【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
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PICK UP!

湯浅永麻(元ネザーランド・ダンス・シアター)インタビュー
~「出会い」を大切に日々歩んでいきたい/「横浜バレエフェスティバル2017」出演~

現代のダンスシーンをリードする振付家とのクリエーションを重ね世界的に活躍されている湯浅永麻さんが、6月9日(金)、10日(土)に神奈川県民ホールで行われる「横浜バレエフェスティバル2017」に出演します。湯浅さんにプロフェッショナル・ダンサーとしての軌跡や現在の関心、今後の展望をうかがいました。

取材:高橋森彦(舞踊評論家)

――モナコのプリンセス・グレース・アカデミー卒業後、フランス、ドイツのカンパニーを経てネザーランド・ダンス・カンパニー(NDT)で活躍されました。NDTに入られた経緯とカンパニーでの活動について教えてください。
やはりイリ・キリアン(1978~99年にNDT芸術監督を務め2010年まで常任振付家)の存在です。彼と一緒に創作し、彼の人間性に触れることは大変貴重な体験です。またダンサーも個性的で、吸収することはとにかく多かったです。NDT2 (若手カンパニー)2年間は、皆若いのですごいエネルギーで、同時に仲がとても良かったです。当時はまだNDT3が存在し、NDT2とNDT3は一緒にツアーをしていたので、熟練の彼らからも学ぶことが多い素晴らしい時間でした。NDT2での仲間には、小尻健太くん(尻の正式な表記は「尸に丸」)や、パリのオペラ座や他のカンパニーに振り付けているアレクサンダー・エックマン、イバン・ペレツが一緒でした。NDT1(中核となるカンパニー)では多くの振付家との仕事に恵まれ、ツアーが多く、いろんな国に行き、ダンサーや裏方さんたちとの仲もより深まりました。スタイルというものは、その時々の振付家によって大きく変わりますが、特筆して言えるのは、ダンサーの結束が強いということですね。
ソリスト、コールドバレエなど、ヒエラルキーがないことが影響していると思います。

――NDTで踊った作品で思い出深いものを挙げていただけますでしょうか。
とても難しい質問ですね。素晴らしい作品が多すぎて……(笑)。
NDT2に入ってすぐに配役された『27’52”』はキリアンの作品の中でも特に好きです。でも彼の作品は全て。イリはどんなに個人的なコンセプトであってもそれをダンスで普遍化する人で、誰の心にも訴える力を持つ作品を作るのです。ですから、何度観ても、何度踊っても、その人の人生経験によって感じることが常にある。
クリスタル・パイトの作品もすべて好きですが、『PARADE』では残酷な真実をアイロニックに伝えていて彼女の才能と人柄にはいつもインスパイアされます。フォーサイスの『Of Any If And』は大変テクニカルなのですが、舞台上で無限な自由を感じた感動的なデュエットでした。マッツの『Sleeping Beauty』は1人の役を生きるとういう点と、NDTのダンサーの暖かいサポートを感じられた大切な作品です。私の退団公演のピーピング・トムの『Missing Door&Lost Room』は演劇面が多くとても面白かったです。


イリ・キリアン『27’52”』copyright Joris-Jan Bos


クリスタル・パイト『Parade』copyright Joris-Jan Bos


イリ・キリアン『Bella Figura』


マッツ・エック『Sleeping Beauty』リハーサル copyright Joris-Jan Bos


Peeping Tom 『Missing Door』copyright Joris-Jan Bos

――NDTを退団しフリーランスになろうと思われたのはなぜですか?
11年半いて大変幸せだったのですが、キリアンの不在とカンパニーが変わっていくのを感じて、視野を広げたくなりました。監督は寛大に外でのプロジェクトをさせてくれる時間を何度も許してくれましたが、居心地の良いソファに沈んでいく予感がして最終的にやめさせていただきました。

――フリーランスになられてからも世界各地で活動されています。イスラエルの新進気鋭振付家イダン・ シャラビさんのグループ、渡辺レイさんのプロジェクトOptoに参加され、シディ・ラルビ・シェルカウイ率いるEASTMANに加わって新版オペラ『Les Indes Galantes』に出られています。これらのクリエーションに参加されての印象を教えてください。
イダン、レイさんとはNDTで知り合い、縁あって一緒にプロジェクトをさせていただいております。イダンは若いですがとても才能のあるダンサー/振付家で自分を再発見させてくれました、日本公演ぜひ実現させたいですね。レイさんのOptoでは10月に日本での公演をします。レイさん、小尻健太くんと一緒に日本でこれからたくさんの公演を目指しています。
ラルビは、私のNDT退団公演を観に来ていて、公演後に一緒に仕事を、とオファーしてくれました。実は昨日ラルビの新版オペラ『サティアグラハ』の初日でした。彼のクリエーションはとてもハードです。ジャンルの違うダンサーとのコラボはとても刺激的で、それぞれ違う思考、アイディアをシェアすることは、ぶつかりもあり簡単ではありませんが、人として学ぶことが多く、彼の作品でよくテーマとしている認め合い、共存することをスタジオで常に感じます。ダンサーとの繋がりはとても深く出会いにはとても感謝しています。


Opto『REEN』


シディ・ラルビ・シェルカウイ『サティアグラハ』 copyright Sandra Then

――岡山県の犬島での野外作品や弦楽四重奏団クロノス・クァルテットからのオファー、NDTの夏期講習などで振付もされています。また2016年の「さいたまトリエンナーレ」にてアムステルダム在住の向井山朋子さんのインスタレーション『HOME』に出演されました。そういった活動についてと今後やっていきたいこと・展望を教えてください。
とりあえずはマッツの『Juliet&Romeo』の再演があります。Kronos Quartetのリーダーのデイビッドとは近いうちにまた一緒に仕事をしようと話していて、向井山朋子さんの『HOME』は再演していきますし、また新作も楽しみです。今後は、ラルビのEASTMAN、Opto、イダンや向井山さんももちろんですが、ダンサーとして興味のある振付家、アーティストとは機会があれば仕事をしていきたいです。そして、自分でも新作を作っていこうと思っています。出会ってきた素晴らしいダンサー、人々と、日々感じるいろんな感情、現状を、ダンスというジャンルにこだわらず、表に出していきたいです。


向井山朋子『HOME』 copyright 遠藤豊

――「横浜バレエフェスティバル」の初回(2015年)に参加され、Bastian Zorzettoさんとマッツ・エック振付『眠りの森の美女』よりパ・ド・ドゥを踊られました。
抜粋というのは難しいな、と思いました。特にマッツの”Sleeping Beauty”はたくさんの伏線があって、1つのデュエットでそれを表現するのは不可能ですので、是非全幕を見ていただきたい!と思いました。前回の他の出演者さんを見て思ったのが、やはり日本のダンサーのレベルの高さですね。美しいダンサーばかりだな、と清々しかったです。

――「横浜バレエフェスティバル2017 」で踊られるのはエックのブノワ賞受賞作品『ジュリエットとロミオ』よりバルコニーのパ・ド・ドゥです。すでにスウェーデン王立バレエ団での全幕公演にゲスト出演されジュリエット役を踊られていますね。
知らないカンパニー、ましてやバレエ団での出演でしたので、不安もありましたが、とても楽しく他のダンサーさんからの発見も多かったです。オリジナルキャストの真理子ちゃんからも、もちろんインスパイアされましたし、最後はみんなと別れるのが寂しかったですね。そういえば、私の初日の日に、Fursten役(太閤)にけが人が出て、マッツ自身が出演されました。自分の出の直前に袖からマッツの踊る姿を見て、感動しました。


終演後、マッツ・エックと

――今回披露するバルコニーのパ・ド・ドゥの見どころ、踊るときに心がけている点を教えてください。
作品全体での幸せのピークの場面で、この後は一気に悲劇になっていきます。テクニックはもちろん大切ですが、それ以上に若さと勢い、盲目さと決意、何よりもロミオと恋をすることですね。

――パートナーを組むアントン・ヴァルドヴァウワーさん(スウェーデン王立バレエ団)はどのようなダンサーですか?
彼は昔NDTにいましたので、とても助け合って一緒に楽しんで踊れました。ワガノワ出身でテクニックも強くクラシックもコンテンポラリーも両立できるダンサーです。最近はピナ・バウシュファンデーションのアーティストに選ばれ、実験的なことにも挑戦しているようです。

――「横浜バレエフェスティバル2017」への抱負をお願いします!
前回に引き続き、マッツの作品での出演となり大変感謝しております。マッツの素晴らしい音楽性と演劇性が出ているデュエットをぜひお楽しみください。

 

公 演 情 報

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Aプログラム 6/9(金)19:00~

◆「ラ・バヤデール」よりソロルのヴァリエーション
2014年ローザンヌコンクール優勝の際に踊ったヴァリエーション。
二山の持つ魅力を存分に味わうことのできる1曲です。
二山治雄

◆「グラン・パ・クラシック」
華やかな曲にのせて高度な技が次々と繰り広げられる、スターダンサーにふさわしい作品。
近藤亜香(オーストラリア・バレエ プリンシパル)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ プリンシパル)

◆「アラジン」
振付:デヴィット・ビントレー
新国立バレエ団で世界初演後、バーミンガム・ロイヤルバレエやヒューストン・バレエ団でも上演された、子どもから大人まで楽しめる作品。
飯島望未(チューリッヒ・バレエ グルッペ・ミット・ソロ)
八幡顕光(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

◆「ジゼル」
昨年の公演で絶賛の嵐だった倉永・清水の豪華ペアによるロマンティック・バレエの王道「ジゼル」は、バレエファンなら絶対見逃せません。
倉永美沙(ボストン・バレエ団 プリンシパル)
清水健太(ロサンゼルスバレエ団プリンシパル)

◆「ジュリエットとロミオ」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
*日本初演
振付:マッツ・エック
2014年バレエ界のアカデミー賞と言われる「ブノワ賞」を日本人が初めて受賞したことで大きな話題となりました。待望の日本初演!!
湯浅永麻(元ネザーランド・ダンス・シアター)
アントン・ヴァルドヴァウワー(スウェーデン王立バレエ)

◆「Mononoke」
ダンス界で今大きな注目を集めているシディ・ラルビ・シェルカウイが加藤三希央のために振り付けた新作。
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
加藤三希央(ロイヤルフランダースバレエ団)

◆「Que Sera」より~ 柳本の場合 ~
*+81新作
前々年、前年と話題と笑いを巻き起こした柳本雅寛の意欲作!
熊谷拓明との化学反応も乞うご期待。
振付:柳本雅寛
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー +81主宰)
熊谷拓明(ダンス劇作家)

◆「スターズ&ストライプス」
20世紀の偉大な振付家ジョージ・バランシンによるアクロバティックなジャンプや回転技が魅力の作品です。
振付:ジョージ・バランシン
竹田仁美(NBAバレエ団プリンシパル)
二山治雄

◆「SOLI-TER」より
かつてパリオペラ座で上演された「SOLI-TER」を、横浜バレエフェスティバルで
オーギュストが踊るためにアレンジした特別な作品です。
振付:ジョゼ・マルティネズ
オーギュスト・パライエ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校)

◆「タイトル未定」Aプログラムバージョン
*ジュンヌバレエYOKOHAMAのデビュー作。新作世界初演。
10代の若さですでにバレエの道をひたすらに進んでいく大きな覚悟を決めた彼ら。
この作品がプロへの道のりの出発点となることでしょう。
振付:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ピアノ:蛭崎あゆみ
オーギュスト・パライエ
川本真寧(2015年オーディション優勝)
縄田花怜(2016年オーディション優勝)
中島耀(2016年オーディション神奈川県民ホール賞)
中村りず(2015年オーディション第3位)
竹内渚夏(2017年オーディション第3位)
丸山萌(2017年オーディション第4位)
亥子千聖(2017年オーディション第5位)
生方隆之介(2017年オーディション第6位)

◆「ラ・バデヤール」幻影の場ソリスト第1ヴァリエーション
オーディションで高く評価された確かな基礎力と、高度な技術力が必要な最後の見せ場が大きな見どころです。
大岩詩依(2017年オーディション準優勝)

◆「ドン・キホーテ」バジル・第3幕
オーディションでは、1ミリたりともぶれない軸の強さを見せつけたピルエット(回転技)で 観客を圧倒しました。まだ中学生とは信じがたいほどの驚異的なテクニックをご覧ください。
松浦祐磨(2017年オーディション優勝)

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Bプログラム 6/10(土)16:00~

◆「バラの精」
バレエ・リュスの代表作ともいえる「バラの精」
二山と竹田が観客を美しい幻の世界へいざなってくれることでしょう。
竹田仁美(NBAバレエ団プリンシパル)
二山治雄

◆「海賊」
公私ともにベストパートナーの2人による安定感抜群のパ・ド・ドゥ、
そして超人的なテクニックは絶対に生の舞台で見るべき!
近藤亜香(オーストラリア・バレエ プリンシパル)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ プリンシパル)

◆「ジュリエットとロミオ」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
*日本初演
振付:マッツ・エック
湯浅永麻(元ネザーランド・ダンス・シアター)
アントン・ヴァルドヴァウワー(スウェーデン王立バレエ)

◆「walking with hands」
クラシックとはまた違った世界観による倉永美沙の新たな魅力とその表現を堪能できる作品です。
振付:Paulo Arrais(パウロ・アハイス)
倉永美沙(ボストン・バレエ団 プリンシパル)

◆「ジゼル」
倉永美沙(ボストン・バレエ団プリンシパル)
清水健太(ロサンゼルスバレエ団プリンシパル)

◆「3 in Passacaglia」
2013年、JAPON dance projectによってカンヌで上演された話題作を飯島・八幡・遠藤の魅力的なキャストで再演決定!
振付:遠藤康行
飯島望未(チューリッヒ・バレエ グルッペ・ミット・ソロ)
八幡顕光(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)

◆「Que Sera」より~ 熊谷の場合 ~
*+81新作
Aプログラムとはまた違った味わいをお楽しみください。
振付:柳本雅寛
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー +81主宰)
熊谷拓明(ダンス劇作家)

◆「Mononoke」
*シディ・ラルビ・シェルカウイ 新作世界初演
振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
加藤三希央(ロイヤルフランダースバレエ団)

◆「ソワレ・ド・バレエ」より
米沢唯が2015年の横浜バレエフェスティバルで踊り、そのスーパーテクニックに
拍手喝采となった作品を、今年はなんと畑戸が踊ります!
畑戸利江子(2013年モスクワ国際バレエコンクール 銅賞)

◆「タイトル未定」
*Francesco Curci(フランチェスコ・クルチ) 新作日本初演
芸術監督の遠藤がフランスでその才能に度肝を抜かれた2m級のスーパーダンサー、
オーギュスト・パライエ。その彼が遂に日本初登場!
振付:Francesco Curci(フランチェスコ・クルチ)
オーギュスト・パライエ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校)

◆「パリの炎」
フレッシュなペアによる競演!
プロ顔負けの高難度技をいとも簡単そうに演じてしまう2人から
一瞬たりとも目が離せません。
大岩詩依(2017年オーディション準優勝)
松浦祐磨(2017年オーディション優勝)

◆「タイトル未定」Bプログラムバージョン
*ジュンヌバレエYOKOHAMAのデビュー作。新作世界初演。
振付:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ピアノ:蛭崎あゆみ
オーギュスト・パライエ
川本真寧(2015年オーディション優勝)
縄田花怜(2016年オーディション優勝)
中島耀(2016年オーディション神奈川県民ホール賞)
中村りず(2015年オーディション第3位)
竹内渚夏(2017年オーディション第3位)
丸山萌(2017年オーディション第4位)
亥子千聖(2017年オーディション第5位)
生方隆之介(2017年オーディション第6位)

詳細はこちら⇒ http://yokohamaballetfes.com/