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PICK UP!

牧阿佐美バレヱ団『三銃士』座談会
~菊地研・青山季可・日高有梨・中川郁が珠玉の人気作品の魅力を語る!

アレクサンドル・デュマの名作小説をバレエ化した『三銃士』(演出・振付:アンドレ・プロコフスキー)は、牧阿佐美バレヱ団屈指の人気作品です。仏英の王宮を舞台にダルタニヤンと三銃士(ポルトス、アトス、アラミス)が、リシュリュー枢機卿とその手下のミレディやロシュフォールとバトルを繰り広げます。ダルタニヤンとアンヌ王妃の侍女コンスタンス、王妃とバッキンガム公爵のラブストーリーもみどころです。3年ぶりの上演に際し、ダルタニヤンを踊る菊地研さん、コンスタンスの青山季可さん、ミレディを演じる日高有梨さん、中川郁さんに痛快無比な傑作の魅力を語り合っていただきました。
※配役は日替わり。記事下の公演情報・バレエ団ホームページなどをご覧ください。
※日高有梨さんの「高」は正式には「はしごだか」になります。

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)


牧阿佐美バレヱ団「三銃士」(撮影:鹿摩隆司)

 

 


スピーディーに展開する、明るく楽しめるバレエ
――牧阿佐美バレヱ団が『三銃士』を初演したのは1993年10月です。再演を重ねていますが『三銃士』との出会いや作品の印象についてお話しください。
日高有梨(以下、日高) 小さな頃に初演を観てからとても大好きな作品です。場面がスピーディーに展開し、フィナーレも物語のハイライトのように作られていて、明るくて最初から最後まで楽しかったです。
青山季可(以下、青山) 2005年にコンスタンスと貴族役で出たのが最初です。ダルタニヤンが物語を引っぱりますが、女性にもコンスタンス、アンヌ王妃、ミレディという重要な役がいます。コンスタンスは原作では人妻ですがバレエではピュアで一途な存在。王妃は優雅で毅然としていて、ミレディは野心家だけれど美しい女性です。それぞれの役柄・性格が面白いと思いました。
菊地 研(以下、菊地) 2005年に最初に出たときに三銃士の一人ポルトスを踊れてうれしかったです。三銃士はダルタニヤンといつも一緒ではなくて活躍する場にしか出てこない。おいしいシーンにしか出てこないんですね(笑)。
日高 私も2005年にペザントの役で初めて出ました。大好きな作品なのでうれしかったのですが、出るからにはいろいろな役をやりたいという目標ができました。特にミレディを踊りたかったんです。目立つし、かっこいいし、自分が男性なら三銃士を踊りたかったくらいなので(笑)。それに役柄をどこまでも掘り下げられるというのもあります。
中川 郁(以下、中川) 2014年に初めて出てミレディを踊りましたが、入団からまだ3年くらいなのに大人の女性の役をいただいて驚きました。アンヌ王妃を踊られた吉岡まな美さん(注:ミレディ役も経験)にアドヴァイスをいただいたりしながら手探りでした。


(左)青山季可 (右)菊地 研


(左)中川 郁 (右)日高有梨


先輩からの継承と役作りについて
――そうそうたる先輩方が踊られてきましたが皆さんも今回は初役ではなく2度あるいは3度目となる役柄を踊りますね。
日高 初めて観たときの、それぞれの役を踊られた方のイメージができ上がっている部分があって、前回(2014年)初めてミレディを踊るときには壁になりました。でも、どの役も、それぞれの個性をとらえた方が演じていて、いつも皆のキャスティングが合っていると思います。

青山 岩本桂さんのコンスタンスは印象に残っています。私は原作を読み古い映画を観たりしました。ダルタニヤンを愛するピュアな思いと、アンヌ王妃に仕える身分で一歩下がった位置にいることを意識してクリアにみせたい。見せ場はダルタニヤンとのパ・ド・ドゥです。最初に踊ったとき(2005年)は(森田)健太郎さんがダルタニヤンでした。健太郎さんはサポートが上手なので、操られた人形のようにならないように流れをつなげることが大切だと教わりました。本当に細かく難しいパ・ド・ドゥです。

――菊地さんは前回(2014年)からダルタニヤンを踊られていますが、いかがですか?
菊地 大まかにストーリーを追うと、ダルタニヤンとコンスタンスとの恋愛の場面は唐突に始まるので、二人のパ・ド・ドゥだけで一気に空気感を切り替えなければいけない。そうしないと物語のメリハリがつかなくなってしまうので難しいです。
青山 (パ・ド・ドゥは)音楽の流れとともに、二人の思いを届けたい重要なシーンです。
菊地 技量が必要ですね。
青山 健太郎さん、(逸見)智彦さんとやらせていただいて、前回は研くんと踊りました。研くんとは二人で相当詰めてリハーサルをした思い出があります。
菊地 しましたね。昔はパ・ド・ドゥでも若気の至りで感情がぶつかったりしましたが、経験を重ねて、やっとかみ合ってきました。今回、太田朱音さんと組みますが、彼女にとってハードルは高いと思います。初主役で難しいパ・ド・ドゥもあるので。そこをどこまで挑戦できるかですが、自分もがんばらないと。対等のスタンスでやらないといけないんです。若い子と組む機会が増えた頃、山本隆之さん(現・新国立劇場バレエ団登録プリンシパル)にアドヴァイスをお願いしました。隆之さんに言われたのは「平等に付き合うこと」。年下だからとか思うと上手くいかないとおっしゃいましたが、その通りだと思います。

――女スパイであるミレディは悪役で鮮烈な存在感があります。演じ甲斐があると思いますが、前回に続いて踊る日高さん、中川さん、役作りはどのように?
日高 佐々木想美さんのミレディへの憧れもあるので、あのようにやりたいと思いましたが、どうしても無理です。原作を読み、映画を一通り観て、自分でどのようにできるか消化する方に時間をかけました。そして「ミレディはどう生きてきたんだろう?」と考えたんです。最初から悪さをしようと思っていたのでないと思います。
中川 私も前回ミレディを踊ったときは、以前に観た田中祐子さんの印象が強くて、祐子さんと同じようにはできないので悩みました。どんな役柄でも自分の中にちょっとある部分を大きくして演じるのですが、ミレディはすっと入っていける役ではなかったですね。映像で自分の踊りを観ると、力が入り過ぎていたと思います。潜入する場面でも、いかにも「忍び込むぞ!」となっていたので(笑)。もうちょっとサラッと演じてもいいのかなと。


魅力的なキャラクター、細かで楽しい仕掛け
――ダルタニヤン、コンスタンス、三銃士、アンヌ王妃やミレディだけでなく周囲にいる人物も皆キャラクターが立っていますね。
日高 コンスタンスとダルタニヤンもパ・ド・ドゥの前にルーヴル宮の庭のシーンで出会って恋をしてというのは後ろで演技しているし、ミレディとリシュリュー卿の陰謀も突然始まるのではなくて、ちょっとずつ会話がなされていっています。ライトアップされているところだけではなく、いろいろな場所に仕掛けがあるので、そこも観ていただければ楽しめると思います。
菊地 一つだけ場面を切り取っても観られるバレエでもあるんですね。

――菊地さんはダルタニヤン、ポルトスのほかにバッキンガム公爵やロシュフォールなども踊っています。特に好きな役は?
菊地 ポルトスはいい役ですし公爵もそう。でも、やっぱりダルタニヤンかな(笑)。ロシュフォールも面白いですが、彼だけギャグ・パートで扱われ方が、あまりかっこよくない。
青山 最後上半身裸にされてミレディにビンタされる(笑)。
中川 前回、ロシュフォールが大先輩のワタさん(塚田渉)だったので、どうしようかと思いました。今回もワタさんですが、あれからいくつか舞台を経験して信頼感が増しているので遠慮がなくできそうです(笑)。
菊地 あのシーンで出てくるまで樽に入ってずっと待っているんですよ。上半身裸で(笑)。樽の倒し方も難しくて、転がる方向が違うと上手く出ていけない。技量が必要なんです。

――『三銃士』には剣闘の場面が欠かせませんね。
菊地 楽しいですよ。でも『三銃士』の世界に引き込む見せどころなので滞りなく成立させるためには計算が必要です。型だけに意識がいくと、刃の切っ先に意識がいかないですし、ほんの少しの手の置き方とかでカッコよさや写り方が違うんですね。


3年ぶりの上演に向けて
――今回の抱負は?
菊地 太田さんとどのように創っていくかということですね。早めに不安要素をなくしてあげたい。余裕をもって本番に臨めるようにしたいと思います。
青山 イヴァン・プトロフさん(元・英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)と初めて一緒に踊ります。プトロフさんはダルタニヤンにピッタリだと思うので、一緒に楽しく創りあげたいです。
日高 役を創り過ぎると浮いてしまうので、物語の中でどう生きられるかが大事です。技術的にも難しいパ(ステップ)が入っているので前回よりもよくできるようにしたい。今回はバッキンガム公爵が研くんなのも楽しみです。
中川 私の日のバッキンガム公爵はプトロフさんなのでドキドキです。
菊地 郁ちゃんはすでに前回よりもいいですよ。『リーズの結婚』に主演したり経験も積んだりして変わるんだなと。
中川 うれしいです!
青山 郁ちゃんは、いつも楽しそうだよね(笑)。
中川 ちょっとした仕草や目の使い方、歩き方を考えながらリハーサルするのが楽しいです。

――最後にあらためて『三銃士』のアピールをお願いします。
菊地 やはりスピーディーな展開や男性が大量に出てくるファイティングシーンの迫力といった普通のバレエにはない要素と魅力が詰まっているので観やすいと思います。音楽もヴェルディのオペラの曲を上手く使っていてテンポがいい。
青山 皆にテーマ曲があるんです。三銃士やミレディが出てくると流れる。コンスタンスにはないんですけれども(笑)。
日高 ダンサーの個性が凄く生かされる作品です。始まり方もかっこいい。世界地図が現れて、フランスとイギリスの位置関係や人物の相関図が出てきます。
中川 前回自分が出演しない日に客席から観ましたが、お腹を抱えて笑いました。チャンバラのシーンで一人ボコボコにされる人がいたりするのが面白くて。お腹を抱えて笑えるバレエはなかなかないと思うので、初めてバレエをご覧になる方にもおすすめです。


 

★ ☆ ★ 公 演 情 報 ★ ☆ ★
牧阿佐美バレヱ団 創立60周年記念公演-Ⅸ
『三銃士』

世界中で何度も映画・ドラマ化されている、フランスの文豪アレクサンドル・デュマのあの人気作「三銃士」がバレエに!
主人公ダルタニヤンと三銃士たちイケメン剣士達が、対立する枢機卿の護衛隊と共に所狭しと舞台を駆け回るフェンシングでの対決シーンや、枢機卿の部下ミレディとの首飾りをめぐっての攻防など、手に汗握るハラハラ・ドキドキの場面が満載!バレエでは珍しく、男性ダンサーの活躍を大いに堪能していただける作品です。
また、ダルタニヤンと王妃の侍女コンスタンス、王妃とバッキンガム公爵の2組のカップルが、惹かれあう2人ならではのパ・ド・ドゥを魅せます。
「三銃士」を国内でレパートリーに持っているのは、牧バレヱ団だけ。爽快な冒険物語を心ゆくまでお楽しみください!

公演詳細はこちらhttp://ambt.jp/perform.html

日時:2017年3月4日(土)15:00/3月5日(日)14:00
<全2回公演>  上演時間 約1時間50分(休憩1回含む)

会場:文京シビックホール 大ホール

チケット料金(税込):
S席10,800円、A席8,000円、B席5,000円
S席ペア20,000円 A席ペア15,000円 B席ペア9,500円 (ペア席はエリア限定)
※当日券のみ学生割引があります(お席は選べません。要学生証提示)
A席4,000円 B席2,500円

チケット取扱:
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