【PICKUPについて】

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PICK UP!

井上バレエ団『くるみ割人形』
源小織&阿部真央&西川知佳子インタビュー

井上バレエ団12月公演は恒例の『くるみ割人形』全2幕。芸術監督・関直人先生の振付けたファンタジックで美しい舞台は長きにわたって愛されています。今年は金平糖の精のダブル・キャストともに初役という新鮮な顔ぶれ。ティアゴ・ソアレスさん(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)、藤野暢央さんとそれぞれ組む源小織さん、阿部真央さんに意気ごみをうかがいました。また幼少から井上バレエ団公演で活躍し、今回2日間雪の女王を踊る西川知佳子さんに井上バレエ団の『くるみ割人形』の魅力を語っていただきました。

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家) インタビュー&リハーサル写真撮影:石川陽

 

金平糖の精を踊る源小織&阿部真央インタビュー

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源小織さん(写真左)、阿部真央さん(写真右)

配役を聞いた時の気持ちは?
 正直びっくりしました。7月公演で『コンセルヴァトワール』のエリザを踊らせていただきましたが幕物の真ん中は初めて。プレッシャーがないといったら嘘になります。周りの目もありますし踊りの面以外でも色々なことを考えないといけないのが大変です。
阿部 2年前に雪の女王を踊ることになっていましたが公演2週間前くらいに小指の疲労骨折をして降板しました。今回のお話は驚きました。2年間『くるみ』には出ておらずコンスタントに舞台に出ていた人たちがいるのに私でいいのかな?という思いもありました。

リハーサルはどのように進んでいますか?
 岡本佳津子先生に見ていただいています。頭の先からあしの先までの動き、顔の付け方など一つひとつに注意をいただく。最初に出てくる所から「はい、ストップ!」みたいな(笑)。1回目の稽古が終わった次の日は2人とも背中が痛かったです。
阿部 佳津子先生にマンツーマンで教わったことが無かったので緊張します。「舞台の時はこうなるから今から気を付けておきなさい」と細かいこともおっしゃってくださる。それも頭に入れつつ、でもやることがいっぱいあって……という葛藤があります。

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井上バレエ団の『くるみ割人形』への思い入れや魅力は?
 島田衣子さん(井上バレエ団のプリマとして活躍)が教室の先輩だったので小さな頃から毎年観ていました。井上の『くるみ』=『くるみ割り人形』なので、大きなスカートを履いたギゴーニュおばさんが出てこないバージョンを観るとエッ!?と(笑)。井上の『くるみ』は飽きないと思います。幕が下りた後のクリスマスソングまでお子さんも楽しめます。
阿部 私は盛岡出身です。上京して初めて『くるみ』全幕に出たのが井上の舞台でした。2幕のクララが出てくる所で女王も周りも皆一斉に出てきてお迎えしてあげる。温かい感じが好きですね。

井上バレエ団の『くるみ割人形』は毎年王子役が豪華なことでも知られます。源さんは英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ティアゴ・ソアレスさんと、阿部さんは香港やオーストラリアで活躍された実力者・藤野暢央さんとパートナーを組みます。
 ロンドンに2年間留学しロイヤル・バレエの公演に通い詰めました。ロイヤルのプリンシパルの方と踊れるのは嬉しいですね。リハーサルではバレエ団の荒井成也くんが組んでくれたりします。佳津子先生にはパートナーリングに関しても私が自分では見えない手の使い方とか肩が挙がっている所、音楽性、パートナーとの合わせ方を教わっています。
阿部 藤野さんは毎年井上の公演に出ていただいており定着しているので安心感があります。体の中の使い方とか呼吸の仕方とか音の合わせ方などパートナーとしてアドヴァイスしてくださいます。できないことが多くて難しいです。そればかり考えて踊ると金平糖の精らしさがなくなったりもするし、金平糖の精らしく踊ろうとすると言われたことができなかったりする。これから少しずつ一緒に高めていきたいと思います。

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お互いの踊りや性格をどう思いますか?
阿部 私は割と喋るのが苦手で大勢がいる中ではっきりと物が言えない時があります。でも小織ちゃんは外国に行っていたということもありコール・ド・バレエをやっていて皆がいる時でも「ココはこうです!」って言う。良くしようとして言っているので凄いなと思う。
 言っちゃうんです(笑)。
阿部 踊りに関しても私にはない凛とした感じを持っていて、それは、なかなか出せない。『白鳥の湖』のスペインなんかカッコいい感じの女性です。
 私は細くてスタイルのいい人が好きなのですが、入団時にレッスンを観ていて、まさに真央ちゃんがそんな感じでした。なんでも回れるし跳べる。卒なくすべてをこなすのが凄いなと。舞台でも練習と同じ感じでレベルを保って本番に持って行けているように見える。芯があります。『くるみ割人形』の花のワルツのソリストは、おっとりした雰囲気が真央ちゃんに合っていて好きでした。普段はポワッとしています(笑)。

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本番に向けての抱負をお願いします。
 お客様に私らしい金平糖の精が伝わる舞台になればと。ソアレスさんに迷惑がかからないように(笑)。本番前に来日する彼とのパートナーリングに集中しコミュニケーションが取れるように持っていけたらと思います。
阿部 まずは怪我をしないように。藤野さんと少しずつ金平糖の精の動きとイメージを膨らませたいです。お客様にワクワクしていただき「温かくて良かったね」と言って貰いたい。やれることを一生懸命やって怪我をせず当日を迎えたいです。

 

 

雪の女王を踊る西川知佳子インタビュー

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5歳で井上バレエ学園に入られました。『くるみ割人形』にはいつから出ていますか?
9歳、小学校3年生から出ています。受験の時も欠かさず出ました。クララの友達を2回演じてからフリッツの友達、兵隊、花のワルツ、雪の精を踊り、それから第2幕のディヴェルティスマンを踊りました。その後、雪の女王、金平糖の精を踊り、一昨年は両方を踊りました。客人とクララ、お母さん、トレパック以外は、ほぼすべてやりました。

学園生時代の『くるみ割人形』で印象に残っていることは?
最初にクララの友達を演じた時、お芝居は面白いけれども難しかったです。私には兄がいて男の子っぽく育ちました。クリスマスに人形をもらって嬉しいという子供ではなかったんです(笑)。剣を持って喜んでいるフリッツの友達をやりたかった。2年後に配役されて「ヤッター!」と(笑)。第1幕のパーティーの客人役は、大体その後に雪の精になって、第2幕では何らかのソリストを踊ります。「私のお母さん役はスペイン!」「私の母親は中国!」みたいに自分のお母さん役が何を踊るか自慢しあいました。憧れのお姉さんたちだったので楽屋でも衣裳のリボンを締めて貰ったりするのが嬉しかったです。昔はバレエ団員が少なく中学生くらいから雪の精や花のワルツを、高校生になると葦笛も踊りました。ゲストの王子役の方では、ロイド・リギンズさん、ブルース・サンソムさんが特に素敵でした。

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井上バレエ団の『くるみ割人形』の魅力とは?
ピーター・ファーマーの美術が綺麗だというのが一番にありますね。幕開きは特に。落ち着きがあってシンプルだからこそ、ご覧になる側が(想像を)足していけるのではないかと思います。井上バレエ団の『くるみ割人形』では、お客様がクララと一緒に旅をしていきます。目線が1つというかお客様がクララの気持ちになる感じ。子供の時は兵隊とネズミの戦うシーンとかがワクワクして好きでした。クララをやりたいと思ったことは無かったのですが、高校・大学生になって雪の場面で王子と初めて会う所を観て「ああ、いい役だな」と(笑)。お菓子の国のコーダで盛り上がって紗幕が下り、クララが王子様と別れ、再び紗幕が上がると、家のセットに戻っている……。夢なのに切なくなる気持ちを子供の頃には感じませんでしたが、大人になって胸がジンと痛くなる様な感動を覚えました。観るたびに、年齢を重ねるたびに感じ方が変わってくるのだと思います。

夏の公演ではブルノンヴィル作品等を上演していますが『くるみ割人形』は芸術監督の関直人先生の振付で毎年上演しているだけに、井上バレエ団のカラーが良く出ていますね。
うるさくないなと思うんです。舞台の空気や雰囲気が。サラッとしたシンプルな良さがある。関先生は日劇とかショーの世界で長く振り付けの仕事をされていることもありますし、先生ご自身の才能だと思うのですが、お客様が観るべき所を観るべき様に創られている。導線、目線の持っていき方が上手。そこが先生の凄さだなと。『くるみ割人形』でも毎年先生が直される箇所があります。最後、雪の女王とクララと王子がいて、お別れする場面の立ち位置に関して厳しく言われる。その場所でやると、お客様にきちんと伝わるのだと思います。

雪の女王役を踊る際に心がけていることを教えてください。
第1幕、客間から装置が転換し雪の国になって初めて本格的にトウシューズを履いたダンサーが踊るクラシック・バレエの場面が始まります。雪の女王は最初にパ・ド・ブレで登場します。そこを大事にしてほしいと岡本佳津子先生にいつも言われます。スーッと始まって踊り雪のイメージにつなげたい。雪の女王はクララの夢の中で最初に現れる女性だと思うんですよ。素敵だと思って貰えると話が盛り上がるなと。お菓子の国の前座じゃなくて1つの旅の場所だったと覚えていてほしい。「通り道に雪が降っていたね」じゃなくて(笑)。本で言えば雪の場面はお菓子の国と同じだけのページがあってほしい。

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今回初日にティアゴ・ソアレスさん、2日目に藤野暢央さんと踊ります。
相手の男性が2日間日替わりという経験は初めてです。同じリフトをしても違ったりするので不安もあるのですが、相手が変われば自分の気持ちも変わるし、振りは同じでも違う感じがするので楽しみです。藤野さんからは学ぶことがたくさんあります。以前、金平糖の精を踊らせていただいた時に組みました。リハーサルで一番最初にグラン・パ・ド・ドゥを通した時に「まあ、基本的には、やり易いかな」と言われて、その一言に支えられました。雪の女王でもリフトとかもありますが安心感があります。

今回の公演への抱負をお願いします。
5回目の雪の女王ですが「今まで成功させた所は絶対成功させたい!」みたいに自分でハードルを上げてしまう。自分で変えてやれとか、難しいことをしようという訳ではないですが変わって見えてほしい。もちろん安定感は無ければならないといけないと思うのですが、自然に出てくる変化はあってほしい。いい意味で自分の中で積み重なってきたものもあるので変わって見えたらいいなと。特別に何かをするのではなく今のベストを尽くせるように。お客様に「雪の場面が綺麗だったね」と思って帰路についていただきたいです。

 

[youtube http://www.youtube.com/watch?v=weFxAvgFjW4?rel=0&w=450&h=253]

 

 公演情報 

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【日時】
2014年12月13日(土) 午後6時45分開演(6時15分開場)
2014年12月14日(日) 午後3時開演(2時15分開場)
【場所】文京シビックホール 大ホール
【出演】井上バレエ団
【ゲスト出演】
ティアゴ・ソアレス(ロイヤルバレエ団プリンシパル)
藤野暢央

井上バレエ団ホームページ  http://inoueballet.net/

 

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