NDT-世界を牽引する現代バレエ団NDTが13年ぶりに来日

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PICK UP!

牧阿佐美(牧阿佐美バレヱ団主宰)インタビュー
~母・橘秋子の代表作を新たに蘇らせる『飛鳥 ASUKA』への思いを語る!~

牧阿佐美バレヱ団が2016年8月27、28日、新国立劇場オペラパレスにて創立60周年記念公演Ⅶ『飛鳥 ASUKA』を上演します。舞台は古代の奈良。芸術の神である竜神の妃に選ばれた舞女・春日野すがる乙女と幼なじみの岩足(いわたり)の愛の葛藤を軸に壮大な物語が展開されます。改訂演出・振付の牧阿佐美さんに本作に懸ける思いを伺いました。
取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

――創立60周年シリーズのハイライトを飾る『飛鳥 ASUKA』(新制作・世界初演)の基になるのは師であり母である橘秋子先生(1907~1971年)が台本・原振付を手がけた『飛鳥物語』(1957年初演)です。今回上演しようと思われた理由を教えてください。
60周年シリーズではローラン・プティさんの世界的なレパートリーでバレエ団でも何度も上演してきた『ノートルダム・ド・パリ』と共に母の作品を取り上げたいと思いました。母は「私はデッサン風に創っておくから、あなたの時代にあわせて色付けしなさい」と言っていましたので、今回は『飛鳥 ASUKA』と改題し、映像も取り入れたファンタジーとして上演します。画家の絹谷幸二先生に美術についてご相談すると、先生は奈良のご出身なので二つ返事で引き受けてくださり「橘先生の時代に戻すのではなく先々のために創ったほうがいいですよ」とおっしゃいました。そこで改訂し、新制作として上演することにしました。母が台本も書き下ろした代表作ですので最後の親孝行として取り組みたいと思いました。

――橘先生はどのような方でしたか?
母は「ダンサーは舞台に立たせなければ上手にならない」といつも言っていて、必ず赤字が出るのに毎月、定期公演を行ったこともあります。その頃は文化庁の助成金もありませんでしたが母が定期公演を行ったのでバレエに対して理解が得られ、国から助成をいただけるようになりました。「若い人が育つためだったら床におでこをつけてでも頼める」と言っていました。
台本を書くのも振付も好きでした。群舞の構成とか上手でしたね。ただ母に限らず日本人皆が今のようなテクニックを知らない。アメリカのアレクサンドラ・ダニロワ先生のもとから帰ってきた私に「こんな感じにしたいのだけれど、どうすればいいか」と聞くので3種類くらい踊ってみせると「これは感じが違う」「これは使える」と振付を決めていきました。
指導者としては優れていたと思います。精神的なものが鍛えられる。滝行が有名ですが高尾の山奥の滝で打たれて稽古場に戻ると、すっきりとして気持ちが違う。最初の頃、滝までの山道を歩いていると滝のことで頭がいっぱいなのですが、2、3年すると土手に咲いている小さな花が気になりだしました。こんなに小さくても生きているんだな、感情があるんだろうな、踏んだらいけないなとか色々なことが見えるんですね。バレエそのもののテクニックには影響しませんが「ものが見える」ということは滝行から来ていると思います。

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――『飛鳥物語』の上演の歴史やエピソードをお話しください。
母は『角兵衛獅子』(1963年)など日本のバレエを創りました。『角兵衛獅子』は大原永子さんと森下洋子さんのための作品でしたが『飛鳥物語』は私のために創ってくれました。『角兵衛獅子』で永子さん、洋子さんが踊ったのは私より年下の姉妹の役でしたが、私には大人の役を創ってくれました。1957年に雅楽を使って初演した後、1962年に片岡良和先生が作曲してくださりオーケストラで上演したのですが、本番直前にアキレス腱を切ってしまい踊れませんでした。1969年に日生劇場で上演したときは主役の竜女を踊りましたが、直後に母は死の床につきました。因縁を感じますね。1976年に私が改訂しステップを増やしたり、飛鳥舞を付けたりしました。最後の上演は1986年の創立30周年のときです。

――『飛鳥 ASUKA』のテーマは?
竜神=芸術の象徴です。春日野すがる乙女が、そろそろ竜神のお迎えが来るからと身を清めに行ったところで幼なじみの岩足に会ってしまう。竜神=芸術の世界に行った後でも岩足のことが引っかかって思い出していると、竜神の元妃であった黒竜が竜神に言いつける。人間の世界から離れないと竜にはなれないし、竜の世界に昇天すれば、生きては人間の世界に戻れないという掟がある。竜の火で焼かれて地上に還ってきたときには死にかかっていて、滝に落ちているのを岩足が見つけ抱いて嘆いて終わりになります。バレエって愛と生と死しかないんですね。プティさんの『ノートルダム・ド・パリ』には罰が入っている。それであれだけの作品にしている。春日野すがる乙女は最後には愛を選んでいるのですが、そこには竜神の妃の座を奪われまいとする元妃・黒竜の嫉妬がある。黒竜は春日野すがる乙女が来なければ竜神夫人として確たる地位がある。芸術だけではなく、どんな世界でも嫉妬されて駄目になってしまう場合があります。

――『飛鳥物語』からどの程度構成を変えるのでしょうか?
全3幕だったのを全2幕に仕立て直し元々の1幕と2幕を一緒にします。お祭りの途中で急に暗くなり竜神が降りてきて竜の玉をくれる場面があったのですが、それは止めました。今は装置の転換が簡単にできるので、お祭りの後に春日野すがる乙女が一人で竜と出会うようにしました。元の3幕すなわち今回の2幕は竜の世界で竜たちの踊りがみどころです。元の1幕と2幕である今回の1幕の人間の世界は儀式的で後半はドラマティックです。

――美術や音楽をどのようにされるのですか?
美術は映像を使いスクリーンと舞台袖を2本にしたところに写して立体的にします。絹谷先生が奈良を描かれた絵を用い、神社や鹿が走っていたり鳥が飛んできたりする映像(映像演出:Zero-Ten)も入ります。音楽は短くしたり長くしたり入れ替えはしますが、ほとんど変わっていません。母が細かい設定をお伝えし片岡先生に作曲していただいているのできめ細かく仕上がっています。メロディがきれいでバレエ音楽として成功していると思います。

――春日野すがる乙女をスヴェトラーナ・ルンキナさん(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)、岩足をルスラン・スクヴォルツォフさん(ボリショイ・バレエ)が踊ります。飛鳥時代を背景とする作品の主役をロシア人のダンサーが踊るのはなぜですか?
飛鳥がシルクロードを通じて国際都市だったということもありますが、日本を舞台にしているから日本人が踊るというのは能や歌舞伎でいいんじゃないかなと。国際的で誰でも踊れるのがバレエです。ルンキナさんは精神性の深い表現をされる方なので、彼女が踊ることによって、海外の人にも踊りたいなと思ってもらいたい。いつも日本人だけで作品を創っていると世界には出ていけません。今の時代、野球でもサッカーでもグローバルになっていますよね。バレエそのものは西洋から来ているので、西洋の文化に日本古来の伝統的な文化を重ね合せることは、簡単なことではありません。「日本人のバレエ」と簡単に言えるのは深くバレエを理解していないからかもしれません。全世界の人が踊れるような作品にしたいと思います。

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――竜神を踊るのは古典の王子からクセのある役までこなす菊地研さんです。
研くんは個性的ですがオーソドックスにバレエを身に着けています。キャラクテールや個性のある役たとえば『ロミオとジュリエット』のティボルトなど日本人だと難しいのですが彼はできる。『飛鳥 ASUKA』では姿形からして岩足もできると思いますが、春日野すがる乙女と岩足の役は同じ文化の人同士の方が好き嫌いの表現が同じ目線でできるので、今回は竜神をやってもらいます。

――若いダンサーたちがリハーサルに取り組む様子はいかがですか?
踊りは昔の人より上手いですね。でも昔の方がバレエに賭けていて精神的に強い。母の言うことを一生懸命聞き取ろうとしていました。今は、そこをとことん言い聞かせなければならないので苦労しています。当時とはセンスが違いますね。自分が踊っているステップに意味があるのに意味を感じない。必死にやってくれていますが順番を覚えたからできたじゃなくて、そこからステップの意味の理解を深め、役柄に入っていかなければいけません。

――ご覧になる方に何かメッセージはおありですか?
春日野すがる乙女はせっかく芸術の世界に入ったので竜神の世界にとどまるべきだと私は思いますが、人間の愛を忘れられなくて悩みに悩んで岩足の方に戻る。これには母が芸術家として頑張った結果が反映されています。母は戦前に父(牧幹夫)とインドに向かう予定でしたが、バレエを日本でやっているから1年遅れて行くと言って残ったために戦争が始まって約束を果たせなかった。父を思う心はありましたが、大勢のお弟子さんを抱えているのでバレエは辞められない。父のことを放ったらかしにしてしまったと死ぬときに泣いていました。だからこそ「死んでも人間に戻りたい」という願いがあったのだと思います。今の時代なら芸術ではなく愛を取ると思いますが母の愛は犠牲愛っぽいですね。芸術に憧れ、竜神が認めてくれたのに岩足に会ってしまった。竜神のところへ行くか行かないか――。そこをどう感じていただけるかが、この作品のポイントです。

 

★☆★ 公 演 情 報 ★☆★
牧阿佐美バレヱ団創立60周年記念公演-Ⅶ
新制作/世界初演  『飛鳥 ASUKA』

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古代、国際色あふれる豊かな文化が花開いた奈良。
いにしえの都で繰り広げられる、竜神に愛された乙女の物語。
日本の伝統文化の美とバレエ芸術が融合し、世界の人々の心に響く壮大なバレエファンタジーがここに誕生します。

日時:2016年8月27日(土)18:00/28日(日)14:00
会場:新国立劇場オペラパレス

公演の詳細はこちら⇒ http://ambt.jp/

 

牧阿佐美バレヱ団 2016年8月公演「Asuka」P.V

 

 

 バレエナビより公演チケットプレゼント! 
牧阿佐美バレヱ団 『 飛鳥 ASUKA 』 の公演チケットをプレゼント致します。
8月27日(土)18時開演:2組4名様
8月28日(日)14時開演:2組4名様

プレゼント希望の方は
1.お名前
2.希望公演日
3.居住している都道府県
4.連絡のつきやすい電話番号
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上記を明記のうえ、  info@balletnavi.jp  までメールにてご応募ください。
当選者の方にはメールまたはお電話にてご連絡いたします。
※応募メール送信後に自動返信されるメールは当選メールではございません。
※必ず公演に行ける方のみご応募ください。

応募締切:2016年8月19日21時まで