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Kバレエカンパニー『シンデレラ』イベント取材

Kバレエカンパニー『シンデレラ』は、昨年、熊川哲也のBunkamuraオーチャードホール芸術監督就任記念作品として 世界初演。再演を切望する声が多数寄せられ、早くも3月に再演が決定。公演に先立ち、今回3回の主演を務めるプリンシパル松岡梨絵さん、王子役のプリンシパル・ソリスト宮尾俊太郎さん、そして衣裳制作の林なつ子さんにお話しを伺うイベントが行われた。

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まず初めに30分ほどの昨年の公演ダイジェスト映像(松岡/宮尾版)を見せていただいた。12公演すべて完売。早々と再演が実現したこの公演。芸術監督・熊川哲也の恐るべき才能が盛り込まれた舞台だ。

まず1幕のシンデレラの衣裳がミニスカート。これがとても斬新。意志をしっかり持った現代的で魅力的な女の子に描かれている。ダンス教師のシーンは、なにか現代の舞踊を批判しているようにも見受けられユーモアたっぷりで笑いが湧く。ゴージャスなセットで観客はまるで宮殿の舞踏会に招かれたよう。シンデレラは光り輝くような変身をとげている。王子はあくまで王子らしく、非の打ちどころがない。楽しく踊るシンデレラに12時の鐘が迫ってくる。ハラハラ、ドキドキの素晴らしい演出は見事というしかない。シンデレラが王子と再びめぐりあい、馬車に乗ってお城へ向かうシーンまで描かれていて、最後まで夢見心地。大満足のエンディングになっている。

衣裳・舞台美術の豪華さとKバレエカンパニーのダンサーのレベルの高さ。プロコフィエフのドラマチックな音楽とともに 繰り広げられる舞台は、まさに熊川ワールド全開だ。

松岡さんは入団11年目。2007年プリンシパルに昇格。宮尾さんは2004年入団。 最近はドラマにも出演するなど、活躍中。昨年の初演でも主役を務めているお二人だ。

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どんな役づくりをして踊りましたか?

松岡 「温かく健気で、芯が強いけれどそれを前面には出さない、かわいらしいシンデレラを演じました。誰かの真似ではない役作りをしました。2幕で観客の皆さんにアッと感動してもらえるように、1幕ではかわいそうに見えるような演技を大切にして、オリジナリティーをだしました。」
熊川さんから、2幕で綺麗な衣装になった時に、当たり前に見えてしまうと指摘されたのだそうだ。「役づくりは、ずっと続きます。」

宮尾 「誰が見ても王子らしい理想の王子像を目指しました。シンプルで難しいところです。昨年の自分の演技を見るとあらが見えてひどいです。」
と謙虚なお答え。つい最近はドラマでボクサー役を演じているが、「いろいろな役を演じるのは、ダンサーも俳優も共通です。映像はすぐに第三者として自分を見られるところが違います。向上心を持ちつつやっていきたいです。」

どんなところを見てほしいですか?

松岡 「おとぎ話の絵本を開いたときのように、カーテンが開いたとたんから、すべてが見どころです。プロコフィエフの音楽は難しくて、とくに演技をしている時の音のとり方が熊川さんに何度も違うと言われました。音楽との兼ね合いが当たり前のように見えるようにしたいです。ダンス教師のシーンなどユーモラスなシーンでは笑い声がくるとホッとします。」

宮尾 「シンデレラのセットには不思議な世界観があり、ここというよりは全部をみてほしい。義理の姉妹とのやりとりなど緩急のあるシーンはシリアスな場面が続く中、ホッとできる場面です。エンターテイメントとして総合的に見てほしいです。」

ここで林なつ子さんが登場。

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林さんは、日本を代表するバレエ団やオペラの衣裳制作で高い評価を受けている有限会社工房いーちを1985年に設立。Kバレエカンパニーには旗揚げ公演からスタッフとして参加。『シンデレラ』は5作目となる。

衣裳デザイナーのヨランダさんの本職は画家。それも写実的な絵ではなく、発想が豊か。

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そして衣裳の生地は、全部を手作業で、普通のコンロで最初にむら染めをするそうだ。「衣装はとにかくダンサーを綺麗にみせることが重要です。そしてシンデレラはかわいそうに見えないと。その後のシンデレラストーリーが見えるように。」「今回148着は、白鳥の湖などに比べると少ないほうです。団員一人づつの寸法に合わせて作ります。」公演中にサイズが変わるダンサーもいるのでは?との質問に「最初は固いのですが、なじみすぎてゆるんでくることもあります。男性の場合はリフトもあり、腕がどうのこうのと…。」

宮尾さんは終始、林さんを頼りにしているようだ。ちなみに松岡さんはきつくて踊りにくいのはダメとのこと。

また「ライティングと色の掛け合いもしなければなりません。これだと選んだ色がぜんぜん出してもらえないこともあるので。」

ダンサーにとって衣裳はどういう存在ですか?

「衣裳はその役そのものにしてくれ、上手く踊れる気がします(松岡)。」

「スイッチの役割です(宮尾)。」

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「表に出るダンサーの精神状態を作るのが大事ですね。」Kバレエならではの特徴は、「春夏秋冬の四季の精が、バラの精、トンボの精、キャンドルの精、ティーカップの精になっているところです。これは熊川さんのアイディアで、普段部屋にあるものが変身してパーティーに連れて行ってくれるのは、夢がある。本当にひらめきの方です。」また常に観客のことを考え、公演中に振りを変えることもするそうである。ヨランダさんのデザイン画から、これは一体どうなっているの?と衣裳を起こしていくが、これほど熊川さんがほめてくれた衣裳はないそうで、舞台稽古の時に熊川さんからスタッフひとりひとりにお礼を言われたそうだ。林さんは独学で舞台衣裳の制作を学び仕事にした。

先人として苦労が多く相当な手間暇がかかる大変な作業のようだが、そんな喜びの時が続けられた理由のようだ。熊川さんはちょっとごまかすとすぐにバレてしまい、やり直しなのだそう。「これから何が起こるんだろう!?というワクワク感を舞台の中で見ていただきたい。」とのことで、今回の舞台では、スモークの中から金色に輝くシンデレラが出現するシーンを特に見ていただきたいそうだ。

最後に一言

宮尾 「舞台には、衣裳、装置、照明、音楽など、時間も費用もかかっています。一瞬一瞬の輝きの美しさを是非ご覧ください。」

松岡 「舞台はやはり生が最高です。絵本から飛び出てくるような世界をどうぞご覧下さい。」

バレエの豪華さ、ドラマ性、テクニックなどすべてが味わえる。誰もが知っている童話の世界をここまで素晴らしい舞台に仕上げるとは。バレエ鑑賞の上級者からバレエを初めて見る方にも是非おすすめしたい公演だ。

司会の安藤弘樹アナウンサーは、場の盛り上げ方が上手く、さすがでした。

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宮尾さんは背も高く爽やかで素敵な方です。メディアへの出演も多いとのことで、トークも上手でした。

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松岡さんはクールな印象でしたが、お話しをされると優しく かわいらしい方で親しみを感じました。

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林さんからはめったに聞けない衣裳制作の貴重なお話を伺えて、大変楽しいひとときでした。

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(取材:村上美樹)

(写真:バレエナビ橋本)

(取材場所:TBS)