトル・ロールには内に秘めたエネルギーと柔らかさが必要です。若い一時期にしかできないので今の彼に合っていると思う。また二山くんはAプロで『ラ・バヤデール』よりソロルのヴァリエーションも踊ります。ローザンヌで第1位になったときに踊った曲なので皆さん久しぶりにご覧になりたいだろうなと。

――昨年のトリを飾った倉永美沙さん(ボストン・バレエ団プリンシパル)、清水健太さん(ロサンゼルス・バレエ団ゲスト・プリンシパル)のコンビが再登場します。倉永さんは5月末に発表される“バレエ界のアカデミー賞”と称されるブノワ賞にノミネートされており、まさに旬の存在ですね。
A・Bプログラムともに『ジゼル』より第2幕のパ・ド・ドゥを踊ってもらいます。倉永さんの希望です。また倉永さんはBプロで『walking with hands』を踊ります。これはボストン・バレエ団のプリンシパルであるパウロ・アハイスの創作です。

――近藤亜香さんとチェンウ・グオさん(ともにオーストラリア・バレエ団プリンシパル)も昨年に続く登場です。公私にわたるパートナーで息がぴったりでした。
人間的にも素敵なペアだったのでまた来てほしかった。今回もシーズン中に来てくれるので、次に時間のあるときにはオーストラリア・バレエ団ならではの作品、たとえばグレアム・マーフィー版の『白鳥の湖』などを見せてほしいと考えています。

――初回にマッツ・エック振付『眠りの森の美女』よりを踊った湯浅永麻さんはアントン・ヴァルドヴァウワーさん(スウェーデン王立バレエ団)とエックの『ジュリエットとロミオ』よりバルコニーのパ・ド・ドゥを披露します。
初回のワークショップを児玉北斗くんと一緒に担当してくれた木田真理子ちゃんがジュリエット役を初演してブノワ賞を受けた作品で抜粋ですが日本初演になります。永麻ちゃんはスウェーデン王立バレエ団に呼ばれて全幕を踊っています。永麻ちゃんは真理子ちゃんと同じように振付家にもの凄く好かれるタイプですね。

――柳本雅寛さん(コンテンポラリーダンサー +81主宰)も常連ですね。
おもしろい場を創り、ほっこりさせることに長けているので、またお願いします(笑)。今回彼のパートナーは熊谷拓明くん(ダンス劇作家)。なかなかおもしろいキャラの人です。『Que Sera』より~ 柳本の場合 ~と~ 熊谷の場合 ~を踊ってもらいますが、A・Bプロで違うバージョンになります。そういった工夫もできる人たちです。

――話題沸騰のシディ・ラルビ・シェルカウイ新作世界初演ソロ『Mononoke』を踊る加藤三希央さん(ロイヤル・フランダース・バレエ団)についてはいかがですか?
三希央との縁は長いですが、いいダンサーなので頼みたい。モナコ公国モンテカルロ・バレエ団からフランダースに移りましたが、そこで芸術監督をしているシディが新作を創ってくれます。リハーサルはこれからです(注:取材は4月中旬)。僕はマルセイユの前にシャルロワ・ダンスで踊っていたこともありベルギーの匂いがするものって好きなんですよ。シディの作品はスタイリッシュだけれど、どこか人間臭さがあって凄く好きですね。

――オーギュスト・パライエさんはまだ学生なのに海外から招聘します。
昨年カンヌのロゼラ・ハイタワー・バレエ学校の昇進試験の審査に呼ばれたときに凄いなと思いました。身長が2 メートル近くあるのに動きが大きくて集中力も強い。フランス人でジャン=クリストフ・マイヨー(モナコ公国モンテカルロ・バレエ団芸術監督)の甥ですが「こういう踊りのできる14歳(当時)がいるんだ!」と驚きました。日本の同年代の子が見てどう感じるだろうかと思って呼びました。Aプロではパリ・オペラ座バレエ団エトワールだったジョゼ・マルティネズが旧作を手直しする『SOLI-TER』より、Bプロではロゼラ・ハイタワーの教師でイタリア人のフランチェスコ・クルチが振付する新作を踊ります。

――畑戸利江子さん(2013年モスクワ国際バレエコンクール銅賞)が初回以来の登場を果たします。
素晴らしいテクニックと表現力を持つダンサーです、その彼女が初回に米沢唯ちゃんと奥村康祐くんがパ・ド・ドゥを踊って好評を博した『ソワレ・ド・バレエ』よりソロを踊るので凄く楽しみです。

――初回からおなじみのオーディション選出によるジュニアが今年もフレッシャーズガラに登場します。優勝は松浦祐磨さん、準優勝は大岩詩依さんです。
ふたりとも中学2年生です。松浦くんはテクニックが素晴らしいし型破りなところがあるんだけれど、まだ何かを秘めている。そこをサポートしてあげたい。大岩さんには中2とは思えないようなしっかりとした強さがあります。クラシック・バレエだけでなく、いろいろな側面を見たいですね。松浦くんと大岩さんはAプロでそれぞれ『ドン・キホーテ』バジル・第3幕、『ラ・バデヤール』幻影の場ソリスト第1ヴァリエーションを踊る他、Bプロで一緒に『パリの炎』グラン・パ・ド・ドゥを踊ります。新しい試みです。

――今回の公演への抱負をお聞かせください。
なかなか無いようなラインナップになっているので料理のし甲斐があります。今年は「ジュンヌバレエYOKOHAMA」もいるのでオープニングとフィナーレもボリュームあるものになりそうです。A・Bプロどちらを見ても、両方見てもおもしろいと思っていただけるようにしたい。公演を通して1つのストーリーが見えるようになればいいですね。

――「横浜バレエフェスティバル」の芸術監督を務められ3年目になりますが、そこから受ける刺激はありますか?
これだけの規模の公演をやるにあたって踊るだけでなく出演者と話し交流していくことはもちろん刺激になりますし、芸術監督として舞台を提供していくことに使命感を覚えています。これからも多くの作品や、さまざまなダンサーを舞台にのせていきたいです。

 

公 演 情 報

2017横バレトップ770_350

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Aプログラム   6/9(金)19:00~

◆「ラ・バヤデール」よりソロルのヴァリエーション
2014年ローザンヌコンクール優勝の際に踊ったヴァリエーション。
二山の持つ魅力を存分に味わうことのできる1曲です。
二山治雄

◆「グラン・パ・クラシック」
華やかな曲にのせて高度な技が次々と繰り広げられる、スターダンサーにふさわしい作品。
近藤亜香(オーストラリア・バレエ プリンシパル)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ プリンシパル)

◆「アラジン」
振付:デヴィット・ビントレー
新国立バレエ団で世界初演後、バーミンガム・ロイヤルバレエやヒューストン・バレエ団でも上演された、子どもから大人まで楽しめる作品。
飯島望未(チューリッヒ・バレエ グルッペ・ミット・ソロ)
八幡顕光(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

◆「ジゼル」
昨年の公演で絶賛の嵐だった倉永・清水の豪華ペアによるロマンティック・バレエの王道「ジゼル」は、バレエファンなら絶対見逃せません。
倉永美沙(ボストン・バレエ団 プリンシパル)
清水健太(ロサンゼルスバレエ団プリンシパル)

◆「ジュリエットとロミオ」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
*日本初演
振付:マッツ・エック
2014年バレエ界のアカデミー賞と言われる「ブノワ賞」を日本人が初めて受賞したことで大きな話題となりました。待望の日本初演!!
湯浅永麻(元ネザーランド・ダンス・シアター)
アントン・ヴァルドヴァウワー(スウェーデン王立バレエ)

◆「Mononoke」
ダンス界で今大きな注目を集めているシディ・ラルビ・シェルカウイが加藤三希央のために振り付けた新作。
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
加藤三希央(ロイヤルフランダースバレエ団)

◆「Que Sera」より~ 柳本の場合 ~
*+81新作
前々年、前年と話題と笑いを巻き起こした柳本雅寛の意欲作!
熊谷拓明との化学反応も乞うご期待。
振付:柳本雅寛
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー +81主宰)
熊谷拓明(ダンス劇作家)

◆「スターズ&ストライプス」
20世紀の偉大な振付家ジョージ・バランシンによるアクロバティックなジャンプや回転技が魅力の作品です。
振付:ジョージ・バランシン
竹田仁美(NBAバレエ団プリンシパル)
二山治雄

◆「SOLI-TER」より
かつてパリオペラ座で上演された「SOLI-TER」を、横浜バレエフェスティバルで
オーギュストが踊るためにアレンジした特別な作品です。
振付:ジョゼ・マルティネズ
オーギュスト・パライエ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校)

◆「タイトル未定」Aプログラムバージョン
*ジュンヌバレエYOKOHAMAのデビュー作。新作世界初演。
10代の若さですでにバレエの道をひたすらに進んでいく大きな覚悟を決めた彼ら。
この作品がプロへの道のりの出発点となることでしょう。
振付:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ピアノ:蛭崎あゆみ
オーギュスト・パライエ
川本真寧(2015年オーディション優勝)
縄田花怜(2016年オーディション優勝)
中島耀(2016年オーディション神奈川県民ホール賞)
中村りず(2015年オーディション第3位)
竹内渚夏(2017年オーディション第3位)
丸山萌(2017年オーディション第4位)
亥子千聖(2017年オーディション第5位)
生方隆之介(2017年オーディション第6位)

◆「ラ・バデヤール」幻影の場ソリスト第1ヴァリエーション
オーディションで高く評価された確かな基礎力と、高度な技術力が必要な最後の見せ場が大きな見どころです。
大岩詩依(2017年オーディション準優勝)

◆「ドン・キホーテ」バジル・第3幕
オーディションでは、1ミリたりともぶれない軸の強さを見せつけたピルエット(回転技)で 観客を圧倒しました。まだ中学生とは信じがたいほどの驚異的なテクニックをご覧ください。
松浦祐磨(2017年オーディション優勝)

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Bプログラム  6/10(土)16:00~

◆「バラの精」
バレエ・リュスの代表作ともいえる「バラの精」
二山と竹田が観客を美しい幻の世界へいざなってくれることでしょう。
竹田仁美(NBAバレエ団プリンシパル)
二山治雄

◆「海賊」
公私ともにベストパートナーの2人による安定感抜群のパ・ド・ドゥ、
そして超人的なテクニックは絶対に生の舞台で見るべき!
近藤亜香(オーストラリア・バレエ プリンシパル)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ プリンシパル)

◆「ジュリエットとロミオ」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
*日本初演
振付:マッツ・エック
湯浅永麻(元ネザーランド・ダンス・シアター)
アントン・ヴァルドヴァウワー(スウェーデン王立バレエ)

◆「walking with hands」
クラシックとはまた違った世界観による倉永美沙の新たな魅力とその表現を堪能できる作品です。
振付:Paulo Arrais(パウロ・アハイス)
倉永美沙(ボストン・バレエ団 プリンシパル)

◆「ジゼル」
倉永美沙(ボストン・バレエ団プリンシパル)
清水健太(ロサンゼルスバレエ団プリンシパル)

◆「3 in Passacaglia」
2013年、JAPON dance projectによってカンヌで上演された話題作を飯島・八幡・遠藤の魅力的なキャストで再演決定!
振付:遠藤康行
飯島望未(チューリッヒ・バレエ グルッペ・ミット・ソロ)
八幡顕光(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)

◆「Que Sera」より~ 熊谷の場合 ~
*+81新作
Aプログラムとはまた違った味わいをお楽しみください。
振付:柳本雅寛
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー +81主宰)
熊谷拓明(ダンス劇作家)

◆「Mononoke」
*シディ・ラルビ・シェルカウイ 新作世界初演
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
加藤三希央(ロイヤルフランダースバレエ団)

◆「ソワレ・ド・バレエ」より
米沢唯が2015年の横浜バレエフェスティバルで踊り、そのスーパーテクニックに
拍手喝采となった作品を、今年はなんと畑戸が踊ります!
畑戸利江子(2013年モスクワ国際バレエコンクール 銅賞)

◆「タイトル未定」
*Francesco Curci(フランチェスコ・クルチ) 新作日本初演
芸術監督の遠藤がフランスでその才能に度肝を抜かれた2m級のスーパーダンサー、
オーギュスト・パライエ。その彼が遂に日本初登場!
振付:Francesco Curci(フランチェスコ・クルチ)
オーギュスト・パライエ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校)

◆「パリの炎」
フレッシュなペアによる競演!
プロ顔負けの高難度技をいとも簡単そうに演じてしまう2人から
一瞬たりとも目が離せません。
大岩詩依(2017年オーディション準優勝)
松浦祐磨(2017年オーディション優勝)

◆「タイトル未定」Bプログラムバージョン
*ジュンヌバレエYOKOHAMAのデビュー作。新作世界初演。
振付:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ピアノ:蛭崎あゆみ
オーギュスト・パライエ
川本真寧(2015年オーディション優勝)
縄田花怜(2016年オーディション優勝)
中島耀(2016年オーディション神奈川県民ホール賞)
中村りず(2015年オーディション第3位)
竹内渚夏(2017年オーディション第3位)
丸山萌(2017年オーディション第4位)
亥子千聖(2017年オーディション第5位)
生方隆之介(2017年オーディション第6位)

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