『横浜バレエフェスティバル2023』出演!
髙橋絵里奈さんインタビュー
1996年にイングリッシュ・ナショナル・バレエに入団して以来、第一線で活躍し続け、2007年からはリード・プリンシパルとしてカンパニーを代表するプリマとして数々の舞台で主演してきた高橋絵里奈。
英国ナショナル・ダンス・アワードの新人賞を受賞後も毎年のように同アワード最優秀女性ダンサー賞にノミネートされ、古典作品だけでなく最近ではアクラム・カーンの話題作「ジゼル」のタイトルロールなどレパートリーの幅も広く、英国を代表するスター・バレリーナの高橋さん。2019年に続き今年も横浜バレエフェスティバルに出演します。
今年は、夭折の若き天才振付家リアム・スカーレットが振り付けた、第一次世界大戦をテーマとした作品「No Mans
Land」を公私とものパートナーであるジェームズ・ストリーターと踊ります。久しぶりに日本の観客の前で踊る意気込みを聞かせていただきました。
インタビュー:森菜穂美
横浜バレエフェスティバルへの出演は、2019年以来2回目になりますね。2019年には厚地康雄さんと「海賊」を踊られました。この時の思い出にはどのようなものがありますか?
今回出演するにあたっての期待は?
厚地さんとは初めて踊らせていただき、少ないリハーサル回数でしたが、とても気軽に一緒に踊らせていただきました。他に海外で踊っているダンサー達とお会いする事もでき、とても良い思い出として残っています。今回、4年ぶりに横浜バレエフェスティバル、そして、日本で踊ることがとてもまちどおしいです。
今回は、リアム・スカーレット振付の「No Mans Land」をジェームズ・ストリーターさんと踊られます。日本では初演になりますが、なかなか観られないスカーレット作品とあって、楽しみにしています。第一次大戦をテーマとしているとのことですが、どのような作品でしょうか。この作品を日本のお客様に観てもらいたいと思った理由は?
リアム・スカーレットの『ノー・マンズ・ランド』は、リストの音楽に合わせた感情的な作品です。特に今回踊るパ・ド・ドゥでは、待つ女性の哀しみがせつな的に踊りで表現され、女性の中に残された男性のぬくもりや記憶が、まるで残像のようにして観る人の心に残リます。そして、希望と喪失、身体や心に残る記憶を描きます。
思いを込めて心深く語りかけて踊るパ・ド・ドゥをお客様に観て感じてほしいと思い選びました。
前回のご出演では「海賊」を踊られており、またENBの来日公演でも踊られていることから、高橋さんはクラシック・ダンサーのイメージが強かったのですが、最近ではアクラム・カーンの傑作「ジゼル」のタイトルロールを踊られたり、フォーサイス作品を踊られたり、かなり幅広い作品を踊られています。お気に入りの作品や役柄はどのようなものでしょうか。
ダンサーとして、幅広く、違ったスタイルの作品を踊っていくのは、難しくもありますが、視野が広くなりとても大切なことだと思います。どんな作品でも、ドラマチックな感情を踊って表現していくたびに心底自分もその役に浸ってやりがいがあります。
ジゼルは、アクラム・カーンも、クラシックのプロダクションも好きです。一つの作品を選べませんが、ロメオとジュリエットや、マノンなど、感情的な役柄を踊る作品が好きです。
髙橋さんはENBに入団されてから比較的早く2000年にプリンシパル、そして2007年にリードプリンシパルに昇格され、長年バレエ団を、さらに英国バレエ界を代表するダンサーとして活躍をされています。その間にご出産もされています。長くトップで活躍を続けられた秘訣は何でしょうか。健康面などで気を使っていることはありますか?
出産後は、ダンサーとしての筋力が落ち、大変でしたが、自身の身体を一からつくりあげ、産後3ヶ月で舞台復帰しました。ダンサーとして、自身の身体を知ることは大切だと思います。クラス、リハーサルだけでなく、ピラテスを中心としたエクササイズをして、その日その日のコントロールは必ずかかさずやっています。
今回の「No Mans Land」はパートナーのジェームズ・ストリーターさんと踊られます。ジェームズさんはどのようなダンサーだと感じていらっしゃいますか?
とても感情表現が素晴らしく、パートナリングも上手なので、安心して踊ることができます。彼の思いを感じながらこのパ·ド·ドゥができること楽しみにしています。
イングリッシュ・ナショナル・バレエはどのようなカンパニーでしょうか?このカンパニーの良さはどのようなところにありますか?
今回は加瀬栞さん、仲秋連太郎さんとENBの同僚の方々も出演されますね。日本人ダンサーも多いカンパニーですね。
バレエ団は、ロンドン市内にありますが、公演は、ロンドンだけでなく、イギリス国内、国外と、ツアー公演をたくさんします。以前は、伝統的なクラシックばかりでしたが、今は、モダン、コンテンポラリー系の公演もやります。ダンサーはランクに関係なく、みんな、サポートし合い、大規模な家族といってもいいような雰囲気です。日本人は、私一人だけだったのが今はとても増え、嬉しいことです。日本語を忘れないようお話できるので、私には助かります。
横浜バレエフェスティバルは、フレッシャーズ・ガラがあるなど若いダンサーの育成も行っている公演で、今回髙橋さんはワークショップの講師も務められます。これからダンサーを目指す方に対してのアドバイスはどのようなものがありますか?
他のダンサーをみたり、注意を素直に受け止めて、自分の向上につなげる事が大切です。バレエは、頭で理解しているだけでなく、身体で覚えることが必要なので、レッスンでは、100%集中し、リハーサルでも本番と思って取り組むことが大事です。
もちろん、バレエをやっている楽しさ、情熱を忘れずに持ち続けること、何でバレエをやっているのかという気持ちを忘れずにやっていただきたいです。
コロナ禍もあったため、残念ながらENBの来日公演が中止になってしまい、今回久しぶりに関東で踊る機会となりました。横浜バレエフェスティバルに来場するお客様へのメッセージをお願いいたします。
バレエ団の日本人ダンサーはもちろん、皆、日本公演を楽しみにしていたので、公演が中止になったのは、とても残念でした。
バレエをただ観るだけでなく、観て何かを感情的に感じるからこそ、芸術だと思います。だから、今回の公演でも、観客一人一人が何か心の底から感じてもらえると良いです。
今回、高橋さんの踊りを拝見できるのが本当に楽しみです! ありがとうございます。
【公演情報】
横浜バレエフェスティバル2023
前夜祭 2023年8月5日(土) 開催
本公演 2023年8月6日(日) 開催
INTRODUCTION
~バレエの“力”が”かながわ”へ集結!~
①若いダンサーと円熟したダンサーという、年齢や経験からくる表現の幅や厚みの違い。②「クラシックバレエの定番からなかなか見られないコンテンポラリーダンスまで」「古典から新作まで」などの、演目のバラエティー。
この2つの軸を1公演に盛り込みます。
芸術監督の遠藤康行が公演全体のディレクションをし、オープニングとフィナーレを創ることで、
ガラ公演でありながらも公演全体が一つのストーリーのように、さらには、一人の人間の一生のように感じられるよう、努めています。
公演を観ていただく方それぞれが、ご自身と重ね合わせて感じられる、そんな時間を提供いたします。
投稿日: 2023 年 8 月 4 日
カテゴリ: インタビュー, 公演プレビュー(レビュー), イベント