横浜バレエフェスティバル2018

【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
ご期待ください!

PICK UP!

島﨑徹/ヤン・ヌイッツ/吉野勝恵 インタビュー
 ~第6回 アトリエヨシノ バレエセミナーにて~

衣裳レンタルで有名なアトリエヨシノは、さまざまなイベントも展開している。その中の一つがバレエセミナーで、講師陣は超一流。しかも高校生以上の受講生の中からサマースクール、留学のスカラシップが選抜されるということもあり、毎回多くの生徒が参加している。
今回、このバレエセミナーを拝見させていただき、講師そして吉野社長にインタビューもさせていただいた。

中学生クラス 島﨑徹 コンテンポラリー入門
バーを使ってのコンテンポラリーエクササイズ。プリエ、スローバットマンタンジュ、早いタンジュ、ジュテ、ロンドゥジャンブパールテール(フォンジュを含む)、グランバットマンまでを行う。まずは島﨑氏が見本を見せ、あとは参加者が確認をする。順番が複雑なものは何度も何度も繰り返す。
島﨑流の身体の構造にかなったレッスンは、とてもわかりやすい説明で引き込まれる。例えば、腕のアラスゴンドポジションの時
「○○ちゃんが大きな木に抱きついたとする。この木なんの木、気になる気になる~♪指先で木にマークをつけよう。一日後にはもっと先に印をつける気持ちで抱きつく。そうしたら○○ちゃんの木はね…ここから~ここまで」
と、広いスタジオを大きく駆け巡りながら腕の説明をする。参加者全員が空間の中に自分の木を発見できるのだ。身体の細部にいたるところまで注意は及ぶ。踊りは生身の人間が表現するからなのだ。
動きが自然に流れているので、まるで小さな作品を観ているようで、楽しくいきいきと受講をする参加者の表情が印象的だった。

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~ 島﨑 徹 氏にインタビュー ~
Q.現在コンテンポラリーは、以前と比べてポピュラーになりましたね。
A.帰国して20年経ちますが、そのころに比べれば垣根が低くなりました。振付をしていて思うのですが、今の子供達には順応性がありますし、各教室の先生方がコンテンポラリーの重要性を感じていることや、コンクールの審査にもコンテンポラリーが入るようになりましたからね。
Q.クラシックバレエをしていると、コンテンポラリーの動きが難しく固まってしまう場合もあるように感じます。
A.日本人の気質がクラシックバレエと出会って起こってしまった弊害なのかと思います。
「膝の裏を伸ばしなさい」とただ言うのではなく、正しく伸ばす方法を教えてあげれば、固まるということはないと思うのですが、バレエをすることによって身体運動能力が低下するのであれば普通の遊びをしていた方が良いということになってしまう訳ですから。

「15年バレエやってきました。その結果、外にしか足を向けられず膝を伸ばすことしかできません」ということになってしまうのであれば、習得したバレエの知識がその子を不自由にさせてしまったということですから。15年バレエをやってきたから、内にでも外にでもどうにでも足を動かせるようになったということこそが価値があることなんですよね。
クラシックバレエは、やはり体型で決まってくるので3歳の子供の時点で、向き不向きが大体わかる。ロシアみたいに選ばれた人たちがクラシックでガチッと固めても、バレエ向きの身体なら固くならないんですよ。バレエ向きではない人が、型を作ろうとすると固まって困難になっていくんですよね。ただ、バレエを通して人間的に成長するというのは、もちろんいいことなんです。

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Q.島﨑先生のレッスンは、見ているだけでこちらも動きたくなる自然な動きですね。
A.あはは(笑)神戸女学院大学で教えていて、ご父兄からよく言われます(笑)。僕の動きが心地よい自然の流れに逆らわない、オーガニックレッスンだと。
Q.2日間という短い時間ですが、参加者に伝えたいことは。
A.踊りというのは、基本的に外から変わるものではなく内から変わっていくものだと思うのです。テクニックも、有名なこの先生についたから1日でこんなにできるようになりました、なんてことはない。僕ができるのは、彼らのアイデア、考え方を変えること。その中の一つが美意識を広げること。バレエダンサーにとってコンテンポラリーがなぜ難しいと思われるのかというと、バレエの形だけが美しいと思っているから。コンテンポラリーの美を理解することが、できることにつながるわけです。
踊りは社会を反映するものです。人間がやっていることだから。僕は海外のバレエ団に教えに行くことがあるけど、10時から1時間半の稽古をして11時45分からのリハーサルまでの15分間にダンサーたちがやることは決まっている。みんなピルエットの練習。なぜかっていうとピルエットだけが数字に置き換えられるから。資本主義社会が舞踊を汚染している。いつも思うんだけど。舞踊のステップが人ならばすごい差別だよね?ピルエットばかり大事にされて。いつかパドゥブレに復讐されるよって。

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Q.参加者が気づいて意識が広がれるといいですね。
A.理解したって、そんなに簡単にはできない。彼らが理解したことを持ち帰って、それに執着して自分が変わるまでやるかということです。
Q.とても興味深いお話しありがとうございました。もっともっとお話が聞きたいです(笑)
A.神戸女学院大学で教えてますので、ぜひ来てください(笑)

 

中学生クラス ヤン・ヌイッツ クラッシックバレエ
通訳付きでのレッスン。要所では日本語で注意点を指示してくれるので、距離感はまったく感じない。そしてリズムをとる大きな声がスタジオに響きわたる。また、身体が口ずさむようにコンビネーションを動けばいいことにも気づかされる。今回のヤン・ヌイッツ先生の90分のクラスの大半は念入りなバーレッスン。先生のクラスは身体の解剖学的なアプローチによるものであるという事で、教師からも人気があるが、実際、センターレッスンでアッサンブレをする為の準備として、バーレッスンから骨盤の状態を意識させられるようなレッスン内容があり、クラス中、先生の大きな声に乗せられて、全員が笑顔で積極的にレッスンしていた姿が印象的だった。

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~ ヤン・ヌイッツ氏にインタビュー ~
Q.ヤン・ヌイッツ先生のお名前は日本でとてもよく知られており、ワークショップなどのレッスンを受けた生徒さんも数多くいると思いますが、日本で教え始めてどのくらいになりますか?
A.27年前から日本でも仕事をしています。今年度まで島﨑先生と一緒に神戸女学院で教えていましたが、4月からは貞松浜田バレエ団で仕事をすることになっています。
Q.27年の間に日本の生徒は変わりましたか?
A.体型は身長も高く手足も長くなり、だいぶ変わっていきましたね。
メンタリティは変わっていません。心を開いて私の話を聞いてくれて、とてもまじめで一生懸命です。教えていて問題を感じたことはないです。教えやすいですよ。昔は教育を受けるということに力が入りすぎて内にこもるような感覚を受けましたが、いい意味で最近は本当に力が抜けてきているように思います。昔は、何を思っているか表情から読み取りづらかったけれど、今はわかりますね。男の子は昔も今もわかりやすいですが(笑)。

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Q.日本にはかなりの数のコンクールが存在しており、年齢の低い子供達がコンクールのために難しいステップや大人の踊りを練習する現状についてはどう思いますか?
A.身体が未完成の状態でバリエーションを強要するということや、子供達の成長段階でテクニックを詰め込むのは、あまり良いことだとは思いません。
バレエが好きだから7歳の子供にトウシューズを履かせることにつながらないし、バレエが好きだから大人のバリエーションを踊るということにはつながらないですからね。バレエが好きなのか、高いテクニックが好きなのか…ですね。バレエなのか、アクロバティックなスポーツなのか考える必要があるでしょう。子供達には、大人が表現するような成熟はまだ持ち合わせていないですから。バレエを開拓していこうとする人々も見誤ってはいけないところだと思います。
Q.これからバレエを学んでいこうとする生徒達に何かアドバイスをお願いします。
A.私が教えた生徒達は、気持ちを開いて正面からぶつかってきてくれています。反発しないで、今のままでいてほしいと思います。心を開くということは、成長を続ける上で重要なことです。

 

アトリエヨシノ 吉野勝恵代表取締役に聞く今後のアトリエヨシノの展開
Q.大好評のセミナーは、今回で6回目となりました。
A.ありがとうございます。島﨑徹先生もヤン・ヌイッツ先生も頂点の先生だと私は思っているので、毎回お願いしています。
夏は、たくさんのコンクールがあって私たちもレンタル衣裳が一番の繁忙期なので、いつもこの時期に開催しています。セミナー参加者の中から海外へ留学できるスカラシップもあって、毎回約3名を先生方に選んで頂いています。毎月600着ほど新しい衣裳が生まれるのですが、そうするとまだ使用できるのに廃棄しなくてはいけない衣裳が出てきます。外のバレエスクールは、衣裳を持っているところが少ないので、これを外国のバレエスクールに無償で提供していて、このようなつながりの留学制度ができたのです。

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Q.バレエナビで取材に伺うのは2度目です。前回は2013年3月に吉野社長にアトリエヨシノの創設のきっかけなどをお聞きしたのですが、1年経って新しい今後の展開などはありますか?
A.今年度、文化事業部を立ち上げました。イベントをとりまとめていく部署です。ただ、これは一時的なものではなく継続的にやっていかないと意味がないと思っています。
日本初来日のオーストリアのメルビッシュ湖上音楽祭という世界各国から沢山の方が訪れるイベントがあるのですが、相模湖でも『さがみ湖バレエフェスティバル2015』と名付けた沢山の方にこの相模原市に来ていただけるような企画を計画しています。演目などもかなり具体的になってきていて、例えば、東シベリアに位置するロシア・ブリアート共和国のウランラデで芸術監督をしている岩田守弘氏振付のウランラデバレエ団『白鳥の湖』などは、彼の凱旋公演として、みんなが観たいと思うのではないでしょうか?他には、3.11の震災で実現できなかったワシントンバレエスクールと日本の子供達によるコラボレーション『くるみ割り人形』の野外公演や、子供の為の全幕『不思議の国のアリス』『人魚姫』『ピーターパン』、島﨑氏によるコンテンポラリーの作品なども考えています。
3000人規模の『さがみ湖バレエフェスティバル2015』を開催したいと考えているのですが、オーディションをして日本各地のバレエスクールパフォーマンスなども面白いですね。バレエ愛好家だけでなく一般の人々にもバレエという芸術に触れてもらいたいのです。子供達も大人も気軽な感覚で野外バレエを味わっていただけたら最高です!
このような企画も莫大な労力・時間・費用が掛かるのですが、1人1人の小さな力も終結すれば素晴らしいものが生まれてきますし、これからも様々なアイデアでバレエ界へ恩返しをしていきたいと思っています。

 

記事:小林知恵
写真:小山薫
取材協力:アトリエヨシノ http://www.atelier-yoshino.com/

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