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PICK UP!

横浜バレエフェスティバル2016出演! 
清水健太インタビュー

この夏、第二回開催を迎える横浜バレエフェスティバルに、ロサンゼルスバレエ団プリンシパル・清水健太さんの出演が決定! ボストン・バレエ団でプリンシパルとして活躍する倉永美沙さんとペアを組み、『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥを踊ります。フェス開幕を前に、清水さんに公演への意気込みをお聞きしました。

インタビュー・文:小野寺悦子

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——横浜バレエフェスティバル2016で、倉永美沙さんとペアを組み『くるみ割り人形』第2幕より金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥを披露します。
倉永さんと踊るのは今回が初めてです。僕も彼女も早い段階で海外に出てしまったので、これまで一緒に踊る機会がなくて。とはいえもちろん彼女の存在は知っていました。なにしろ倉永さんは10代の頃から天才少女と呼ばれていて、コンクールで彼女の名前を聞かないことはないくらいでしたから。
彼女が踊っている映像を何度か見たことがありますが、ひとことで言うと“プロだな”という印象ですね。あと聞くところによると、すごくストイックな方だとか。はたから見ると“もう完璧なのでは?”というくらい踊れていても、彼女自身は納得せずにリハーサルを続けていたりする。理想を徹底的に追求する、その内面の強さはすごいものがあると思います。

——『くるみ割り人形』の王子役を演じるうえで心がけている点は何でしょう?
王子は兵隊の人形が人間に変わったという設定なので、兵隊のイメージをもたせつつ白馬の王子様の雰囲気を出せたらと考えています。『くるみ割り人形』はロサンゼルスバレエ団でも毎年踊っていますが、やはりチャイコフスキーの白のパ・ド・ドゥは全く誤魔化しがきかないという意味で緊張感がありますね。
今回は倉永さんの希望もあって、ボストン・バレエ団のバージョンで上演する予定です。ロイヤル版やボリショイ版、バランシン版などありますが、ボストン・バレエ団のバージョンはロイヤル版と構成が近くて多少リフトが多い感じ。といっても倉永さんは軽いでしょうし、さほど負担にはならないと思います(笑)。僕も体格はいい方ですけど、海外のダンサーと組むとやはり大変なことがありますから……。それに日本人の精神として、なるべく相手に迷惑をかけないように踊ろうという意識がある。でも海外のダンサーはちょっと違って、自分の好きなように踊りたいという意識が前面に出る。どちらも正しいし、どちらも間違ってはいない。どんなダンサーが相手でもそうですが、僕は自分がどう見えたいかということはあまり考えない方で、特にアダジオのときはサポートに徹するようにしています。

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(C)Reed Hutchinson

——現在ロサンゼルスバレエ団のプリンシパルとして活躍されています。移籍のきっかけは何だったのでしょう。
K-BALLET COMPANYに在籍していたとき『シンフォニー・イン・C』を踊る機会があり、そのステージングにコリーン・ニアリーというロサンゼルスバレエ団のディレクターが来たのがそもそものきっかけでした。コリーンのお姉さんはパトリシア・ニアリーというバランシン・トラストの有名な指導者で、僕もマイアミ・シティ・バレエ団時代にパトリシアと仕事したことがあり、そこで話が盛り上がったというのがまずありました。さらに僕の覚えの早さや正確さなども気に入ってくれたようで、ゲストとしてロサンゼルスバレエ団に来てくれないかと声をかけていただきました。そういえば、初めてロサンゼルスバレエ団で踊ったのも『くるみ割り人形』でしたね。当初は『くるみ割り人形』だけというお話でしたが、その後全プログラムに出て欲しいと言われて、僕もちょうどK-BALLET COMPANYを離れたタイミングだったこともありお受けしました。
ロサンゼルスバレエ団には2011年から在籍していて、現在7シーズン目です。基本的に普段は日本にいて、公演があるたびロスに行って踊っています。ゲストプリンシパルという契約ですが、これはかなりめずらしいスタイルかもしれません。日本にいるときは国内の公演に出たり、教えをしたりといった活動をしています。ロスには公演が始まる最低三週間くらい前に行ってリハーサルを行い、本番を終えて日本に帰り、また次の公演が始まる前に現地へ行くという流れ。年の三分の一くらいロスで過ごしていますが、やっぱり移動が一番大変です。帰りのフライトは特にシンドイですね(笑)。

——大変な想いをしてまで海外で踊る理由は何でしょう。
もともと10代のときから海外で踊りたいという気持ちが強くあったのと、実際海外で踊る方が僕の肌には合っているような気がします。日本はメディアで名前が売れるとどうしても甘やかされてしまうというか、“このダンサーが出てるからいい舞台だ”ときちんと評価されない傾向がありますよね。でも海外はすごくシビアで、たとえプリンシパルでも本番が良くないと拍手もされなかったりする。僕自身は現地の記事で悪く書かれたことはほとんどないけれど、逆にあまりに書かれていないと“良くなかったのかな?”って気になったりしちゃいます(笑)。

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——ロサンゼルスバレエ団の主なレパートリーは? カンパニーの雰囲気はいかがですか?
年間公演数は30くらい。先シーズンはカンパニーの10周年記念ということで、『ジゼル』、『くるみ割り人形』、『ドン・キホーテ』、『ロミオとジュリエット』と古典に力を入れたプログラムになっていました。次のシーズンは『ヴァイオリン・コンツェルト』、『くるみ割り人形』、『コッペリア』、最後がバランシンプロで『放蕩息子』、『フーケアーズ』、『ディヴェルティメント』と幅広い作品が用意されています。
ダンサーの年齢層は30代前半くらいまでで、わりとみんな若いですね。日本人は僕だけです。スクール・オブ・アメリカン・バレエ出身のダンサーが多いので、スタイル的にはバランシン寄りでしょうか。先シーズンは古典が多かったので、そういう意味ではすごく大変そうでした。特に『ロミオとジュリエット』はアシュトン版で50年代の完全なる古典スタイルだったので、みんな苦労していたようです(笑)。
ダンサーもそうですが、全体的にまだ若いカンパニーだなと感じます。組織としても確立されていない部分があって、ボランティアでがんばってくれる人がいないとまわっていかないのが実状です。アメリカはスポンサーが経営主体の命だけれど、ロスの場合はハリウッドやNBA、メジャーリーグなどに企業が流れてしまいがち。芸術に関心のある人は支援してくれますが、バレエは規模が小さいこともあり、二の足を踏んでしまうことがあるようです。

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——ハードな生活を乗り切るために日々気を付けていることは? 特別なトレーニングなどはされているのでしょうか。
食事は普段から気をつけるようにしています。ジャンクフードは基本食べないですね。料理が趣味なので、どんなに疲れていても自分でバランスを考えてご飯を作ります。和食でも洋食でもひと通り作れますが、そこにひとひねり加えるのが僕のこだわり。例えばピザを焼くなら、生地から伸ばしたり……。だから、海外にいても食べ物で困ることはまずありません。
筋トレはほとんどしてないですね。今の体重のまま筋肉繊維を強くするトレーニングはしたとしても、筋肉量を増やすとスムーズに動けなくなってしまうので、基本的にバーレッスンで維持しています。ただこれを失いたくないと思うから、頑張ってキープしようと考えています。というのも27歳のときにK-BALLET COMPANYを離れ、その後がくんと身体が落ちてしまったことがあって。毎日レッスンできる環境ではなくなったのが大きかったと思います。公演前に集中して頑張ればある程度できたとしても、やっぱり後で反動がくるんですよね。これはよくないなと思い、本番までの持って行き方や舞台がない時期の過ごし方に気をつけるようにしたら、だいぶ変わって来ましたね。

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——ハードな日々を乗り越えるうえで、清水さんにとって一番の気分転換法とは?
子どもですね。一歳と三歳で、ふたりとも男の子。もうずっと眺めてられます(笑)。子どもができたことで、大変な仕事も苦ではなくなりました。お兄ちゃんの方は三歳なのでだいぶ会話ができるようになってきて、それもまた面白い。ふたりともすごいパパっ子で、僕が仕事でいないと言うことを聞かないと奥さんがこぼしています(笑)。仕事で離れている時間も多いけど、今はスカイプなんかもあるから便利ですよね。僕が留学していたときは、パソコンもまだ普及していませんでしたから。子どもたちにバレエをやらせようとは考えてないですね。芸事の二世はプレッシャーがあるだろうし、海外でずっとやっていくならまた別だけど、日本のバレエ界はいろいろ難しい。感受性を育てるために習い事としてやる分にはいいけれど、これで食べていくと言われたらちょっと……。でも僕の父親も反対していたけれど、この道に進むと決めた後は何も言わなかったので、もしかするとそういうこともあるかもしれないですね。

——最後に、横浜バレエフェスティバル2016に向け意気込みをお聞かせください。
キャストのなかには知り合いも多くて、高岸直樹さんは昔から知っていますし、米沢唯ちゃんもそう。彼らと一緒に舞台に立てるのは嬉しいですね。あと以前青木尚哉さんや柳本雅寛さんが出ていたコンテンポラリーの舞台を観たときに、みなさんアーティストとして本当に尊敬できる方たちだなと感じて、そこは素直に楽しみにしています。
倉永さんのように海外で踊っているダンサーを日本で観る機会は少ないだろうし、カンパニーを超えてペアを組めるのはやっぱりガラの見所ですよね。僕らが公演のトリを務めせてもらう予定なので、恥ずかしくない出来にしたいし、倉永さんと踊れることを自分自身しっかり楽しめたらと思っています。

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(C)Reed Hutchinson

 

 

公 演 情 報

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横浜バレエフェスティバル2016
~バレエの”力”が8.7に”かながわ”へ集結!
主催:株式会社ソイプランニング/神奈川県民ホール
後援:横浜アーツフェスティバル実行委員会

開催予定:2016年8月7日(日) 神奈川県民ホール
18:00開演 20:45頃終演予定

芸術監督:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト/振付家)
プロデューサー:吉田智大

★ ☆ ★【上演予定作品】★ ☆ ★

◆【第1部】(フレッシャーズガラ)
クラシックバレエ作品のヴァリエーション (オーデイション合格者)
縄田花怜
中島耀
エスメラルダのヴァリエーション
みこ・フォガティ
「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
二山治雄(白鳥バレエ学園)

◆【第2部】 World Premium 1
新作(タイトル未定)
高瀬譜希子
演奏:佐藤健作
「ライモンダ」第1幕より夢のパ・ド・ドゥ ヌレエフ版
米山実加 (ボルドー・オペラ座バレエ団)
高岸直樹(元東京バレエ団)
新作(タイトル未定)
みこ・フォガティ
二山治雄(白鳥バレエ学園)
瀕死の白鳥
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
Lilly 振付:+81
青木尚哉(ダンサー・振付家)
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー・ +81主宰)

◆【第3部】 World Premium 2
新作(タイトル未定)
米沢唯(新国立劇場バレエ団)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ヴァスラフよりソロ 振付: ジョン・ノイマイヤー
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
「エスメラルダ」よりダイアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ団)
ロミオとジュリエットより死のパ・ド・ドゥ 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江(バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)
「くるみ割り人形」第2幕より金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
清水健太(ロサンゼルス・バレエ団)

*演目は都合により変更となる場合がございます

 

横浜バレエフェスティバル詳細はこちら⇒ http://yokohamaballetfes.com/