【PICKUPについて】

このコーナーはバレエナビが取材させて頂いたホットな話題を取り上げております。
バレエやダンスに関する人・商品・サービス・イベント・公演など取り上げさせて頂く話題は多岐にわたります。
ご期待ください!

PICK UP!

遠藤康行インタビュー(横浜バレエフェスティバル芸術監督)
~横浜バレエフェティバルへの思いと海外での活動や創作、今後の展望を語る!~

“国際コンクール受賞で大注目の若手とワールドクラスのバレエが集結!”する『横浜バレエフェスティバル』の芸術監督を務め、昨年(2015年)の第1回を成功に導いた遠藤康行さん。遠藤さんに同フェスのことや海外経験、近況、今後の抱負を伺いました。
取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

――「横浜バレエフェスティバル」の芸術監督になられた経緯は?
ベルギーで踊っていた時にビジネスマンとして駐在していた吉田智大さん(横浜バレエフェスティバルプロデューサー)と知り合いました。その後僕はフランスへ移り、吉田さんは帰国されました。2011年に僕と西島数博さんら9人の実行委員が集って東日本大震災復興チャリティ「オールニッポンバレエガラ」を行うことになり事務局を吉田さんにお願いしました。吉田さんは「バレエナビ」(バレエ情報ポータルサイト)を立ち上げられていて、彼が昨年神奈川県民ホールで公演をするということで相談を受けました。

――「横浜バレエフェスティバル」の初回を行う際に考えたコンセプトとは?
「横浜バレエフェスティバル」という公演名は僕が付けました。昔は海外に出ていた人が夏に戻ってきて交流できるフェスティバルがあり、特に「青山バレエフェスティバル」(1986年~2000年)は若いダンサーの登竜門でした。そういうものがもう一度必要だと思い、地域に根付きながらベテランも含めた皆が集まれる場を創りたかった。作品もできる限り幅広く紹介していきたいと考えました。吉田さんと相談しながら「フレッシャーズガラ」を特徴とし、ベテランも集う「World Premium」を入れました。2つをブツ切れにはしたくなかったので、オープニングとフィナーレに出演者全員が出るようにしました。

DSC_3179A
横浜バレエフェスティバル2015

――初回を終えての感想は?
コンテンポラリーも多く入れて趣向を変えてみましたが2000人以上の観客が入るホールなので、それに見合うバランスが大事だと実感しました。魅せ方のヴァリエーションと構成のバランスですね。一晩ものの作品と違って少し変わったものをミックスするにしても料理加減が難しい。中華のあとにステーキが出てきて、その後日本食が来るみたいな場合もある(笑)。それをどうやってお客様に上手くおいしく食べていただくかに苦心しました。

――「フレッシャーズガラ」にはオーディションで選抜されたジュニアが出場します。選ばれる基準を教えてください。また昨年の本番でどのように接されましたか?
昨年はスーパーバイザーをお願いした吉田都さんにもご尽力いただきましたが「出来ている人」ではなくてポテンシャルのある子を選びサポートしていきたいと思います。本番ではプロとして舞台に立つ基本的な流れがコンクールとは違う。ギリギリに立ち位置の変更を指示したりもするので常にオープンでいないと。オープニングやフィナーレにも参加してもらったのでプロのダンサーとのコミュニケーションも学んだのではないでしょうか。

――ワークショップも行い教育的な観点からもバレエ界を活性化しようとされていますね。
「フェスティバル」と名乗るからにはダンスに関わることを色々とやっていきたい。日本ではなかなか体験できない内容になっています。昨年はマッツ・エックのワークショップを木田真理子さん、児玉北斗さん(ともにスウェーデン王立バレエ団)にお願いしました。ブノワ賞を受けた木田さん直々の指導です。今年の講師はロイヤル・バレエでも大活躍しているウェイン・マクレガーのカンパニーの高瀬譜希子さんにお願いしました。

――2回目に向けての新たな方向性はありますか?
大きなコンセプトは変わりません。去年も進行のテンポが良かったと思うのですが、さらに良くしたい。去年に比べるとネオクラシックの作品が多いかもしれません。作品数も多くバラエティが大きいので、どのように並べようか模索しています。去年からのメンバーもいますが新しい人たちも出てくれる。皆素晴らしいです。見どころはたくさんありますが、「ロメオとジュリエット」より死のパ・ド・ドゥ(振付:アンジェラン・プレルジョカージュ)を上演したかった。津川友利江さん(バレエ・プレルジョカージュ)が同僚のバティスト・コワシューさんと踊ってくれます。若い頃にみてから気になっている大好きなパ・ド・ドゥです。アンジェランの作品はコンセプトがしっかりしていて分かりやすいし、フランス人的なこだわりがあります。

DSC_0218A
横浜バレエフェスティバル2015

――遠藤さんの新作についてお伺いします。まず、みこ・フォガティさん、二山治雄さん(白鳥バレエ学園)に振付ける作品(タイトル未定)はどのようなものになりますか?
クラシックのヴァイオリン曲にのせた、軽快で弾むような小気味よい作品です。彼らの好い所を引き出して詰めこんでみたい。みこさんは去年ワークショップに参加してくれて、その時にコンテも上手で凄く吸収しているなと。二山くんは昨年のガラに出てくれましたが努力家ですよね。努力の上に成り立つあのテクニック。信頼がおけるし確実な力を感じます。彼らは姉弟なのか、初めて男女を意識した2人なのか分からないですけれど、そういう掛け合いで、デュオというよりもダイアローグですね。超絶技巧も入ると思います。

――ご自身も米沢唯さん(新国立劇場バレエ団)と新作(タイトル未定)を踊ります。
昨年小池ミモザさん(モナコ公国モンテカルロ・バレエ団)と『半獣』というパ・ド・ドゥを踊りましたが、「愛の七部作」と呼んでいる愛に関するパ・ド・ドゥを結構創ってきました。コンセプトは「ふとした瞬間に地雷のようなものを踏んでしまって愛が始まる」みたいなイメージです。振り先行で創っていますが、いつもと違う唯ちゃんを引き出せたらなと。

DSC_0440A
「半獣」牧神の午後よりパ・ド・ドゥ(振付:遠藤康行)
遠藤康行 小池ミモザ

――遠藤さん個人のお話を伺います。海外に出られた経緯は?
バレエを幼稚園の頃に父(遠藤善久、元スターダンサーズ・バレエ団芸術監督)から習っていたのですが、正式には高校3年生位から執行伸宜先生に学びました。スターダンサーズ・バレエ団に入り外の仕事が増え、先輩方の話を聞くうちに海外に行きたいと漠然と思うようになりました。1994年から文化庁の在外研修員としてオーストラリア・バレエ団で2年間研修しました。年間170回以上の舞台があり過酷でしたね。モーリス・ベジャールの「コンクール」でソリストパートを踊り、スティーブン・ベインズの「beyondbach」をルシンダ・ダン(後のプリンシパル、2014年引退)と踊りました。当時の芸術監督マイナ・ギールグッドの勧めで振付も始め、若い振付家を発掘する「new moves」でソロ「distance」を創りました。

――スターダンサーズ・バレエ団に復帰後、ヨーロッパに渡ります。1999年からベルギーのシャルロワ・ダンスで踊り、2005年~2015年までフランス国立マルセイユ・バレエ団でソリスト/アシスタント・ディレクターを務められましたね。
帰国後ウィリアム・フォーサイスや勅使川原三郎さんの作品を踊りました。作品を創るには膨大なボキャブラリーが必要で色々模索し始めました。勅使川原さんの海外公演に出た後にヨーロッパでオーディション回りをして、シャルロワのクラスを受けていると「明日オーディションあるから来なさい」と言われ受かりました。ディレクターのフレデリック・フラマンは振付家ではなく建築家とのコラボレーションが多く、ダンサーがムーヴメントを作品の中に入れ込んでいく。マルセイユにはフレデリックが移る時にアシスタントとして来てほしいと誘われ一緒に行きました。自分の作品も上演できるようになりましたが、カンパニーのリハーサルを全部見て、クラスも時々教え、創作はその後にやっていました。

――豊富な海外経験に基づいて若いダンサーにできるアドヴァイスはありますか?
僕が心がけているのは何にでも興味を持つこと。それと、いい意味ですぐに返事をしないというか「消化しないでNoと言うな」というのがあります。若い日本人のダンサーには「オープンな心構えでいないと逃すことがあるよ」と話すようにしています。それが一番大事です。

インタビュー風景

――最近日本に拠点を移されたそうですね。
マルセイユを辞めた時に仕事の60%が日本、40%がヨーロッパだったので日本を拠点にした方が効率いい。マルセイユにベースは持っているので日本とヨーロッパを行き来する。それに地元(東京都昭島市)のスタジオ(Endo Ballet エンドウ・バレエ)を再構築しようと思いました。

――国内外で創作活動を活発に行われていますが関心やスタイルは変わっていきますか?
関心はその時々によって変わるしボキャブラリーも少しずつ変化してきています。「愛の七部作」もありますし、能楽を扱った「DOJOJI+」も創りました。「Super MAN Project」という男だけのプロジェクトもやっています。ヨーロッパでは自分たちでツアーをします。この間もレナード衛藤さんとマルセイユでやった「TAMAGO」でミュンヘンやアムステルダム、パリを回りました。「JAPON dance project」は「オールニッポンバレエガラ」の後で何人かの気の合うメンバーと結成しました。ミモザ、柳本、青木がいて児玉が来ました。カンパニーではなくプロジェクトなので、僕が出なくて他のメンバーをサポートするかもしれませんし、色々なクリエイターが集まる受け皿になればと思います。

――今後の展望・抱負をお聞かせください。
Endo Ballet エンドウ・バレエをリニューアルしたので充実させ、なるべく自分も教えて良い踊り手を育てたい。ダンサーとしては、この秋に勅使川原さんの作品に客演しスペインとフランスで踊る予定です。「横浜バレエフェスティバル」は定番として続け、いずれはグループを呼んだり公演のプログラムもガラだけでなく2つ、3つと増やしたりできれば。振付に関しては来年日本でクリエイションの予定がありますが今後もいろいろな作品を創りたい。「ロミオとジュリエット」などの古典や有名な物語の改訂版にも興味がありアイディアを寝かしています。今後は日本でもどんどんクリエイションし様々なオファーにも応えていきたいです。

 

インタビュー取材協力:「アテール」本社スタジオ
『バレエスタジオ施工専門 アテール』http://a-terre.com/

 

★ ☆ ★ 出演者(公開)オーディション/ファイナル ★ ☆ ★
ファイナルは公開オーディションとなります。
本公演チケット、および、当オーディション出場券半券をお持ちの方は、無料にてご観覧いただけます。(チケット現物のご提示をお願いします。)
また、当日12時20分より、オーディションファイナル観覧券を1,000円にて販売いたします。
なお、観覧座席は本公演チケット上の座席番号とは異なります。観覧可能スペース内での全自由席になります。

各ファイナリストによるヴァリエーション披露ごとに審査員よりコメントをいただきます。
見応えのあるオーディションになる予定です。ご期待ください!

・日時 2016年7月22日(金) 開場:12時30分 開演:13時
・場所 神奈川県民ホール 大ホール
・結果発表 15時30分(予定)
・司会進行 町亞聖

 

公 演 情 報

yokoballet_gif

横浜バレエフェスティバル2016
~バレエの”力”が8.7に”かながわ”へ集結!
主催:株式会社ソイプランニング/神奈川県民ホール
後援:横浜アーツフェスティバル実行委員会

開催予定:2016年8月7日(日) 神奈川県民ホール
18:00開演 20:45頃終演予定

芸術監督:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト/振付家)
プロデューサー:吉田智大

★ ☆ ★【上演予定作品】★ ☆ ★

◆【第1部】(フレッシャーズガラ)
クラシックバレエ作品のヴァリエーション(オーデイション合格者2名)
エスメラルダのヴァリエーション
みこ・フォガティ
「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
二山治雄(白鳥バレエ学園)

◆【第2部】 World Premium 1
新作(タイトル未定)
高瀬譜希子
演奏:佐藤健作
「ライモンダ」第1幕より夢のパ・ド・ドゥ ヌレエフ版
米山実加 (ボルドー・オペラ座バレエ団)
高岸直樹(元東京バレエ団)
新作(タイトル未定)
みこ・フォガティ
二山治雄(白鳥バレエ学園)
瀕死の白鳥
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
Lilly 振付:+81
青木尚哉(ダンサー・振付家)
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー・ +81主宰)

◆【第3部】 World Premium 2
新作(タイトル未定)
米沢唯(新国立劇場バレエ団)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
ヴァスラフよりソロ 振付: ジョン・ノイマイヤー
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
「エスメラルダ」よりダイアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ団)
ロミオとジュリエットより死のパ・ド・ドゥ 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江(バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)
「くるみ割り人形」第2幕より金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
清水健太(ロサンゼルス・バレエ団)

*演目は都合により変更となる場合がございます

 

横浜バレエフェスティバル詳細はこちら⇒ http://yokohamaballetfes.com/