【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
ご期待ください!

PICK UP!

谷桃子バレエ団新芸術監督・齊藤拓インタビュー
&『海賊』リハーサル取材

2014年4月、日本バレエ界に、またひとり若き芸術監督が誕生しました。谷桃子バレエ団の男性主役として端正な表現力と重厚な存在感を持ち味に活躍してきた齊藤拓さんが名門の芸術面をリードすることになったのです。新レパートリー『海賊』上演を前に、齊藤さんに今の心境、将来の展望をお伺いしました。『海賊』リハーサル写真も掲載!

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)  撮影:石川 陽

 

int025

前任の望月則彦先生が亡くなられたことを受けて芸術監督に就任されました。
本当に急だったんですね。谷桃子先生(総監督)、赤城圭先生(団長)からお話をいただいたのですが、まだ踊ることに徹したいという思いもありましたし、自分が芸術監督になるとは思ってもいなかったので、すぐにはお返事できませんでした。でも、父親(齊藤彰)の代からお世話になっており、バレエ団の事を知っていることもあってやってくれないかと。バレエ団にこれから何が必要なのか、どう発展していくのが良いかを考え、少しずつ進めていければと思い就任しました。

改めて谷桃子バレエ団とは、どのようなカンパニーだと思われますか?
ダンサー個々が踊りに対して気持ちいい心を持っていてアットホームです。それぞれ自分たちの役割、やらなければいけないことを考えながら動き仲間をサポートしていく心のあるバレエ団です。谷先生が踊られていた時代から、そのあたりを大切にしてきました。バレエ団の良さは生かしつつ中身を強化していきたいと思います。

int035

強化について具体的にお話いただけますか?
ダンサーたちは個性豊かで、それぞれの役割を持っています。しかし、コールドなど揃えていかなければならないですし、技量や演技力等を最大限に活かせるよう強化していきたい。何年もかかりますが土台から少しずつ時間をかけて固めて行きたいと思います。

レパートリー選定についてお聞かせください。
今いるダンサーの個性を生かし何ができるかを考えていきます。僕が入った頃と違い男性がこれだけ集まっている。男女問わずそういう人材を生かしていきたい。その時々に合わせ作品を持ってきたり、バレエ団で受け継いできた作品を上演していこうと思います。

int095

芸術監督就任後初の新春公演に新レパートリー『海賊』全幕を上演する経緯は?
今までもロシア・バレエをベースにやってきたので、イリーナ・コルパコワ先生(監修)にお願いしてエルダー・アリエフ先生(脚本・演出・振付)を紹介していただきました。いろいろな作品をお持ちの中で、何が谷桃子バレエ団に適しているのを考えた結果『海賊』を選びました。

エルダー・アリエフ版『海賊』の特徴とは?
『海賊』に関して僕自身、主役が誰なのかといった位置付けがはっきりしていない部分やストーリーの前後のつながりが気になります。その点、アリエフ版は、話の流れがスムーズで、コンラッド(海賊の首領)が主役として引き立ちます。そして、アリ(奴隷)という役柄がありません。出てこない理由はあるのですが、『海賊』を上演すると言うと「アリを誰が踊るの?」と必ず聞かれて困ります(笑)。見どころはたくさんあります。アリのいないコンラッドとメドーラのパ・ド・ドゥは見どころですね。名場面の「夢の花園」も構成が変わっています。洞窟のシーンにも注目いただきたいです。皆さんが持つ『海賊』のイメージとは違う所もあるかもしれせんが、アリエフ先生はプティパ振付の最良の部分をそのままにしつつ、独自の解釈で演出されます。

st099

2日間3キャストの配役ですが主役級の方が同じ舞台で共演するのが楽しみです。
今までも「このダンサーも観たい!あのダンサーも観たい!」というご意見をいただいていました。そこで今回は3回公演とも主要メンバーを揃えると作品的にもっと魅力的になるんじゃないかと考えました。ダンサーの身体には負担になりますし、回によって役柄が違う人もいます。私もフォルバン役でダンサーと一緒に舞台を支えていけたらと思います。

主役級ダンサーの魅力を紹介いただけますか?
今井智也はノーブルさとエネルギッシュさを兼ね備えています。在外研修(オーストラリア・バレエ団The Australian Ballet)から帰ってきて彼の良い所が生きてきている。三木雄馬はご存知の通りテクニシャンで自分を魅せることを得意とします。檜山和久は主役を踊り始めて日が浅い。長身なので自分の身体をコントロールするのが難しいのですが、もの凄く稽古を重ねて必要とするものがクリアになってきました。これからのプリンシパルとして挑戦し続けて欲しい。永橋あゆみは大人の雰囲気というか落ち着いた踊りをします。ドレスデンでの在外研修(ドレスデン国立歌劇場Semperoper Ballet)から帰国してから魅せ方が良い方に変わり安定感につながっています。佐藤麻利香は芯があって技術のある良いダンサーですが僕と同じで控えめな性格(笑)。『海賊』では秘めていた違う魅力を見せると思います。

st071

芸術監督としてのさらなる展望、ダンサーとしてのキャリアについてお話しください。
人材を生かし歴史とレパートリーを大切にしながら時代に合わせて進歩していきたい。才能あるダンサーや振付のできる人もいるので新人公演や創作公演といった様々な形で彼らを活かしていきます。私も20年間、谷桃子バレエ団でプリンシパルとして様々な事を経験して参りましたが、舞台には言葉では説明出来ない心というものがあります。舞台では個々のダンサーの心の中身が現れます。だからクリアな気持ちや支えあう心が大切になるのです。これまでもそうだったように感動的な舞台が作れるようなバレエ団であり続ける事を願っています。

int089

 

★☆★ 公 演 情 報 ★☆★

谷桃子バレエ団「海賊」全幕
3月21日(土・祝) 14:00 / 19:00
3月22日(日) 16:00
東京文化会館大ホール

321 322

永橋あゆみ(21日昼・22日メドーラ)
佐藤麻利香(21日夜メドーラ)
今井智也(21日昼コンラッド・22日ランケデム)
三木雄馬(21日昼ランケデム・22日コンラッド)
檜山和久(21日夜コンラッド)
齊藤拓(21日昼・22日フォルバン)
他 谷桃子バレエ団

谷桃子バレエ団ホームページはこちら ⇒ http://www.tanimomoko-ballet.com/

 

st094

st075

int069