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PICK UP!

パリ・オペラ座バレエ団『天井桟敷の人々』ゲネプロ・レポート


(C)Sébastien Mathé

バレエ・ファン永遠の憧れパリ・オペラ座バレエ団が3年ぶりにやってきた!

古典作品から先鋭的な現代作品まで多彩なレパートリーを誇る“バレエの殿堂”が今回披露するのは往年のフランス映画の名作「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ監督 1945年公開)のバレエ化。2008年、エトワール(当時)のジョゼ・マルティネスが振り付けた。

ときは19世紀前半のパリ。舞台は無言劇の劇場フュナンビュール座。真っ正直で優しい心根を持つパントマイム芸人バチストと美人の女芸人ガランスを中心とした愛憎入り乱れる群像劇だ(全二幕)。

旧友の悪党ラスネールが犯した窃盗のぬれ衣を着せられたガランスを助けたバチスト。両者は互いに惹かれあう。舞台俳優を目指している女たらしフレデリック・ルメートルもフュナンビュール座に転がりこみ、ガランスに恋する。いっぽう、座長の娘ナタリーはバチストを思慕している……。

東京公演開幕前夜に行われた公開ゲネプロ(通し稽古)を観ることができた。

プロローグはバレエ版独自の趣向。映画でバチストを演じた名優ジャン=ルイ・バローが撮影の行われた場所に戻ってきたという設定だ。彼の追憶とともに「天井桟敷の人々」の世界へといざなわれる。第一幕第1場「犯罪大通り」では、兵士や古着商、手品師、道往く人でにぎわう通りの活気が蘇る。映画ではモノクロームだった場面が色鮮やかにして立体感十分に立ちあがった。わい雑で華やか。当時にタイムスリップしたかのよう!その後も映画版の流れを汲みつつダンスやマイムを巧みに織り交ぜ淀みなく進行する。

名曲「枯葉」の詞でも知られるジャック・プレヴェールの綴る台詞は珠玉の極み。その魅力をマルティネスはダンスでみごとに語る。純朴ゆえガランス(イザベル・シアラヴォラ)に恋しつつ揺れ惑うバチスト(マチュー・ガニオ)の心の移り変わりや、金に物をいわせて誘惑するモントレー伯爵(クリストファー・デュケーヌ)に毅然と立ち向かうガランスの姿をコンテンポラリーなタッチの振り付けによって繊細かつ大胆に紡ぐ。
第二幕、ときを経て再会したバチストとガランスが結ばれる際の無言の交わりは万感こもる。終幕からエピローグにかけての劇的かつ余韻の残る味わいも胸を打つ。

ガランスの華美さと悲哀を余すことなく浮き彫りにしたシアラヴォラ。数々のドラマティック・バレエのヒロインを務め、観るものの涙を誘っているだけに当り役のひとつだろう。バチスト役のガニオも持ち前のリリカルな感性を存分に発揮した。劇中劇などでみせるマイムシーンは忘れ難い。たたずまいやちょっとした仕草が自然でニヒルな雰囲気を醸しだす。ルメートルを美丈夫で偉丈夫に演じ踊ったカール・パケット、無頼漢ラスネールがさまになっているバンジャマン・ペッシュ、純情で誠実なナタリーに扮したレティシア・ピュジョルというエトワールたちが脇を固めるのは壮観だ。
宿屋の女主人で嫉妬に狂うあまりガランスを陥れるエルミーヌ夫人は映画版以上に存在感があるかもしれない。この日演じたカロリン・バンスの好演も光っていた。

踊りの見せ場もある。第二幕第1場では劇中劇として新作バレエ『ロベール・マーケル』を上演。ルメートルとバレリーナ(オーレリア・ベレ)に加えコール・ド・バレエが華麗にして小気味よく踊る。クラシカルで洗練されたダンスを味わい尽くしたい。

エトワールでもあるアニエス・ルテステュが手掛けた衣裳はガランスの“真紅のドレス”をはじめシックでエレガント。時代・様式にとらわれない自在な発想によるものだ。可動式で舞台の裏側もみせる装置(エツィオ・トフォルッティ)や
絞り具合の絶妙な照明(アンドレ・ディオ)、書き下ろし音楽(マルク=オリヴィエ・デュパン)ふくめ各々が粒立ち、掛けあわさる。スケール大きな総合芸術にしてとびきりのエンターテインメントになっている。

パリ・オペラ座バレエ団にとってお膝下を舞台とした映画史に残る名画に想を得て制作した本作は近年の代表作のひとつ。映画を懐かしむオールド・ファンやオペラ座ファンはもとよりバレエを初めてみる方まで親しめるのでは。ご覧になってのお楽しみということで触れないが、劇場でしか味わえないワクワクするような演出がいくつも仕掛けられている。ナマで観るにしくはなし。居ながらにして観られる絶好の機会を逃したくない!

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)
取材日・場所:5月29日 東京文化会館大ホール

 

 

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【東京公演当日券】
5月30日(木)19時
6月 1日(土)13時
は完売のため、各開演1時間前より、劇場当日券売場にて 、キ
ャンセル待ちの整理券を配布いたします。
開演直前に、キャンセルが出た場合、販売させていただきます。

5月31日(金)18時30分
6月 1日(土)18時
は各公演の前日18時まで、ご予約受付中です。
但、予定枚数が終了次第、締め切らせていただきます。
ご予約チケットスペース  03-3234-9999

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