親子で楽しむ夏休みバレエまつり

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神奈川県民ホール40周年
~バレエ・ダンスの歴史とともに~

1975年に横浜・山下町に誕生し、今年で開館40周年の節目を迎えた神奈川県民ホール。日本はもちろん海外の一流カンパニーも数多く来日するなど、神奈川きってのダンスの殿堂として長く親しまれてきました。ホールが歩んできた40年の歴史、そしてこの先目指すものとは……? 神奈川県民ホール副館長の永井健一さん、プロデューサーの赤江直美さん、広報の松尾洋介さんにお話を伺いました。

インタビュー・記事:小野寺悦子

2014年 建物外観

 

 

今年40周年を迎えた神奈川県民ホール。開館時の時代背景にはどのようなものがあったのでしょう?

永井:もともと横浜は芝居が盛んな土地で、戦前の伊勢佐木町には芝居小屋が20軒ほどずらっと並んでいたそうです。一方現在の山手、山下町には外国人居留地があり、ゲーテ座をはじめとした劇場でバレエやオペラが上演されていた。芝居の街として栄えると同時に、居留地を中心に西洋の芸術が入ってきた歴史があります。
しかし、横浜大空襲で一面焼け野原になってしまった。その後神奈川県立音楽堂や青少年センターができましたが、コンサートホールや演劇用の劇場という位置付けで、本格的な全幕ものバレエを観るにはNHKホールや東京文化会館まで行かざるをえませんでした。1975年に神奈川県民ホールができ、ようやく横浜でバレエやオペラを完全な形で観ることができるようになった。これは、神奈川県民にとって非常に喜ばしいことでした。
こけら落としは歌舞伎で、開館記念行事の一貫として神奈川県芸術舞踊協会の『モダン&バレエ』が上演されています。そこから県民ホールの舞踊の歴史が始まりました。以来40年間でバレエやダンスの公演を約680回行っており、120万人を越える方々が県民ホールで舞台を観ていることになります。

1975年 開館当時 航空写真
1975年 開館当時 航空写真

 

赤江:鎌倉を拠点にバレエを広めたエリアナ・パヴロバは、かつて山手にあったゲーテ座や近隣のホテルで踊っていたこともあり、このあたりも昔から舞踊の土壌がありました。
その後も神奈川は日本のバレエ発祥の地として多くのバレリーナ、教師が育ち、現在では海外へも羽ばたいています。
日本のトップバレリーナのひとりである森下洋子さんもかつては神奈川(横須賀)で教え、近年では斎藤友佳理さんもご自身の手でここ神奈川にて教えをされています。
また、県内の音楽大学にもバレエコースが併設され、バレエ団直轄の教室も近年いくつか新設されています。
彼らの子供たちがまたバレエを始め、そしてバレエを観るために県民ホールへと来場する。過去から現在に至るこれらの時間が神奈川県のバレエ人口を増やし、バレエ熱が着実に受け継がれているのを感じます。

松尾:総務省の調査で、神奈川はバレエやダンスを実践している人口の割合が日本で一番多いことがわかっています。鎌倉でパヴロバが教室を始めた土壌があり、そこに県民ホールができて公演が増えたことで、バレエ熱に拍車がかかっていったんですね。

開館当初はどのような公演が催されていたのでしょう。

永井:まず開館した1975年にボリショイ・バレエ団とトビリシ・バレエ団が合同公演を行い、続いて英国ロイヤル・バレエ団が、翌年にはモスクワ芸術劇場バレエとレニングラード国立バレエが来日しています。さらに78年にはモーリス・ベジャールの20世紀バレエ団が、その後もパリ・オペラ座バレエ団、ベルリン国立歌劇場バレエ団と、名門バレエ団の来日が続いています。これは何故かというと、横浜港に隣接しているという理由が大きい。ここで荷下ろしをしてツアーの初日を飾り、それから東京に入るという流れです。県民ホールとしても、例えば数日間バレエ団に劇場を貸して作業にあててもらう代わりに、滞在中一晩は公演を行うよう交渉するなど、誘致面での努力がありました。

松尾:加えて、県民ホールが国内屈指の舞台機構を持っていたという点も理由のひとつだと思います。ヨーロッパの劇場はたいてい舞台に奥行きがあってタッパ(高さ)が高く、舞台セットもそれに合わせて作られている。当時は対応できる劇場は数えられるほどで、東京文化会館、NHKホール、大阪のフェスティバルホールくらいでした。そこに県民ホールが加わった。横浜港で荷下ろしをして県民ホールで公演をするというのは、やはり自然な流れだったのでしょうね。

永井:日本のバレエ団に目を向けると、1976年には東京バレエ団が、続いて牧阿佐美バレヱ団、谷桃子バレエ団、松山バレエ団と、国内の主要バレエ団が公演を行っています。また日本バレエフェスティバルを第五回から第十回まで誘致していますが、これもバレエ鑑賞者を増やすひとつの起爆剤になりました。さらに94年には神奈川芸術フェスティバルがスタートしています。前身は県が主催していた神奈川芸術祭で、94年に運営が財団に移ったのを機に、メイン事業として立ち上げました。神奈川芸術祭はアマチュアまで裾野を広げていましたが、より専門的な芸術振興を目指そうということで、神奈川芸術フェスティバルはプロに特化しています。以来毎年開催を繰り返し、今年で22回目を迎えます。

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バレエのほか、モダンやコンテンポラリーダンス作品も幅広く手がけてきました。

永井:古典はもちろんモダンやコンテンポラリーダンスまで網羅しているのも県民ホールの特徴と言えるでしょう。70年代からすでに神奈川芸術舞踊協会をはじめとしたモダンの公演を手がけ、以降アルビン・エイリーなど海外のカンパニーも度々来日公演を行っています。

松尾:コンテンポラリー系の自主事業では初来日のカンパニーを多く紹介してきました。インバル・ピントやナチョ・ドゥアト時代のスペイン国立ダンスカンパニーなどもそう。また2003年に上演したフィリップ・ドゥクフレの『イリス』は日本でのレジデンス作品で、県民ホールで世界初演を迎えた後、ヨーロッパ各地をツアーしパリでは1ヶ月以上のロングランを記録しています。

永井:芸術総監督の一柳慧がジャンルを超えたコラボレーションに興味を持っていて、例えば美術とダンスを融合させるなど、実験作にも積極的に取り組んでいます。そうしたスタジオ的な作品はギャラリーを使う場合もあります。

赤江:一柳は師のジョン・ケージとともに、かつてマース・カニングハムのカンパニーでピアニストをしていたこともあり、ダンスが大好き。なかでも『時の庭』(2010年)は非常に気に入っていたようです。この作品が縁で、中村恩恵さんや首藤康之さんとも強い絆ができた。1月に小ホールで上演した中村恩恵振付作『水炎伝説』などは、ダンスとオペラが融合した典型的な作品ですね。

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今年3月には青山劇場が、9月にはゆうぽうとが閉館を迎えるなど、劇場の閉鎖が相次いでいます。いわゆる劇場閉鎖問題についてどのように考えていますか?

永井:非常に難しい問題ですね。戦後の社会インフラで建てられた公共施設が40年ほど経ち、一気に改修の時期を迎えている。けれど財政的に難しい面も多く、どの自治体も対策に悩んでいます。
劇場の閉鎖は深刻な問題です。過去の歴史を見ても、劇場がなくなることで文化が途絶えているんです。かつて横浜ではゲーテ座が西洋作品の拠点になっていましたが、関東大震災で閉鎖された後は復興しなかった。空襲で芝居小屋が閉まったら、大衆芸能が途絶えてしまった。県民ホールも含めて、閉鎖する劇場の分まで他の劇場が支えていかなければならないけれど……。いずれにせよ岐路に立たされている。どう運営していくかというのは、各劇場の大きな課題です。
県民ホールはあくまでも公共劇場として、貸し館と主催公演の二つの軸で芸術振興を行っていく方針です。その上で使命が大きくふたつあると考えていて、ひとつは質の高い古典作品を観せること。ふたつ目は、コンテンポラリーダンスのような新しい表現に挑む作品を創造していくこと。新しいことだけでも古いことだけでもダメで、両方欠かさずやっていくことが大切だと思っています。

赤江:さらに、今後は子供や学生を開拓していきたいと考えています。例えば5月に東京バレエ団の『子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」』を上演しますが、オーケストラ付きで子供1,000円に設定するなど、バレエに触れやすい環境を作っています。
地元出身の東京バレエ団の斎藤友佳理さん(第63回神奈川文化賞)、上野水香さん(第50回神奈川文化賞未来賞、かながわ観光親善大使)ともに、小さな頃からここで舞台を観て、いつかここで踊りたいと願い夢が叶ったと言います。
加えて、斎藤友佳理さんは再起不能といわれた怪我の復帰公演(98年)もここ県民ホールでした。プロのダンサーにも思い入れの強い方が多く、県民ホールと共に舞踊の歴史がある。子供たちに観せることで、バレエ人口が少しでも増えたらという願いがあります。

上野水香「ジュエルズ・フロム・ミズカ」
撮影:長谷川清徳  上野水香「ジュエルズ・フロム・ミズカ」

松尾:県民ホールは全国の公立劇場の中でも稼働率が群を抜いて高いのも特徴です。築40年が経ち各地に劇場ができた今も、県民ホールに来てくださる。昨年リニューアルをして、耐震面も含めてより安全になりました。また我々スタッフも接遇の研修を受けるなど、ご来場いただいた方ひとりひとりに少しでも良い思い出を作ってもらえる場所でありたいというのは、常に感じているところです。

永井:神奈川県の中核施設として、芸術振興を行っていく。それは今も昔も変わらぬ県民ホールの大きな役目です。今後も神奈川県のフラッグシップという立場から、横浜を拠点に舞台芸術の素晴らしさを発信していきたいと思っています。

 

★ ☆ ★ 公演情報 ★ ☆ ★

2012仮チラシ2出稿用
※このチラシ画像はクリックで拡大します

【公演名】
神奈川県民ホールオープンシアター2015
東京バレエ団 子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」
【会場】 神奈川県民ホール大ホール
【日時】 2015/5/31(日)11:30/15:00
【料金】
全席指定:子ども(4歳~中学生)1,000円
親子(一般1枚+子ども1枚)2,500円
一般(高校生以上)2,000円
【WEB】 http://www.kanagawa-kenminhall.com/OT2015/

 

大ホール客席20140623

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