Interview

Vol.2

坂東祐子

NPO法人バー・アスティエ協会理事(神奈川県/鎌倉市)

「バー・オ・ソル」というバレエをご存じですか? これは床に寝たり、座って踊るバレエのことで、フランスではとてもポピュラーなエクササイズ。今日は、そのバー・オ・ソルのオリジナルメソッド「バー・アスティエ」を日本で普及されている坂東祐子先生を訪ねました。

バレエ留学でフランスへ

まず、バレエから、「バー・アスティエ」に出会うまでを教えて下さい。

クラシックバレエを4歳から習いごととしてはじめました。はじめは嫌々だったのですが、中学二年のときにジョルジュ・ドンの踊る『ボレロ』を観たことなどがバレエに憧れるきっかけになりましたね。先生は「芸術に順位はつけられない」というお考えだったので、コンクールの経験はなく、好きでバレエを続けていました。19歳のときに、フランスのリヨンに留学する機会に恵まれて、そこでいろいろなレッスンを受ける中で出会ったのがバー・オ・ソルのレッスンを行うアラン・アスティエ先生でした。

「バー・オ・ソル」とは?

このバー・オ・ソルというエクササイズは、日本ではなじみがありません。 少し詳しく教えていただけますか?

このバー・オ・ソルというのは、床に寝る・座る状態でバレエを行うエクササイズのひとつです。プロのダンサーだけでなく、バレエ未経験者の方や、音楽家やスポーツ選手など、誰でもジャンルを問わず、はじめられるのがいいですね。フランスでは職場のお昼休みにもレッスンへ通ったり、日本のヨガやピラティスみたいにとてもポピュラーなエクササイズなんですよ。

エクササイズということは、何か効果が期待できるのですか?

効果は、たくさんあります。バレエダンサーであれば、可動域が変わったり、動きが柔らかくなったり…。動きの質が変わってきた、ということもありますね。立っているのとは違い、床での運動は身体のバランスを感じやすく、生徒さんからは「肩こりが治った」「腰痛が治った」という声もよく聞きます。バレエのようにある理想の完成品をめざしていくのではなく、その人本来の身体の可能性をひろげていくことに特徴があります。私の普及している「バー・アスティエ」は、このバー・オ・ソルを元にアラン・アスティエ先生が解剖学に基づいて構成させたエクササイズです。

「バー・アスティエを広めたい」

「バー・アスティエ」をはじめたアラン・ アスティエ先生はどんな方なんですか?

アスティエ先生は、パリのコンセルヴァトワール(フランス国立舞踊学校)を首席で卒業したにもかかわらず、身長が低いせいで一時はバレエダンサーを諦め、バレエ以外の仕事のアルバイトを転々とした経験もある苦労人なのです。紆余曲折を経て、自身のコンプレックスを克
服したあとはリヨン・オペラ座など次々とヨーロッパのバレエカンパニーでソリストを務められたのですが。その経験もあって人がもつコンプレックスもよくわかる方で、内面的なことをとても重視するんですね。ですからバー・アスティエは、単なるエクササイズにとどまらず、自分自身と対話することをとても大切にしています。私もレッスンの中で、生徒さんが、その人にしかない美しさや可能性を発見するサポートができたとき、とても嬉しいですね。

どうしてNPO法人を作られたのですか?

このバー・アスティエは、プロのバレエダンサーに限らず、老若男女すべての人が参加でき心身に効果のあるセラピーなので、日本に広めていきたいと思い、2009年にNPO法人にしました。ちょうどバー・アスティエメソッドの講師の1期生が誕生したところで、今、2期生を募集中です。日本でもフランスのようにこのバー・アスティエのエクササイズが日常の光景になることが夢ですね。
ご興味をお持ちになったら、バー・アスティエのサイト(http://www.barreastie.jp/)からお問い合わせくださいね。まずは体験レッスンにご参加されることをお勧めします。

最後に、バレエ以外にお好きなことはありますか?

いろんなジャンルの方にお会いする機会が多くなったので、狂言や日舞など日本の伝統芸術の公演も観るようになりました。バレエもクラシックだけでなく、ピナ・バウシュのように新しいジャンルの作品にも目を向けたいなと思っています。

本日はどうもありがとうございました!

取材当日に、レッスンも拝見させていただきましたが、坂東先生の気さくで明るいお人柄のとても楽しいレッスンでした。バレエダンサーにバレエ未経験の方が混じっても、同じレッスンをされるとのこと。誰もが参加でき効果を実感できる「バー・アスティエ」は、これからさらに人気が出てきそうです(松本)。

表参道のカフェにて

取材/文 松本宗雄

坂東祐子

4歳よりバレエを始める。谷桃子バレエ団出身辨官雉枝に師事。
オリガ・サファイヤバレエコンサートにてデビュー。
以後、クラシック、モダン、ミュージカルなど幅広いジャンルの舞台に出演。
元20世紀バレエ団(現ベジャールバレエローザンヌ)団員故・升田道子に師事。
イブ・ブリュースタイルのレッスンを受ける。
1991年より渡仏。クラシックバレエ、バー・オ・ソルを学ぶ。リヨンにてアラン・アスティエに師事。
アスティエ氏によるオリジナルメソッドのバー・オ・ソル“バー・アスティエ”を継承。
1996年より毎年「アラン・アスティエ講習会」を日本にて企画開催する。
2009年1月にバー・アスティエの普及を目指し「NPO法人バー・アスティエ協会」設立。
バー・アスティエ協会理事長を務める。バー・アスティエ協会公認講師。

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