【PICKUPについて】

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PICK UP!

テロ・サーリネン【インタビュー取材】
テロ・サーリネン・カンパニー『MORPHED-モーフト』

北欧・フィンランドより、テロ・サーリネン率いるテロ・サーリネン・カンパニーがこの夏日本初上陸! 2014年にフィンランドで初演を迎え、大好評を博した『MORPHED』を披露し、その世界観を提示します。日本との縁も深く、カンパニーと共に来日するのが夢だったというテロ・サーリネン。開幕に先立ち、創作の経緯と公演への想いをお聞きしました。

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待望の初来日を果たすテロ・サーリネン・カンパニー。日本での公演はかねてからの夢だったそうですね。
初めて日本に来たのは2002年で、フェスティバルで『HUNT』というソロ作品を踊っています。私自身日本で勉強をしていたりと日本とは縁があり、日本のダンサーと一緒に仕事をしたいとずっと思っていました。昨年埼玉舞踊協会の仕事で来日し、日本人ダンサーに『MESH』という作品を振り付けましたが、あれは非常に素晴らしい経験になりました。さらに今回自分のカンパニーと共に来日することができ、またひとつ夢が叶います。
『MORPHED』はある意味フィンランドの叡智を集めた作品です。照明・舞台美術家のミッキ・クントゥとは20年来一緒に仕事をしていますし、衣裳デザインのテーム・ムーリマキはマリメッコのデザインも手掛ける有能なデザイナーであり、音楽はフィンランドを代表する作曲家エサ=ペッカ・サロネンの楽曲を使用しています。より優れた才能を選んだ結果集まったのが彼らであり、この作品を日本に紹介できることを嬉しく思います。

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エサ=ペッカ・サロネンの楽曲に振付けようと考えた経緯とは?
エサ=ペッカとは旧知の仲であり、彼の曲は昔からよく聴いていました。そうした経緯もあり、クラシック音楽のニュアンスやカラーを取り入れた作品を作ろうと考えたとき、まず彼の楽曲が頭に浮んできました。『MORPHED』では3つの曲を使用していますが、初期の作品から新作まで使ったことで、よりドラマに深みを与えることができたと思います。エサ=ペッカも興味深く受け止めてくれていて、2014年のプレミアではエサ=ペッカ自ら指揮を務め、フィンランド国立歌劇場管弦楽団とヴァイオリニストの諏訪内明子さんの演奏で上演しました。あれは本当に特別な経験でしたね。私自身とても興奮したし、大きな喜びを感じました。

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1990年代に日本に滞在し、舞踏家・大野一雄のもとで研鑽されています。舞踏を学ぼうと思った動機は何だったのでしょうか?
私はもともとクラシック・バレエを踊っていましたが、次第にクラシックの世界における男性ダンサーの存在に限界を感じるようになっていきました。その頃ちょうどヨーロッパで舞踏のムーブメントが起こり、どこか挑戦的な気持ちになったというか、自分自身驚くほどの情熱をもって舞踏に惹かれていったのです。
舞踏との出会いは、私の中の自由のチャンネルを開いてくれました。“これは正しい、これは間違っている”ではなく、“本当の動き”を探っていいんだということを知った。今現在の気持ちをそのまま表現していいんだ、新しい気持ちを乗せた動きがあっていいんだと……。透明になり、その時々の気持ちをあらわす。自分の新しい在り方というものを教わった気がします。

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カンパニーではどのようなトレーニングを行っていますか?
自分が今までやってきたことをみんなに投げ出す感じです。クラシック・バレエはもちろん、大野さんのところで学んだものも教えています。基本にあるのは、五感を目覚めさせよ、その場に生きろということ。あと大野さんがいつも言っていた、360度の好奇心を持て、というメッセージも大切にしています。我々が暮らしている形而上的な世の中、肉体と離れ頭で生きている世界だからこそ、身体の力を目覚めさせることが必要だと考えています。
私たちの身体は日々違っていて、まず今日どのような状態で立っているか感じるところから始めます。指先ひとつひとつに好奇心があり、重みがある。それらを感じ、自分自身を精査するんです。目覚めよというのは、自分自身の内なるものと肉体が繋がること。その大きな柱として、attend、alert、awake、aliveと、4つの“A”を掲げています。神経を研ぎ澄ませ、耳をすませる。極論で言えば、活き活きと生きる、ということです。

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ダンサーを選ぶ際に重視する点は? 今回出演するダンサーの内訳をお聞かせください。
最も重視するのは、同じような価値観を持っていること。深く掘り下げる能力、創作への欲求、情熱を持っていることです。これは芸術に限らずどんな仕事でも必要な条件だと思います。
私は変化や起伏が好きで、メンバーも流動的になっています。10年来一緒に仕事をしているダンサーもいますが、彼らは必ずしも私の作品だけ踊っている訳ではなく、他の振付家と仕事をすることもある。そこで得た物を持ち帰ってくれることを私も期待しているし、そういう意味では彼らは精神的に私に雇われていて、私も彼らを雇っているつもりでいます。
オーディションはあまり好きではないので基本的に行いません。その代わりワークショップでの出会いを大切に、そこで発見したダンサーとフィンランドで仕事をするという手法を取っています。今回はアメリカ人ダンサーがひとりいますが、彼もそうやって出会いました。ダンサーの年齢は26歳〜45歳までとさまざま。バックグラウンドもそれぞれ違っていて、クラシック・バレエ出身者もいればストリートダンサーもいるし、フィンランドの舞台芸術学校を出た人もいる。どんな技術でもいい、ステージで共鳴できるダンサーを求めています。また彼らが得てきたものを共鳴させるのが私の役割であり、きちんと発信できればと考えています。

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『MORPHED』は8名の男性ダンサーで構成されています。男性ダンサーに着目したのは何故でしょう。
私は50歳になりますが、振り返るとあるひとつの節目を迎えているのを感じます。男性ダンサーの才能、力強さ、伝統をもう一度見つめ直し、そこに自分を投影する機会を設けたかった。新たに自分を作り出し、そして新しい力を生み出すのです。男性のダンスというとどうしてもステレオタイプになりがちだけど、全ての物事を好奇心を持って見つめたいし、より複雑で豊かな男性のダンスを提示したいという想いがありました。そこには男性のダンスを礼賛するという意味も込めています。男性らしさを探りながら、実は人間らしさを探っていて、人間の力、才能をダンスで表現したいという気持ちが強くありました。
『MORPHED』(移りゆくもの)が内包するのは、ポジティブなメッセージです。春と同じで、新しい可能性、新しい命が生まれてゆく。人と響き合い、力強く共鳴する。ただ強靱で逞しいというだけではありません。8人の男性の力を融合させることで、より透明に響き合い、新しい何かを生み出していけたらと思っています。

記者からの質問に、ひとつひとつ丁寧に言葉を紡ぐテロ・サーリネン。その真摯な横顔に、誠実な人柄が偲ばれます。公演は6月20より。記念すべきテロ・サーリネン・カンパニー日本初上陸の瞬間に立ち会ってみてはいかがでしょうか。

 

★ ★ ★ 公 演 情 報 ★ ★ ★

テロ・サーリネン・カンパニー『MORPHED-モーフト』

公演日時:
2015年6月20日(土)開演:15:00
2015年6月21日 (日)開演:15:00

会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

詳細ページ:http://saf.or.jp/arthall/stages/detail/2333
※『MORPHED-モーフト』 の舞台映像動画もあります。

 

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