【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
ご期待ください!

PICK UP!

神奈川県民ホール主催・東京バレエ団<ウィンター・ガラ>プレビュー
~ベジャール&ロビンズの名作を一夕で楽しめる極上のトリプル・ビル!

文:高橋森彦(舞踊評論家)

ひと口にバレエ作品といってもスタイルや内容はさまざま。古典バレエや物語バレエの全幕物から現代的・今日的なコンテンポラリー・ダンスに分類される尖った作品まで多彩だ。そんななか20世紀後半に生まれた作品には新鮮であり続け古典足りうる名作が少なくない。神奈川県民ホールで行われる東京バレエ団<ウィンター・ガラ>は、20世紀の巨匠による名作を配した見ごたえ充分のトリプル・ビルである。

まず注目したいのがモーリス・ベジャールの『ボレロ』(1961年初演)の主役“メロディ”を不動のプリンシパル上野水香が踊ること。“リズム”と呼ばれる群舞を背に赤い円卓の上で踊る“メロディ”を演じることを許された人は一握りだ。ラヴェルの同じ旋律を変奏しながら反復する音楽とともに飾り気のない衣裳姿で踊り、振付もバレエの基本動作を中心に組み立てられているけれども、踊り手のキャラクターや解釈によって趣を異にする。
上野は2004年以来“メロディ”を国内外で踊り、そのたびに新鮮な感動を観るものにもたらしてきたが、神奈川県民ホールで披露するのは意外にも初めてだという。鎌倉出身で「かながわ観光親善大使」でもあり、小さな頃から舞台経験を重ね、自身のプロデュース公演も実施した劇場で同役を踊ることには格別の思いがあるはず。同ホールの広大な舞台空間で何を感じ、何を思いながら踊るのであろうか。上野だけが描くことのできるドラマが立ち上がるに違いない。

KH1_7969_photo_Kiyonori+Hasegawa
『ボレロ』(C)Kiyonori Hasegawa

ベジャールの『中国の不思議な役人』(1992年初演)は、バルトークがパントマイム劇のために書いた音楽にフリッツ・ラング監督のノワール映画の世界を融合させた異色作で、暗黒街を舞台に無頼漢たちや“娘”が登場する。“娘”を男性、娘が襲う“若い男”を女性が演じるなどエロティックで濃密な世界にどっぷり浸ることができる。無頼漢たちに襲われてもなかなか死なない中国の役人を当たり役とするベテラン・木村和夫の演技で観ることができ、無頼漢の首領を柄本弾、“娘“を宮川新大という実力者が演じるのが楽しみだ。

04-no.331 Mandarin-Kazuo Kimura(Mandarin)photo_Kiyonori Hasegawa
『中国の不思議な役人』(C)Kiyonori Hasegawa

新たに東京バレエ団のレパートリーに入る『イン・ザ・ナイト』(1970年初演)は、「ウエスト・サイド・ストーリー」などのミュージカルの振付でも知られるジェローム・ロビンズがショパンのノクターンに振付した佳作である。3組の男女の愛の機微が美しく味わい深いタッチによって浮き彫りになり、東京バレエ団の新生面が引き出されるだろう。

12-04_WSB_In the Night_KH2_0528(photo_Kiyonori Hasegawa)
『イン・ザ・ナイト』(C)Kiyonori Hasegawa

2月末の土曜日の午後、神奈川県民ホールで極上のバレエを満喫されてはいかがだろうか。

 

★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★

無題

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>
The Tokyo Ballet

公演日時: 2017年02月25日(土)   開演:15:00 (14:15開場)

ベジャールが認めた美しき女神、上野水香が魅せる圧巻の「ボレロ」ほか、
20世紀を代表する2人の偉大な振付家、モーリス・ベジャールとジェローム・ロビンズの傑作を一挙上演!
パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座、ボリショイ劇場・・・
世界のバレエファンを魅了する国内最高峰のバレエ団が贈る、冬の祭典。

プログラムと主な配役

「ボレロ」
メロディ:上野水香
リズム:東京バレエ団

「中国の不思議な役人」
首領:柄本弾
娘:宮川新大
中国の役人:木村和夫
ジークフリート:森川茉央
若い男:伝田陽美

「イン・ザ・ナイト」
沖香菜子―秋元康臣
崔美実―ブラウリオ・アルバレス
川島麻実子―柄本弾
ピアノ演奏:松木慶子
※音楽は「イン・ザ・ナイト」のみピアノ演奏、他は特別録音による音源を使用します。

公演詳細はこちら⇒ http://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=34615